『2022年問題』生産緑地が大量解除のはずが?!

2022年問題という話を一時期よく耳にしましたね?
2022年になると土地の価値が下落するらしい!
そんな都市伝説が巷ではささやかれていました。

しかし結果は
「下がるどころか全然価格は上がってます」
というのが現状です

2022年以降は生産緑地が解除され、日本の不動産が暴落すると言っていた人たちはどこへいったのでしょう?
そもそも2022年問題とは何だったのか?
現役不動産屋社長が生産緑地解除について解説致します。

著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、
日本全国の再建築不可物件や底地・借地などの特殊な不動産を専門的に取り扱うため、
多数の不動産トラブルの相談を受けておりました。

当サイトURUHOMEは、私達の積み上げてきたノウハウを

不動産のお悩みを抱えていらっしゃる方々の問題解決に少しでもお役に立てればと思い、
「ニッチな不動産のお悩み解決サイト」として立ち上げたものです。

大変ありがたい事に日本全国から不動産のご相談を頂いており、
無料査定を行い、1億円位までの物件であれば最短2日でお買取りさせていただくことも可能です。

ご売却にお困りの不動産がございましたら
こちらからお気軽にご相談くださいませ。

1.2022年問題とは何だったのか?

1-1.1991年、三大都市圏の市街化区域内で保全すべき農地(生産緑地)以外の農地は、宅地並みの課税がされることとなりました。

都市計画法が1968年に制定されて以来、市街化区域内の農地の宅地化する為に、農地に宅地並みの課税を行うような政策が取られてきました。(農地所有者の反対により実際は宅地並みの課税が免除されることが多かったのですが)

その後、生産緑地法が1974年に制定、翌1975年に相続税納税猶予制度の創設、1982年に長期営農継続農地制度の創設がされ、市街化区域内の農地の税制面の優遇が行われてきました。

しかし都市の住宅不足解消の為、1991年の生産緑地法の改正によって三大都市圏においては、生産緑地地区内のみにおいて固定資産税の農地課税と相続税の猶予が適用されることになりました。(生産緑地地区ではない市街化区域内の農地は宅地並みの固定資産税が課され、相続税の納税猶予が出来ないこととなりました)

1-2.1991年以降、市街化区域内農地として残る生産緑地、宅地化してゆく市街化区域内農地に分かれる事になりました。

1991年の生産緑地法改正によって生産緑地に指定された市街化区域内の農家は農業に従事できなくなるような要因が生じない限り、30年間の間は農地として維持管理をすることにより、税制面の優遇が受けられることになりました。

生産緑地指定の要件として「農林漁業などの生産活動を営めて、継続可能で、面積が 500㎡以上であること」があります。しかし、いったん生産緑地に指定されると「指定後30年経過」か「農業等の継続が困難な場合」か「土地所有者が亡くなられた時」以外は生産緑地を解除できない事となります。

生産緑地指定要件が厳しかったため、市街化区域内でも生産緑地に指定する農家、指定しない農家に分かれた結果、三大都市圏の市街化区域内の農地は少しづつ宅地化(市街化区域内農地―平成4年に30628ha→令和元年12月31日 12209ha)され、生産緑地に指定された農家はほぼそのまま宅地として残りました。(生産緑地―平成4年 15109ha→令和元年12月31日 12324ha)

これを考えると、いかに改正生産緑地法が生産緑地の市街化の抑制に貢献していたかが良くお分かりいただけると思います。

1-3.2022年に生産緑地が解除され、都心部に土地が溢れると言われました。

1991年の生産緑地法改正から30年が経過すると、生産緑地の期間が終了して不動産が市場に大量にあふれると言われていました。2022年には12324haの内約8割の農地が期限を迎え、その時に東京ドーム2097個分の土地が不動産市場に流入するという事で、色々なメディアが騒いでいたのです。


この結果、大量の戸建て用地・アパート用地・マンション用地が不動産市場に出回り、供給過多で不動産価格の大暴落をおこすと言われていたのが「2022年問題」です。

都道府県都市数決定面積(ha)地区数
東京都273063.511121
神奈川県191293.18324
千葉県221069.33904
埼玉県371668.76918
茨城県86.8361
静岡県234.82054
愛知県341048.97851
大阪府341924.19234
京都府11770.82931
兵庫県8504.72665
奈良県12571.63036
和歌山県79273
生産緑地地区 平成31年3月1日現在(国土交通省 平成31年都市計画現況調査より)

2.2022年問題で不動産価格は下落しなかった?

2-1.不動産価格の暴落が起こらないように2017年に生産緑地法が改正されました。

2017年の生産緑地法改正によって「生産緑地の面積を300㎡に引き下げ」「直売所や農家レストラン、製造・加工工場の設置が可能」「生産緑地の10年延長ができる特定生産緑地制度の創設」「生産緑地の賃貸借には農地法を適用しない」など、生産緑地を続けやすくする法改正となりました。

また、特定生産緑地に指定されない生産緑地に対しても、固定資産税が急激に上昇しないよう、課税価格を毎年20%ずつ、5年間で宅地並みの評価に上げていくこととなりました。

2-2.2022年になっても不動産価格の急激な暴落は起きなかった

1991年に生産緑地法が改正されてから現在に至るまで、「3大都市圏の市街化区域内の農地については15年で半減する位」のペースで緩やかに宅地化されてきた事や、前述しておりますように生産緑地法改正によっても生産緑地を続けやすく、不動産価格に影響が出ないような法改正となっている為、不動産価格への影響も限定的でした。

また、国土交通省が地方公共団体向けに実施した調査の結果、令和4年12月末時点において、平成4年に定められた生産緑地(全生産緑地面積の約8割)の約9割が特定生産緑地に指定されたことが分かりました。
生産緑地は解除されると固定資産税が宅地並みに課税されるため、不動産が大量に市場に流れるとみられていましたが、特定生産緑地制度を利用する事で、固定資産税が引き続き農地評価になったり、次世代の方も納税猶予を受けられるなどのメリットがあります。

特定生産緑地制度』とは、生産緑地の所有者等の意向を基に、市町村が当該生産緑地を10年間、特定生産緑地として指定できる上、10年経過後に所有者の同意を得て繰り返し10年の延長が出来る制度です。

町田市HPより
特定生産緑地の選択をする場合・しない場合の流れ(町田市HPより)

3.2022年に生産緑地を続けた方が大半?

3-1.特定生産緑地の指定を受けなかった方

特定生産緑地の指定を受けなかった方は非常に少なく、以下のような方々でした。

  • 農業を続けず、後継者がいない方で相続税の納税猶予をしていない方
  • 相続税の納税猶予をしており、農業を続けず、後継者がいないなどで納税猶予を受ける必要が無い方
  • 農業を続けず、アパート経営などをされたい方

生産緑地に指定されてから、納税猶予を受けていない方で、農業を続けず後継者のいない方は特定生産緑地の指定を受けなかった方多くいらっしゃいました

これは次の世代に納税義務の問題を残さないようにする為であります。

また、相続税の納税猶予をしている場合でも農業の継続を考えられていない場合も生産緑地の指定から30年で、特定生産緑地の指定を受けない方が多くいらっしゃいました。

3-2.特定生産緑地の指定を受けた方

前述したように国交省の調べによると約9割が特定生産緑地に指定されました。特定生産緑地に指定されたのは、次のような方々です。

  • 農業を続ける予定か、後継者がいらっしゃる方
  • 農業は続けないが、納税猶予をしていて人に貸したり、農家レストランなどを営んだりして特定生産緑地の指定を受けた方

特定生産緑地の指定を受けると、10年ごとの更新制で税制優遇を受けながら営農を続けることが可能です。その為、農業を続ける方や、後継者がいらっしゃる方は継続された方が税制面的に有利です。

4.不動産価格が暴落するという噂は

4-1.生産緑地の期限を迎えた方々はどうしたの?

生産緑地を所有されている方は2022年に期限を迎える方が8割いらっしゃいました。

そのような方々は今のうちから売却を検討されるか、農地として誰かに貸すか、農家レストランなどを営むかなどを検討された結果、ほとんどの方が特定生産緑地に指定されました。

実際私の知っている農家さんでも栽培した野菜を使って料理を提供することを実験的に始められているところもございます。

4-2.2022年の影響はどうなった?

2022年問題は結局多くの方が特定生産緑地に指定されたため、不動産価格に与える影響はほぼありませんでした。
また、東京都内では西部(八王子や立川、町田、小平、清瀬など)、千葉では(船橋、松戸)、埼玉では(さいたま市、新座市、川越市、川口市)、神奈川では(横浜市、川崎市、秦野市、相模原市)、愛知では(名古屋市、一宮市)、大阪では(八尾市、栄市)、兵庫では(神戸市、伊丹市)が比較的生産緑地の多い地区でした。しかし、このような場所でも、宅地として供給されてくるのは全体の5%以下だったため、影響があっても気が付かない程度だったのだと思われます。

2022年に不動産が暴落するという事で、そのタイミングを待たれていた方も多かったのではないでしょうか?しかし、不動産の価格は生産緑地の期限の影響よりもスタグフレーションにより物価の上昇圧力のほうが強かったため、結局は都心部では上昇しました。
この記事を読んでいただいているような金融や不動産に興味がある方にはわかると思うのですが、コロナにより株価が一時的に暴落しましたが、金融緩和政策により市場に円が大量に流れ込み、貨幣価値が下がり株価や物価が上昇したためです。

借金返済のために紙幣を大量に市場に流通させ、経済は良くならないのに物価が上がっていくスタグフレーションの仕組みについては、知っている方も多いと思いますし、また別の機会にご説明できればと思っております。

いずれにしても、2022年問題は不動産の価格が暴落するどころか上昇し、全国的にもこれから不動産価格の上昇が見込まれると思います。

5.生産緑地で困ったら?

2022年問題に関しては、色々と世間で騒がれましたが、特定生産緑地の指定によって、日本の不動産価格の急騰などの影響が出ずに良かったと思います。

当サイトURUHOMEを運営するドリームプランニングでは、日本全国の生産緑地などのご相談も承っております。
特定生産緑地に指定されなかった方や、相続などでお困りの方は、こちらからお気軽にご相談ください。
創業より18年、生産緑地などの複雑な不動産の売買や活用に特化した私達が、皆さまのお悩みを解決できるよう精一杯頑張ります。