「地代を払わない借地人に対して、明け渡し請求をしたい」
「借地上の土地の用法違反があるから借地権を解除したい」
借地人との関係悪化によって、借地を返還してほしいと思う事もあるかと思います。

しかし、借地を返還してもらうのはかなり大変なことは皆さまご存じかと思います。
そこで今回、借地の明け渡しについて、どのような時に請求できるのか、明け渡しの行い方なども現役不動産屋社長の私が合わせて解説いたします。

監修者情報

借地権の明渡、立退請求【こうすれば出来る】with image|URUHOME

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人

法政大学工学部建築学科卒、中堅不動産仲介業者を経て、株式会社ドリームプランニングに入社。底地、再建築不可、市街化調整区域内の土地など、特殊な土地の売買を多く手掛ける。2020年8月より代表取締役に就任

当サイト「URUHOME」を運営する「株式会社ドリームプランニング」は、2002年より日本全国の借地などの特殊な不動産を専門的に買い取ってまいりました。
どんな借地でも買取りさせて頂きますので、お困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。

  1. 借地権の明渡請求はどんな時にできる?
  2. 借地人に明渡請求できる契約違反(債務不履行)があったときとは?
  3. 「普通借地権」の契約期間が満了で「正当事由」があれば明渡請求可能
  4. 「定期借地権」の契約期間が終了したとき
  5. 双方の合意(合意解除)があったとき
  6. 借地権の明渡請求はどのように手続きすれば良い?
  7. 底地を売却する時はどうする?

1.借地権の明渡請求はどんなときに出来る?

  • 1-1.借地人に契約違反(債務不履行)があったとき
  • 1-2.「普通借地権」の契約期間が満了し、かつ「正当事由」があるとき
  • 1-3.「定期借地権」の契約期間が終了したとき
  • 1-4.双方の合意(合意解除)があったとき

「借地権の明渡しをしてほしい」と考えてはいても、日本の法律(借地借家法など)で借地人の権利が非常に強く保護されているため、いつでも自由にできるわけではないので、悩まれている地主さんも多くいらっしゃると思います。

今回の記事では、どんな場合に借地権の明渡請求が出来るかを解説してまいります。

早速、明渡しを請求できるケースについて解説しますと、借地権の明渡請求が出来るのは大きく分けて以下の4つのケースに限られます。

  • 借地人に契約違反(債務不履行)があったとき
  • 「普通借地権」の契約期間が満了し、かつ「正当事由」があるとき
  • 「定期借地権」の契約期間が終了したとき
  • 双方の合意(合意解除)があったとき
借地権の明渡、立退請求【こうすれば出来る】with image|URUHOME

それぞれ、どんな場合か本章で解説してまいります。

1-1.借地人に契約違反(債務不履行)があったとき

最初に解説する「借地人に契約違反があった時」が最も重要なケースなのですが、借地人と地主の間の「信頼関係が破壊された」と客観的に認められるような重大な契約違反があった場合、地主は契約を解除し、明渡しを請求できます。

信頼関係が破壊されたと客観的に認められるのは、具体的には以下のようなケースになります。

  • 地代(土地の賃料)の長期滞納:1〜2ヶ月程度の遅れではなく、一般的に数ヶ月(目安として3ヶ月〜半年以上)にわたり滞納が悪質に続いている場合。
  • 無断の増改築・用途変更::契約書で「増改築には地主の承諾が必要」とされているのに無断で建て替えたり、住居用なのに無断で店舗に改装したりした場合。
  • 無断譲渡・無断転貸:地主の承諾を得ずに、借地権を第三者に売却したり、土地をまた貸ししたりした場合。

後ほど解説しますが、軽い契約違反では「信頼が破壊された」とは認められない点は注意が必要です。

1-2.「普通借地権」の契約期間が満了し、かつ「正当事由」があるとき

次に解説するのが、「普通借地権の契約期間が満了し、正当事由がある時」です。

一般的な借地契約(普通借地権)は、期間が来ても借地人が希望すれば原則として自動更新されます。

そのため、地主が更新を拒絶して明渡しを請求するには、「正当事由(どうしても土地を返してもらわなければならない正当な理由)」が必要になります。

この「正当事由」は、以下の要素を総合的に考慮して裁判所等で厳格に判断されます。

  • 双方の事情:地主がどうしてもその土地を使わなければならない理由と、借地人がどうしてもそこに住み続けなければならない理由の比較。
  • 建物の状況:建物の老朽化が著しく、倒壊の危険があるなど。
  • これまでの経緯: 地代の支払い状況や、日頃の付き合いなど。
  • 立退料(財産上の給付): 上記の理由だけでは正当事由として少し弱い場合に、それを補うために地主が支払う補償金。※立退料を払えば必ず立ち退かせることができるわけではありません。

これらの正当事由の要件が厳しいため、「借地権は一度貸すと返ってこない」と言われるのです。

1-3.「定期借地権」の契約期間が終了したとき

1992年(平成4年)8月以降に新しくできた「定期借地権(一般定期借地権、事業用定期借地権など)」で契約を結んでいる場合は、元々の契約が期間限定での契約の為、期間が満了したら借地は返還されます。

最初から「契約の更新がなく、期間が終われば必ず土地を返す」という約束の契約なので、期間が満了すれば戻ってくるのです。

定められた期間(一般定期借地権なら50年以上、事業用なら10年以上50年未満など)が満了すれば、借地人は建物を解体して更地にし、土地を明け渡す義務が生じます。

ただ、定期借地権の方は明け渡しで悩んでいる方も多くはないと思いますので、詳しい説明はここでは割愛しますが、借地契約の期間中に契約解除するのは、1-1にある「借地人による契約違反(債務不履行)」がある事が条件となります。

1-4.双方の合意(合意解除)があったとき

法的な強制力によらず、地主と借地人が話し合って双方が納得のうえで契約を終わらせるケースです。

後述しますが、借地契約期間の途中であっても、地主と借地人の双方が契約を終了させることに合意すれば、いつでも契約を解除して明け渡しを求めることが可能です。

双方で合意すれば、地代滞納、無断譲渡といった契約違反がなくても、契約自由の原則から明け渡しが成立します。

2.借地人に明渡請求できる契約違反(債務不履行)があったときとは?

借地人に明け渡し請求できるという「契約違反があった時」とは具体的にどのような時でしょう?

契約違反があった時とは、1章で解説したように、「信頼関係が破壊された」と客観的にみなされるときです。

ここでは例を挙げながら解説してい参ります。

2-1.借地人が地代の支払をしない場合、明渡請求が出来る

借地人が地代(地代・賃料)の支払いを滞納した場合、地主(賃貸人)は借地人に対して賃貸借契約の解除を通知し、借地の返還(明渡請求)を求めることができる場合があります。

しかし、借地契約においては「地代を1ヶ月でも滞納したら、即座に立ち退きを要求できる」というわけではありません。

ここでは、信頼関係の破壊に踏み込んで、もう少し解説させていただきます。

2-1-1.「信頼関係破壊」されていることが解除の条件

借地契約の解除において最も重要になるのが「信頼関係破壊の法理」です。

土地の賃貸借契約は、数十年という非常に長期間にわたって継続することが前提となる契約です。また、借地人はその土地の上に自己所有の建物を建てて生活や事業の基盤としているため、契約が解除されて「建物を壊して土地を返しなさい(建物収去土地明渡)」という話になると、借地人は多大な不利益を被ることになります。

そのため裁判所は、単なる形式的な契約違反(短期間の滞納など)があっただけでは契約解除を認めず、「地主と借地人との間の信頼関係が、もはや修復不可能なほどに破壊された」と客観的に認められる場合にのみ、例外的に契約の解除を有効とする判断基準を設けているのです。

2-1-2.「軽微な違反」は信頼関係の破壊にならない

この「信頼関係破壊の法理」は、実は民法の条文にも以下のように組み込まれています。

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

(引用:民法第541条)

ここでいう「相当の期間を定めてその履行の催告をし」とは、いきなり解除するのではなく「いつまでに未払いの地代を支払ってください」とチャンスを与えることを意味します。

チャンスを与えて払わなければすぐに信頼関係が破壊されるといえるかといえばそうではなく、「軽微であるときは、この限りでない」という但し書きが重要なポイントになります。

借地契約において、例えば1ヶ月分の地代の支払い遅れなどは、長期間の契約全体から見れば「社会通念に照らして軽微な違反」とみなされやすく、これだけを理由とした契約解除は通常認められません。

2-1-3.契約解除(明渡請求)が認められる目安とは?

では、具体的にどのような地代の未払いがあれば「信頼関係が破壊された」として明渡請求が可能になるのでしょうか?

一般的には以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

  1. 滞納期間と金額:一般的なアパートやマンションの賃貸借契約では「3ヶ月以上の滞納」が解除の一つの目安とされますが、借地契約の場合はより厳格に判断される傾向があり、「おおむね6ヶ月から1年程度」の継続した地代の未払いがあるかどうかが、重大な判断基準となります。
  2. 借地人の態度や支払い意思:地主が何度も口頭や手紙で支払いを催告しているにもかかわらず、一切無視して話し合いにも応じないような悪質なケースでは、信頼関係の破壊が認められやすくなります。
  3. 滞納に至った経緯:借地人が突発的な重病や失業などで一時的に支払えなくなっているだけであり、状況が改善すれば支払う意思を明確に示しているような場合は、解除が否定される方向に働きます。

2-1-4.明け渡しの具体的な事例

【事例1:賃貸借契約の解除が認められた例】 借地人が約1年間にわたり地代の支払いを完全にストップし、地主が内容証明郵便で「〇月〇日までに支払わなければ契約を解除する」と催告したにもかかわらず、支払いがなく連絡も無視し続けたケース。このような場合、契約違反の程度は重大であり、信頼関係は完全に破壊されたとして、裁判所も契約解除と土地の明渡し(建物の取り壊し)を認める可能性が極めて高くなります。

【事例2:契約解除が困難になった(認められなかった)例】 地代の支払いが3ヶ月ほど遅れた時点で地主が解除通知を出したものの、借地人が直ちに未払い分を一括で支払ったケース。または、地主側からの「地代値上げ要求」に対して借地人が納得せず、従来の地代金額のみを支払い続けていた(一部未払いが生じていた)ケースなどです。

払ったり払わなかったりという不安定な状態であっても、借地人側に法的に保護されるべき事情(金額の争いなど)がある場合や、滞納期間が短い場合は、「直ちに信頼関係が破壊されたとは言えない」として、地主からの明渡請求が退けられることが多くあります。

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2-2.借地人が無断で借地上の建物の用法変更をした場合も契約解除できます

土地賃貸借契約を結ぶ際、その土地をどのように利用するか、あるいはどのような建物を建てるかという「用法」や「構造」について合意がなされるのが一般的です。

借地人がこの合意に反し、地主(賃貸人)に無断で建物の用途や構造を著しく変更した場合、地主は契約の解除を主張できる可能性があります。

2-2-1.建物構造(堅固・非堅固)の変更がなぜ重要か

かつての「旧借地法」のもとでは、建物の構造が「堅固建物(石造、レンガ造、コンクリート造など)」か「非堅固建物(木造など)」かによって、借地権の存続期間が法律で厳格に区分されていました(堅固は60年、非堅固は30年など)。

そのため、木造(非堅固)として貸した土地の上に、借地人が勝手に鉄筋コンクリート造(堅固)の建物を建ててしまうことは、地主にとって「土地が返ってくるまでの期間が大幅に延びてしまう」という極めて重大な不利益を意味します。

現在の「借地借家法」では、新たに結ばれる契約においてはこの期間の区別はなくなりましたが、それでも「どのような建物が建っているか」は地主の土地利用計画や将来の明け渡しに直結する重要事項です。

そのため、契約で定めた構造を無視した無断の建て替えや大規模改修は、依然として重大な契約違反(用法遵守義務違反)とみなされます。

2-2-2. 「信頼関係破壊」とみられる用途変更は?

ただし、用法や構造の違反があれば「即座に」解除が認められるわけではありません。

ここでも「信頼関係破壊の法理」が適用され、違反内容が「地主と借地人の間の信頼関係を根本から壊すほど重大なものか」が問われます。

  1. 解除が認められやすいケース: 木造住宅としての利用を前提に貸した土地に、無断で堅固なビルを建てたり、地盤を激しく損傷させるような重機を扱う工場に改造したりした場合。これらは土地の価値や返還時期に大きな影響を与えるため、信頼関係が破壊されたと認められやすくなります。
  2. 解除が認められにくいケース: 建物の内部をリフォームして一部を用途変更した程度で、建物の骨組みや土地への負担、存続期間に大きな影響を与えない場合。これらは「軽微な違反」とみなされ、解除が認められないことがあります。

2-2-3.承諾に代わる裁判所の許可(借地条件変更裁判)

もし借地人が「時代の変化に合わせて、木造から耐火性に優れたRC造に変更したい」と考え、地主さんがそれを拒んでいる場合、借地人は裁判所に申し立てて、地主の承諾に代わる許可(借地条件変更の裁判)を得る制度を利用してくることがあります。

この際、借地人は地主に対して「承諾料(条件変更料)」を支払うのが一般的です。

もちろんこうした正当な手続きを踏まず、完全に「無断」で行われた変更に対しては、地主は毅然と対応することが可能です。

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2-3.無断譲渡・無断転貸があった時、明け渡し請求が出来る

借地人が、地主(賃貸人)の承諾を得ずに借地権を第三者に売却(譲渡)したり、土地を別の人にまた貸し(転貸)したりする行為は、法律上明確に禁止されています。(民法612条)

  1. 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
  2. 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)第612条

無断譲渡や無断転貸が発覚した場合、地主は直ちに賃貸借契約を解除し、土地の明け渡し(建物の収去)を求めることが可能です。

2-3-1.無断での譲渡・転貸は許されない理由

民法第612条では、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」と厳格に定めています。

元々、 土地の賃貸借契約は、数十年という非常に長い期間にわたり、「この人になら大切な土地を貸しても大丈夫だ」という地主と借地人の間の個人的な信頼関係を基礎として結ばれています。

そのため、借地人が地主に無断で第三者に交代してしまえば、地代の支払い能力に問題がないか、土地が乱暴に扱われないかなど、地主が抱えるリスクが大きく跳ね上がってしまうため、重大な契約違反となるのです。

2-3-2.全ての無断譲渡・転貸が契約解除対象ではない

原則として無断譲渡・無断転貸は即座に契約解除の対象となりますが、過去の裁判例をみてみると、ここでもやはり「信頼関係破壊の法理」が適用され、全てが契約解除対象とならない点に注意が必要です。

つまり、形式的には無断譲渡・転貸に該当しても、「実質的に地主への背信行為(裏切り)とまでは言えない特段の事情」がある場合は、例外的に契約解除が認められない(明渡し請求が退けられる)ことがあります。

契約解除が認められないケースと認められるケースについて、ここではもう少し解説します。

【解除が認められにくい(例外的な)ケース】 借地人が個人事業を「法人化(会社設立)」し、代表取締役である借地人本人がこれまで通り土地を使用し続けている場合などです。また、同居している配偶者や子供へ名義だけを変更したようなケースもこれに該当します。
形式上は「別の人(法人・家族)」への譲渡になりますが、実際の利用状況や支払い能力に全く変化がなく、地主に何ら実害を与えていないため、「信頼関係を破壊するほどの違反ではない」と判断される傾向にあります。

【解除が認められる(原則通りの)ケース】 全く見ず知らずの第三者や、不動産業者などに無断で借地権を売却して退去したり、建物を他人に貸し出して自分は賃料収入だけを得たりする行為です。
これは地主の権利を著しく侵害する明白な背信行為であり、弁解の余地なく契約解除と明け渡しが認められます。

2-3-3.地主の承諾に代わる許可を申し立てられなかった場合

現在の借地借家法では、借地人がどうしても借地権を第三者に譲渡したい事情があるにもかかわらず、地主が不合理に承諾を拒む場合、借地人は裁判所に対して「地主の承諾に代わる許可」を申し立てる法的な手続き(借地借家法19条1項)が用意されています。

借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。
この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)第19条  

条文を見てもパッとイメージが湧かないと思うのですが、地主さんが譲渡承諾をしなかった場合、地主さんの承諾に代わる許可を求める事が出来るのですが、この許可を得る事をせずに無断譲渡が行われた場合は「信頼関係が破壊された」とみなされ明け渡し請求が出来るのです。

ただ、譲渡承諾の拒否に悪質性が認められる場合は違った判決が出されることもありますし、第三者に無断譲渡された場合でも建物買取請求権を行使されることもあり、その場合建物を買取らなければならなくなるため注意が必要です。

第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

(第三者の建物買取請求権)第14条

3.「普通借地権」の契約期間が満了で「正当事由」があれば明渡請求可能

借地権の中でも、昔ながらの「普通借地権」は借地人(借り手)の権利が極めて強く保護されている契約です。

そのため、単に「契約期間が満了したから、更地にして土地を返してほしい」という地主(貸し手)の主張は、原則として通りません。

期間満了時に地主からの明け渡し請求が法的に認められるためには、契約の更新を拒絶するための「正当事由(せいとうじゆう)」という非常に高いハードルをクリアする必要があります。

ここでは、普通借地権における期間満了のルールと、正当事由の判断基準について詳しく解説します。

  • 3-1.普通借地権の期間満了と「法定更新」の原則
  • 3-2.明け渡しに必要な「正当事由」とは?

3-1.普通借地権の期間満了と「法定更新」の原則

普通借地権の存続期間は、借地借家法により「最初の契約は30年(当事者間でこれより長い期間を定めた場合はその期間)、1回目の更新後は20年、2回目以降の更新後は10年」と定められています(平成4年以前に結ばれた旧借地法の場合は、建物の構造により期間が異なります)。

契約期間が満了しても、借地人がそのまま土地を使い続けている場合、地主が「遅滞なく異議」を述べない限り、契約は従前と同じ条件で自動的に更新されたものとみなされます(これを法定更新と呼びます)。

したがって、地主が土地を取り戻すためには、期間満了のタイミングに合わせて明確に「更新を拒絶する(契約を終わらせる)」旨を通知しなければなりません。

しかし、この異議(更新拒絶)が有効となるために不可欠な要件こそが「正当事由」なのです。

3-2.明け渡しに必要な「正当事由」とは?

正当事由とは、簡単に言えば「借地人の生活基盤である建物を壊してでも、地主に土地を返還させるべき客観的かつ合理的な理由」のことです。

借地借家法や、その前の旧借地法では、借地人の居住権や営業権が重く見られるため、「地主が自分の土地を自由に使いたい」「更地にしてマンション業者に高く売りたい」といった地主側の一方的な都合や利益追求だけでは、正当事由としては到底認められません。

正当事由の有無は、借地借家法第6条の規定に基づき、以下の「4つの要素」を総合的に比較考量して判断されます。

3-2-1.双方の土地使用の必要性(最も重要な主たる要素)

これが判断の核となります。「地主がその土地をどうしても使わなければならない切実な事情」と、「借地人がその土地を使い続けなければならない事情」を天秤にかけます。

  • 地主側の事情: 自分や子どもが住む家を建てる必要がある、病気や倒産の危機でその土地を売却しなければ生活が成り立たない、など。
  • 借地人側の事情: 高齢で長年そこに住んでおり他に行く当てがない、その土地で地域密着の商売をしており移転すると生活の糧を失う、など。

3-2-2. 借地に関する従前の経過

契約締結から現在に至るまでの、両者の信頼関係や経緯です。

例えば、契約時や更新時に多額の権利金・更新料が支払われていたか、毎月の地代は近隣相場と比べて適正だったか等が考慮されます。

また、地代の遅れなど(一発で契約解除には至らない程度の)細かなルール違反が過去になかったかも見られます。

3-2-3. 土地の利用状況と建物の現況

現在、その土地がどのように使われているかを見ます。

例えば、建物が老朽化して倒壊の危険がある場合や、借地人が実際には他所に住んでおり長年空き家になっているような場合は、借地人側の「土地を使う必要性」が低いとみなされ、相対的に地主側の正当事由が認められやすくなります。

3-2-4.立退料(財産上の給付)の提供(補完要素)

地主から借地人に対して支払われる「立退料(解決金)」です。

ここで勘違いされがちなのは、「立退料さえ払えば無条件で正当事由が認められるわけではない」という点です。 立退料は、あくまで「地主の必要性」だけでは少し理由が弱い場合に、それを金銭によって「補完する」ための要素にすぎません。

地主に土地を使う必要性が全くない場合は、いくら高額な立退料を積んでも正当事由は否定されます。

3-3.普通借地権の期間満了によって明渡できるケース

実務上、「双方の土地使用の必要性」「借地に関する従前の経過 」「土地の利用状況と建物の現況 」の要素だけで地主の正当事由が完璧に認められるというわけではありません。

大半の事案では、地主側にも「親族を住まわせたい」という一定の必要性があり、一方で借地人側にも「長年住み慣れた家を手放せない」という必要性がある、綱引きの状態になります。

そのため、裁判や調停においては、最終的に「地主側の一定の必要性 + 借地人の移転費用(引っ越し代など)をカバーする相当額の立退料の支払い」のセットをもって正当事由が満たされたと判断され、明け渡しに至るケースが一般的です。

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4.「定期借地権」の契約期間が終了したとき

定期借地権は、平成4年(1992年)に施行された借地借家法で新たに創設された制度です。

普通借地権において地主を悩ませていた「正当事由」や「法定更新」の規定が適用されず、「あらかじめ定められた契約期間が満了すれば、確実に土地が返還される」という特徴を持っています。

定期借地権には、主に以下の3種類があります。

  • 一般定期借地権: 存続期間50年以上。用途に制限なし。
  • 事業用定期借地権: 存続期間10年以上50年未満。事業用の建物に限定。
  • 建物譲渡特約付借地権: 存続期間30年以上。期間満了時に地主が建物を買い取る特約あり。

いずれの場合も、契約期間が終了した時点で借地権は完全に消滅します。

一般定期借地権や事業用定期借地権の場合、借地人は原則として自費で建物を解体し、土地を更地にして地主に明け渡す義務を負うので、地主側から契約更新の拒絶をするための「正当事由」や「立退料」は一切不要です。

ただし、期間が満了したからといって何の手続きもせずに自動的に追い出せるわけではないこともあるので、注意が必要です。

一般定期借地権などの場合、地主は期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、借地人に対して「期間満了により借地権が消滅する旨の通知」を行う内容の契約になっていることがあり、この通知を怠ると、満了直後の明け渡しがスムーズに進まない可能性もあります。

また、定期借地権を成立させるためには、契約時に「更新がないこと」などの特約を、公正証書などの書面で明確に定めておくという厳格な要件が求められます。

この要件を満たしていないと通常の「普通借地権」として扱われることがあり、明け渡しが困難になるリスクがある点には留意が必要です。


5.双方の合意(合意解除)があったとき

借地契約期間の途中であっても、あるいは期間満了時に地主側に法定の「正当事由」が存在しなくても、地主と借地人の双方が契約を終了させることに合意すれば、いつでも契約を解除して明け渡しを求めることが可能で、これを「合意解除」と呼びます。

合意解除は当事者間の「契約の自由」に基づくため、地代の滞納や無断転貸といった契約違反がなくても成立します。

実務上よくあるケースとしては、地主が土地を別の用途で使いたいために、借地人に対して引越し費用などを負担し「立退料(解決金)」を支払い、納得して退去してもらう形です。

逆に、借地人が高齢になり建物を維持できなくなったため、借地人側から地主へ「土地を返して契約を終わらせたい」と申し出て合意に至るケースもあります。

合意解除を行う上で極めて重要なのは、後々の言った・言わないのトラブルを防ぐため、「合意内容を明確にした書面(合意解除書や覚書)」を必ず作成することです。

特に以下の点は明確に定めておく必要があります。

  1. 明け渡しの期限: いつまでに退去・返還するのか。
  2. 建物の取り扱い: 借地人が自費で解体して更地にするのか、それとも地主が建物を買い取る(あるいは無償で譲り受ける)のか。
  3. 金銭の精算: 立退料を支払う場合、その金額と支払い時期(退去前か、退去完了と同時か)。また、預かっている敷金や保証金があればその精算方法。

なお、借地人が借地上の建物に住宅ローンなどの「抵当権」を設定している場合や、建物を第三者に貸している(借家人がいる)場合は注意が必要です。

地主と借地人だけの合意で勝手に契約を解除しても、こうした利害関係のある第三者には対抗できず、直ちに明け渡しを実現できないことがあるため、関係者を含めた事前の調整が不可欠です。

6.借地権の明渡請求はどのように手続きすれば良い?

6-1.借地権の明渡請求手続①地代未払いがある場合はまず内容証明郵便

建物明渡の流れでは、地代滞納がある場合、まずは地代の支払い通知を借地人に対して督促をします。

督促を受け取ってすぐに支払いをした時は良いですが、さらに支払いを滞っている場合は内容証明郵便で借地権の解約通知とともに占有者に提示し、明渡の交渉を行います。

契約解除を通知できるのは、民法541条の債務不履行解除の要件を満たし、信頼関係が破壊された事が要件となります。いかに困っているかを示すことが大切であるので、半年の地代滞納がある場合に通知をしたほうが良いです。

また、明渡請求を行う上で、明渡し料を客観的な証拠などに基づいて提示をする事が多いです。

参考:借地からの立ち退き料の相場|正当事由や算定方法等を解説

6-2.借地権の明渡請求手続②交渉が纏まらなければ明け渡し訴訟の提起

当事者同士の話し合い(明渡交渉)がまとまらない場合、最終的な解決手段として裁判所へ「建物収去土地明渡請求訴訟」を提起することになります。

この訴訟においては、明け渡し請求の正当性が重要で、地主側の請求が法的に認められる状態かどうかが厳しく審査されます。

地代滞納や無断転貸などの「契約違反」が理由であれば、実質的に信頼関係が破壊されているかが問われ、契約期間満了を理由とする場合は、地主がその土地を必要とする「正当事由」がどれだけ強いかが極めて重要になります。

訴訟は解決まで長期間を要するため、判決を待たず、裁判官から妥当な立退料の提示を受けて「和解」で終了するケースも実務上多く見られます。

6-3.借地権の明渡請求手続③それでも立ち退かなければ強制執行

判決や和解によって明け渡しが確定した場合でも、判決や裁判上の和解に従わない場合は、強制執行となります。

強制執行申し立てを行う場合、明渡には債務名義が必要となり、この債務名義は請求権の存在と内容を交渉する文書で、確定判決や和解調書が該当します。

強制執行申し立てから2~3週間ほどで建物明渡の催告があり、実際に執行官が現地に赴いて請求を行います。その後申し立てから6週間ほどで建物明渡の断行を行い、強制執行を完結させます。

このようにただ立ち退き請求ができるのではなく、多くの時間と費用がかかるのが現状です。

まずは地代支払い通知をしっかりと行い、明渡請求を行う上での客観的な証拠をそろえるようにしましょう。

借地権の明け渡し請求はかなり手間のかかる作業になります。立ち退き交渉については弁護士にお願いするのが一般的ですが、費用や効果を考えた時、買取業者に売却した方が良い事もあります。

まずは提携する弁護士の居る専門業者に相談する事をお勧めいたします。

7.底地を売却するならURUHOME

底地の明け渡し交渉は、一般の方が行うとトラブルになったり、借地借家法の解釈の違いにより思うように交渉が進まないこともあります。

そのようなときには、当サイトURUHOMEを運営しているドリームプランニングにご相談くださいませ。

当社2002年の創業より、底地の買取専門業者として東京、神奈川をはじめ、日本全国の底地の買取りをしてまいりました。

明け渡しが上手く行かない底地や、借地人さんが勝手な方で困っているなどのご相談を受けることもありますが、現状のままで底地を買取させて頂くことが可能です。

また、明け渡し交渉においてトラブルが発生している場合は、弁護士法第72条により、当社では交渉事に当たらず、弁護士さんをご紹介させて頂くなどして、問題解決のお手伝いをさせていただくこともあります。

売却をお考えの底地、お困りの底地がございましたら、お気軽にご相談くださいませ。

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