最近ずっと騒がれてきた民法改正、大家にとって何がどう変わったの?
これから家を借りたいけど、民法改正によって、どんなことが変わって、何に注意して借りれば良いの?

民法より借地借家法が優先されるって言うけど、結局何がどうなったの?
そんな疑問にお応えすべく、民法改正によって変わった事などを、底地専門買取業者の社長が解説します。

著者情報

民法改正と賃貸借契約【敷金返還・原状回復ルール・修繕義務など解説】with image|URUHOME

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人

法政大学工学部建築学科卒、中堅不動産仲介業者を経て、株式会社ドリームプランニングに入社。底地、再建築不可、市街化調整区域内の土地など、特殊な土地の売買を多く手掛ける。2020年8月より代表取締役に就任

著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、日本全国の市街化調整区域や底地・借地などの特殊な不動産を専門的に買い取る為、多数の相談を頂いてまいりました。

当サイトURUHOMEは、私達のノウハウが不動産のお悩みを抱えていらっしゃる方々の問題解決に少しでもお役に立てればと思い、「ニッチな不動産のお悩み解決サイト」として立ち上げたものです。

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  1. 2020年4月の民法改正により、借主の権利が大幅に認められる事になりました
  2. 民法改正によって、敷金返還時期や返還範囲、原状回復ルールなどが細かく定められました

1.2020年4月の民法改正により、借主の権利が大幅に求められる事になりました。

1-1.120年ぶりに変わった民法

民法が制定されたのは1896年、120年もの間、一度も大きな改正がありませんでした。当然120年の間で世の中も大きく変わりました。

民法は人々の社会生活などの原則的なルールを定めたもので、時代の移り変わりとともに、現代には合わない部分も沢山出てきたのが、今回の法改正の経緯です。

賃貸借契約においても、民法の中で明文化されていない為に争いが多々あり、今回の民法改正によって、これらが大きく是正される事となりました。

1-2. 民法より借地借家法が優先される

法律には一般的な規定について定める”一般法”と、専門的な分野において定められる”特別法”があり、民法=一般法、借地借家法=特別法となっております。

借地借家法と民法では、特別法である借地借家法が優先され、借地借家法に定めのない事については、一般法の規定である民法に従う事になります。

たとえば、民法では賃借契約の存続期間は最長20年でしたが、借地借家法での借地権は最長30年とである為、建物賃貸借の存続期間において、民法は適用されないということになります。

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2.民法改正によって、敷金返還時期や返還範囲、原状回復ルールなどが細かく定められました

改正後民法借地借家法
賃貸借契約期間20年から50年に引き上げ期限は無し
敷金目的や返還に関する規定が明文化定めが無いため民法が優先される
原状回復原状回復規定を明文化造作買取請求権はこれまで通り
賃貸人の変更賃貸人の地位を留保するケースについて明文化所有者が変わった場合でも効力あり
一部滅失一部滅失による賃料減額請求、契約解除に、滅失以外の理由により使用収益出来ない場合の減額と解約も認められることとなった定めが無いため民法が優先される
保証人保証人を保護する規定が追加された定めが無いため民法が優先される

2-1. 賃借物の修繕に関する要件の見直し

借りている建物が雨漏りした場合などにおいても、改正前の民法には,どのような場合に賃借人が自分で修繕をすることができるのかを定めた規定はありませんでした。

民法改正によって「賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したか,又は賃貸人がその旨を知ったのに,賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき」「急迫の事情があるとき」には目的物を修繕したとしても追及されない事が明確になりました。

2-2. 賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化

民法改正前、建物賃貸借契約期間中に、建物所有者が変わった場合、誰に賃料を払うべきかなどの規定がありませんでした。

しかし、改正後の民法では賃貸借の対抗要件を備えていた場合、賃借物である不動産が譲渡されたときは、賃貸人としての地位は、原則として不動産の譲受人(新たな所有者)に移転するという規定を設けました。

つまり、建物を譲り受けた第三者が建物の登記をしていなければ、賃借人は元の大家さんに賃料を払う事も、賃料を供託する事も出来る事としました。

新所有者を名乗る悪意の第三者に賃料の振込などが行われないようにする為だと思われます。

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2-3.賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化

賃貸借契約が終了した場合、賃借人建物を原状回復させて賃貸人に返還しなければならないのですが、原状回復義務の範囲についてのルールは、改正前の民法の文言上は明確ではありませんでした。

賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負うこと。
しかし通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わないことを明記しました。

例えば、家具設置による床のへこみや、テレビ、冷蔵庫やけなどは通常損耗。タバコのヤニなどは通常損耗に当たらないと解されます。

2-4. 敷金に関するルールの明確化

敷金では、敷金返還時期、返還範囲が定義により明確化されることになりました。

これまでは経年変化により通常では継続使用によってやむを得ない損傷と認められていた部分でも、その修繕にあたって敷金が使用されることが多かったのですが、2020年4月の改正民法では原状回復のルールが明確化されたことにより、敷金が適用される範囲に関しても明確になりました。

「保証金」という名目のものもあり、「敷金」の定義についても曖昧でしたが、「いかなる名目によるかを問わず,賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されました。


その上で,賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点で敷金返還債務が生じること,その額は受領した敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除した残額であることなどのルールを明確化しました。

2-5.賃貸借契約から生ずる債務の保証に関するルールの変更

民法改正によって、極度額の定めのない個人の根保証契約は無効になりました。

保証人が負う債務の極度額の定めが無い場合、個人(会社等の法人以外の者)が保証人になる根保証契約については,無効になるという事です。

個人が保証人になる根保証契約は,次の事情があったときは,その後に発生する主債務は保証の対象外となります。
①債権者が保証人の財産について強制執行や担保権の実行を申し立てたとき
②保証人が破産手続開始の決定を受けたとき
③主債務者又は保証人が死亡したとき

よって、今回の民法改正で保証契約締結時に極度額を定める必要が出てきました。

極度額については「賃料の2年分」などとあいまいな表現を避け、極度額の具体的金額を特定することができる必要があります。

改正後の民法に関しては、今までの不動産取引の慣習が通じない事も出てきました。賃貸の前に専門家に相談するようにしましょう。

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