借地権を返還したいけど課税されるの?
借地権を借地人から無償で返還された。でも税金ってかかるの?
借地権の返還に際し、税金がかかるのはあまり考えていない方も多いかもしれません。
そこで、底地買取専門業者で、当サイトURUHOMEを運営するドリームプランニングの社長が借地返還と課税について解説致します。
著者情報
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年より日本全国の底地・借地などの特殊な不動産を専門的に買い取ってまいりました。
どんな底地・借地でも買取りさせて頂きますので、お困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
1.借地権を有償返還する時に係る課税
1-1.有償で借地を返還した場合、借地人には課税される
1-1-1.借地人が個人の場合
有償で借地を返還された場合、借地人が個人の方の場合は地主から受領した立退料は譲渡所得の収入金額となります。
譲渡所得の計算は以下の計算式で計算できます。
課税譲渡所得金額=収入金額 ‐(取得費+譲渡所得)- 特別控除額
つまり、立退料が不動産を購入した金額及び、売買にかかる費用より高い場合に譲渡所得の課税対象になるという事です。
1-1-2.借地人が法人の場合
借地人が法人の場合は、借地人が受領する立退料は借地権譲渡益として計上される事になります。
法人が譲渡益を得た場合、その他の諸々の損益も含めて法人全体の利益に対して法人税が課税されます。
譲渡益の計算方法は、譲渡金額−(取得原価+譲渡経費)で、法人税は法人の課税所得により、累進課税方式で課税率が決定されます。
法人税の税率は、普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等については23.2%(資本金1億円以下の普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等の所得の金額のうち年800万円以下の金額については15%)とされています。
尚、法人税の税率は、国の税収の確保を目的として所得税等の他の税とのバランスを図りながら、その時々における財政事情や経済情勢等を反映して決定されています。
また、その他にも以下の様な税金がかかりますので、覚えておくようにしましょう。
- 地方法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 特別法人事業税
1-2.有償で借地を返還された場合、地主は取得費に計上できる
1-2-1.地主が個人の場合
地主が個人で借地を返還してもらうために立退料を支払った場合、支払った立退料は土地の取得費として計上出来ます。
取得費とは、借地権の立ち退き料の他に購入手数料などの合計額で、借地にかかる取得費には以下の様なものがあります。
- 購入時にかかった税金(登録免許税、不動産取得税、印紙税など)
- 仲介手数料
- 測量費
- 整地費・建物の取り壊し費用など
- 設備費
- 改良費
- 一定の借入金利子
ただ、借地上の建物は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた額になり、購入時の建物価格の全てが控除されるわけではないので気を付けましょう。
1-2-2.地主が法人の場合
地主が個人の方と同じく支払った立退料は土地の取得費として計上出来ますが、立退料より借地権設定の際の損金算入額が多い場合、借地権設定時の損金算入額を取得費に加算します。(立退料と借地権設定の際の損金算入額のいずれか多い方)
しかし、借地権設定時の損金算入額といっても、何のことやらわからないですよね。
簡単に説明すると、元々所有権だった土地を借地権として貸すと、自分の土地ではなくなるため土地(底地)の帳簿上の価額が低くなるという事です。
そこで、借地権を設定する前の更地価額に対して、借地権を設定後した後に底地価額の低下の割合((更地価額-底地価額)/更地価額)が1/2以上であるときは、損金に算入することが出来るというものです。
尚、その土地の帳簿価額については、次の算式にて計算した金額まで減額し、損金に算入します。
損金算入額=土地の帳簿価額×(借地権の価額(受取権利金+認定権利金))/土地の更地価額
少しややこしい話ですが、借地権設定の時に損金算入した場合は、立ち退き料を取得費として計上できなくなることもあると覚えておきましょう。
2.借地権を無償で返還する場合にかかる税
2-1.地主、借地人共に個人の場合
借地を無償で返還を受けて、地主、借地人が共に個人の場合、無償で返還した借地人には課税関係は生じません。
しかし、無償で返還を受けた地主には原則として借地権相当額の授与を受けたものとして贈与税が課税されます。
ただし下記のような理由がある場合は課税は生じないとされております。
- 借地権設定時に無償返還届出書が所轄税務署に届けられている場合
- 土地の使用目的が、単に物品置場、駐車場等として土地を更地のまま使用し、又は仮営業所、仮店舗等の簡易建物の敷地として使用していた場合
- 借地上の建物が著しく老朽化したことその他これに類する事由で、借地権が消滅し、又はこれを存続させることが困難であると認められた場合
- 借地権設定時に相当の地代の支払を行い、その後その土地の価額上昇に応じて順次相当の地代を改定する旨の届出書が所轄税務署に届けられている場合
上記の4つから考えると、「建物が著しく老朽化したことを事由で、借地権が消滅した場合について」が一番考えられる理由と言えるでしょう。
税理士さんと相談して適切に処理するようにしましょう。
2-2.地主個人、借主法人の場合
借地を無償で返還をした場合でも、通常収受すべき借地権相当額を貸主に贈与したこととして借地権の認定課税(寄付金認定)があります。
つまり、無償で返還を受けた地主には原則として借地権相当額の授与を受けたものとして贈与税が課税されることになります。
また、2-1にもご紹介した下記の様な理由がある場合は課税は生じないとされております。
- 借地権設定時に無償返還届出書が所轄税務署に届けられている場合
- 土地の使用目的が、単に物品置場、駐車場等として土地を更地のまま使用し、又は仮営業所、仮店舗等の簡易建物の敷地として使用していた場合
- 借地上の建物が著しく老朽化したことその他これに類する事由で、借地権が消滅し、又はこれを存続させることが困難であると認められた場合
- 借地権設定時に相当の地代の支払を行い、その後その土地の価額上昇に応じて順次相当の地代を改定する旨の届出書が所轄税務署に届けられている場合
2-3.地主法人、借地人個人の場合
借地を無償で返還を受けた地主である法人は、2-1のような理由で借地権設定時に無償返還届出書を届けている場合は課税はされません。
また借地を無償で返還した個人も課税はありません。
2-4.地主、借地人共に法人の場合
借地を無償で返還をした場合でも、2ー2と同じく通常収受すべき借地権相当額を貸主に贈与したこととして借地権の認定課税(寄付金認定)があります。
3.借地権設定をする際の土地の無償返還の届出
先ほどからチラチラ出てきている「土地の無償返還届出」とは何でしょうか?
これは、法人が借地権の設定等により他人に土地を使用させた場合で、その借地権の設定等に係る契約書において将来借地人等がその土地を無償で返還することが定められている場合に、これを届け出る手続です。
なお、この届出者は、土地所有者が個人である場合であっても、提出することができます。
「土地の無償返還届出」は将来の借地権や底値の評価などを、当事者の課税関係に重大な影響を及ぼしかねない借地取引についての、事実関係を明確にすることが目的とされております。
そういった意味で、きちんと契約関係確認し課税のトラブルがないように、税務署長に「無償返還届出書」を提出することをおすすめします。
また、土地の無償返還届出を行う事により土地賃貸借契約終了時に無償返還による課税がされない事になります。
4.借地権の返還で悩んだらURUHOME
ここまで、借地権の返還の課税について解説してまいりました。
借地権の返還をする借地人様、返還をされる地主様にとって、税金がどうなるか非常に気になるところです。
ですので、間違えないように借地の課税に慣れている税理士さんを探すことが重要です。
また、当サイトURUHOMEを運営するドリームプランニングでは、返還する借地・借地を返還されて所有権となる土地の買取も行っております。
2005年の創業より、年間300件ほどのご相談を頂いており、日本全国で底地・借地の買取をしておりますので、ご売却でお困りの借地、底地がございましたら、こちらからお気軽にお問い合わせくださいませ。