借地権を主張する為に必要な登記について【借地権の登記、建物の登記、第三者に対抗する要件】について
借地権の建物を取得したけど、登記しないで良いの?
借地権と地上権って登記する上で何が違うの?
借地権の登記が無いけど、地主が第三者に土地を売却した。自分が借地人だと主張するにはどうすれば良いの?
地主が底地を売却した際、借地権が登記されていないときに、新しい地主にどうやって自分が借地人だと主張するか、気になる方もいらっしゃるかと思います。
そんな時に、どのようにすれば良いか、解説致します。
借地権の登記をするにはどうしたら良いの?
- 1-1.借地権には地上権と賃借権があります
- 1-2.地上権と賃借権を登記する際の”違い”
- 1-3.借地権登記の方法
- 1-4.借地権は登記した方が良い?
1-1.借地権には地上権と賃借権があります。
借地権の登記とは、不動産の所有者や土地や建物の所在等を示すために作られた不動産登記の一つで、建物を所有するために、土地を借りる権利を登記することを意味します。
借地権とは他人の土地において工作物、建物を建てて自己所有するための権利で、他人の土地の地上や地下に建物を建築したり樹木を植えることができる地上権と、賃貸借契約の内容に沿って土地等を使用できる賃借権、2つの形態に分かれるよう定められました。
地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
引用:民法 第265条
1-2.地上権と賃借権を登記する際の違いについて
登記を行う際、地上権の場合は土地所有者に協力義務があります。地上権自体が強力な権利であるため、地主の承諾なしに地上権を登記し、第三者に譲渡し、転貸する事も出来ます。
一方、賃借権の場合は土地所有者に協力義務はありません。賃借権を登記する場合には、土地所有者の承諾が必要となり、土地所有者と共同で土地の全部事項証明書の権利部に借地権の項目を記載する必要があります。
賃借権 | 地上権 | |
種類 | 債権 | 物件 |
登記義務 | 登記義務なし | 登記義務あり |
譲渡の際の地主の承諾 | 承諾要 | 承諾不要 |
抵当権設定 | 賃借権に抵当権設定不可 | 地上権に抵当権設定可能 |
1-3.借地権を登記する方法
司法書士にお願いする形になりますが、必要な書類は次の通りです。
- 「登記識別情報(土地所有者)」
- 「登記原因証明情報」
- 「印鑑証明書」
- 「評価証明書」
- 「賃貸借契約書」
- 「本人確認資料」
- 「実印」
です。次に説明しますが、出来れば借地権は登記した方が良いです。
1-4.借地権は登記した方が良い
借地権の登記は義務ではない上、借地権が賃借権の場合、土地所有者からの登記の協力は義務でない為、借地権の登記をするのは難しいかもしれません。
ですが、借地権を登記する事で、地主、借地人共にメリットはあります。
例えば、あなたが借地人だとして、借りている土地の所有者が変わった際、借地に含まれていると思われていた駐車場部分に、地主が新しく建物を建てて貸してしまうという事もありえます。
もしくは、あなたが地主で定期借地権として土地を貸していた場合、借地人が第三者に借地権付き建物を売却し、建物の買取を請求してきた場合などでも、定期借地権の登記がされていればこれを退ける事も出来ます。
このように双方にメリットのある事ですので、出来れば借地権は登記をする事をお勧めいたします。
2.借地権の登記を出来ない場合、第三者に借地権の登記を主張する方法はある?
- 2-1.建物の登記をする事で第三者に対抗できます。
- 2-2.借地上に建物が無くても借地権が主張できることがあります
- 2-3.建物登記の方法
2-1.建物の登記がされていれば第三者に対抗可能
借地権の登記がなければ第三者に借地権を対抗できないと思うかもしれませんが、借地上に借地権者の名義で登記された建物が建っていれば第三者に対抗できるとされています。
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
引用:借地借家法 第10条1項
土地の上に借地権が設定されている底地が売却された場合、建物登記がされていないと第三者に対して、土地の明け渡しを求められる可能性があるため建物登記は必要です。建物登記行うことで第三者に対抗可能となりますので、建物登記はするようにしましょう。
2-2.借地上に建物が無くても借地権が主張できることがあります
借地上の建物が火災などで滅失した場合、建物所有目的の借地権は消滅してしまうと思うかもしれませんが、こんな時でも「滅失した建物を特定する為に必要な事項(所在、家屋番号、種別、構造、床面積など)」「滅失があった日」「新たに建物を築造する旨」を設置して、借地上に掲示しておけば、2年間は対抗要件として主張出来ます。
前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
引用:借地借家法 10条2項
2-3.建物登記の方法
手続きに関しては、電子申請や書面で申請することができるよう定められました。書面で申請を行う場合は法務局で申請を行うことになります。申請方法は、土地家屋調査士に依頼し、建物表題登記を行った後、司法書士に建物の所有権保存登記を依頼しなければなりません。
相続が発生した場合も、登記が必要となります。借地権を相続する場合は、土地所有者の承諾は必要ありません。配偶者や子供、兄弟姉妹や親以外が受け継ぐ以外は、相続ではなく遺贈になります。建物所有権移転の登記を行う必要がありますが、相続と異なり土地所有者の承諾が必要となる事があります。
相続の場合:建物登記が必要、土地所有者の承諾は不要
遺贈の場合:建物登記が必要、土地所有者の承諾が必要
借地権の登記は地主にとっても、借地人にとってもメリットになる事が多いです。借地権の出来ない場合、建物の登記だけはするようにしましょう。
著者情報

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人