「借地権の更新が拒否された!」
こんな時、借地人さんは「借地借家法13条による建物買取請求」をすることができます。
また、譲渡承諾を拒否された場合も借地人さんは建物買取請求をすることができます。

裏を返すと、地主さんにとっては借地の更新を拒絶するとき、譲渡承諾を拒否したときは、建物買取請求をさせる可能性があるということです。

今回は、建物買取請求とは何か、底地買取会社社長が要件や判例、対策について詳しく解説いたします。

著者情報

建物の買取請求権とは?(借地借家法13条、14条の要件と判例)with image|URUHOME

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人

法政大学工学部建築学科卒、中堅不動産仲介業者を経て、株式会社ドリームプランニングに入社。底地、再建築不可、市街化調整区域内の土地など、特殊な土地の売買を多く手掛ける。2020年8月より代表取締役に就任

著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年の創業より、日本全国の底地を専門的に買い取ってまいりました。

大変ありがたい事に日本全国から不動産のご相談を頂いており、無料査定を行い、1億円位までの底地であれば最短2日でお買取りさせていただくことも可能です。

ご売却にお困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。

  1. 建物買取請求権とは?
  2. 建物買取請求権の性質
  3. 建物買取請求の判例と相場
  4. 地主が取るべき建物買取請求への対応
  5. 建物買取請求で困ったらURUHOME

1.建物買取請求権とは?

建物買取請求権とは、 借地契約が更新しないで終了した時や(借地借家法13条)、借地人から借地権を譲り受けたが、地主の承諾が得られない場合に(借地借家法14条)、建物を買い取らせる権利のことです。

一般的には上記のような借地契約が終了せざるを得ない場合にしか利用できず、借地契約期間中に建物を利用しなくなったため買い取ってほしいなどの場合、建物買取請求をすることは出来ません。

1-1.借地借家法第13条「建物買取請求権」とは

借地借家法は30年以上もの長い期間にわたり土地や建物を借り受けることができるものですが、この契約が満了し更新をしない場合には、その土地や建物にかけた借受人の経済的な負担等が多く残っていることも少なくありません。

しかし基本的には契約を更新しない場合、その物件に借受人が様々な投資を行った資産も合わせて返却をすることになるため、様々な問題を生じることも多いものです。

このような問題を解消するために借地借家法第13条では、「建物買取請求権」を設定しています。

借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

借地借家法13条 建物買取請求権

借地借家法13条の「建物買取請求権」とは、借地借家法に基づく契約更新をしない場合、借地人が建てた建物やその他のものに関して借地人が地主に対し、建物の買取請求を出来る権利を指します。

この場合には建物を時価での買取をすることが地主に対して義務付けられており、買取請求を行使されたら地主は借地借家法第13条により建物を買い取らなければならないことになっております。

買取請求の行使については地主さんに対して内容証明郵便で譲渡承諾が拒否されたことの確認と、建物買取請求をする旨の書面を出さなければなりません。

1-1-1.建物買取請求をいつ行使するか?

借地人が借地契約を更新する際に、地主が更新拒絶をして、更新拒絶に正当事由が認められると、借地契約は終了することになります。

正当事由があるかどうかは、最終的には裁判所が決めることで、この時に地主さんは建物収去土地明渡の訴訟を申し立てることになります。

 裁判によって地主に正当事由があったと認められるとき(つまり判決が出た後に)、借地人は建物買取請求権を行使できるのですが、裁判の途中でも、借地権が消滅することを前提として、建物買取請求権を行使することも出来ます。

1-1-2.更新拒絶には正当事由が必要

尚、更新拒絶を認める正当事由には次のようなものがあります。

  • 地主の土地の使用を必要とする事情
  • 借地に関する従前の経緯
  • 土地利用の状況
  • 財産上の給付

一番大事なのは「地主が土地の使用を必要とする事情」で、「従前の経緯」や「土地利用の状況」が次に重要なポイント、「財産上の給付」というのはあくまで補完的なものです。

尚、地主の土地の利用を必要とする事情という点については、地主と借地人のどちらかが土地を必要としているかという所が重要で、以下のような項目がチェックポイントになります。

  • 自己又は親族の居住等の必要
  • 長期間建物が使用されていない
  • 地主が他に多くの不動産を所有していない
  • 借地人が他に多くの不動産を所有している
▲ 借地権を返還してもらう際の正当事由についてはこちらで解説しています。

1-2.借地借家法第14条「第三者の建物買取請求権」とは

借地借家法14条の第三者の建物買取請求とは、借地上の建物を第三者が取得し、地主が承諾しない場合、譲渡を受けた第三者が地主に建物を買い取らせることができる権利です。

建物買取請求権の趣旨は、地主に対する承諾の間接的強制、投下資本の回収を図る意味もある【S58.4.28 大阪高判】とあり、悪意を持って譲渡承諾を拒否する地主に対する対抗策とも考えられています。

第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

借地借家法14条 第三者の建物買取請求権

1-3.建物買取請求は強行規定

建物買取請求は強行規定といって、借地人に不利なものは無効になります。(借地借家法16条)
ですので、借地契約で建物買取請求は認めないという特約があったとしても、それは無効になります。

第十六条 第十条、第十三条及び第十四条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。

借地借家法16条(強行規定)

また、一般定期借地権や事業用定期借地権などの場合も、一定期間が過ぎた際に借地契約が終了し、買取請求も出来ない事が前提となっているため、建物買取請求は出来ません。

建物買取請求をされそうという事で困っていたら、いっそのこと売却してしまうのも良いかもしれません。

当サイトURUHOMEを運営するドリームプランニングでは、建物買取請求権を行使されて困っている底地の買取も可能です。

お困りの底地がございましたら、お気軽にご相談ください。

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1-4.建物買取請求が出来た背景

建物買取請求が出来た趣旨としては、借地契約が終了した場合に借地人が建物を解体して更地として地主に借地を返還しなければならないため、借地人が建てた建物の建築費用が無駄になり、投下した資本を回収できない状態になるので、借地人保護の観点から生まれました。

建物を解体するという事自体が価値があるものを消滅させることにもなるので、社会的な損失であるという視点もあります。

また、現実的には建物請求を認める事で、安易に地主が借地権譲渡を認めなかったり、更新を拒絶する事に対する事に対する抑止になっているという面もあります。

▲ 底地・借地の歴史についてはこちらで解説しています。

2.建物買取請求権の性質

建物買取請求はいつでも、どんな時でも地主さんに対して請求できるものではありません。

借地が更新されない事、譲渡承諾されない事はもちろんですが、それ以外の要件もあります。

ここでは、建物買取請求の性質や建物買取請求が出来るときと、出来ない時について解説いたします。

2-1.建物買取請求権は形成権

借地借家法第13条の建物買取請求権は形成権と言われており、形成権とは単独の意思表示のみによって法律効果を生じさせる権利の事です。

建物買取請求権が行使されると、地主の意思に関係なく建物の所有権は地主に移転し、地主には建物代金支払い債務が生じたと解されます。

借地人が建物買い取り請求を行えば地主の意思に関わらず、地主は建物を買い取らなければいけないのですが、買取請求権が行使できない場合もあるので注意が必要です。

2-2.建物買取請求が出来るとき、出来ない時

借地権者が建物買取請求権を行使するには、更新拒絶に正当事由があるなどして、借地契約が終了することや、次のような条件が必要です。

  1. 借地契約の期間の満了(13条)
  2. 借地契約が更新されないこと(13条)
  3. 借地上に建物がある事(13条、14条)
  4. 債務不履行などがない事(13条、14条)
  5. 所有権が第三者に移転している事(14条)

つまり、契約期間中や借地契約が更新された時、建物が滅失してしまったときなどは建物買取請求は出来ないという事になります。

次のような場合について建物買取請求は出来るのでしょうか?

2-2-1.地代の未払いがある場合

地代の未払いなどで契約解除された場合は、建物買取請求は出来ません。

建物買取請求が認められるのは、更新時に地主が更新拒絶をした場合や、借地権を譲り受けたが地主の承諾が得られない場合です。

地代の未払いや無断増改築(建物の維持・保存に必要な範囲内を除く)などがある場合も基本的には建物買取請求は認められません。

2-2-2.合意解除した場合

借地人も地主も契約を更新しない事に合意して、合意解除した場合、借地人は建物買取請求を放棄したとみなされることになるため、建物買取請求は出来ません。

また、借地人が更新を希望しないで建物買取請求をした場合、地主も契約終了を望んだ場合は建物買取請求が出来るが、地主が更新を望んでいた場合は建物買取請求は出来ないと考えられています。

2-2-3.所有者の異なる土地にまたがって建っている場合

所有者の異なる土地に建物がまたがっている場合、建物買取請求は認められません。

建物買取請求は建物がそれぞれ独立している必要があり、建物の一部分だけを買取請求の対象とする場合、独立して利用できる区分所有権の対象とならなければ買取請求は出来ないと判断された判例があります。

3.建物買取請求の判例と相場

建物買取請求において、借地権は買い取り請求の対象とはなりませんが、建物以外にも買取請求となるものがあります。
ここでは、建物買取請求において買取請求となる対象と相場について解説いたします。

3-1.建物買取請求権は時価

建物買取請求権が行使された場合の建物の代金の相当額は、買取請求を提起した時点の「時価」であると借地借家法の条文を見ると分かります。

また、建物買取請求の対象となるのは建物のみであり、借地権の価格は考慮されないこととされています。

建物の価格については建築費用から耐用年数を減価した「再調達価額」を算出することから求められます。
尚、建物の再調達価額は、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼すると評価してくれます。

しかし、建物買取請求の価額は「建物の再調達価格」+「場所的利益相当額」によって算出されます。

次に、「場所的利益」というものが何か見ていきましょう。

3-2.場所的利益が考量される

建物買取請求の価格を決めるうえで良く出てくるのが「場所的利益」という概念です。

場所的利益については「借地権価格ではない」「借地権価格に類するもの」と相反する学説がありますが、「建物の存在自体から建物所有者が享受する事実上の利益」であり「敷地利用権のようなもの」と考えらえます。

解釈としてすっきりしないところがありますが、建物買取請求の対象として建物の価格のみだとすると、借地権の更新拒絶や、譲渡承諾の拒否などによって、本来更地価格の70%程度の借地権価格を0にするのは酷であるということの補償的意味合いがあるとも考えられています。

場所的利益を認めることは一般的となっておりますが、当初場所的利益を明確な形で認めた判決では、場所的環境という言葉を使った次のような記述があります。

「建物が現存するままの状態の価格であって、敷地の借地権の価格は加算すべきでないが、この建物の存在する場所的環境は参酌して算定すべきものである」(最高裁昭和35年12月20日判決)

3-3.場所的利益の相場

 場所的利益を幾らとするかは様々な判例があり、ネットでも様々な考えが見られますが、判例を見ると一般的には更地価格の15%~40%程度が多いようです。

  • 更地価格の40%(東京地判S49.9.30)
  • 更地価格の12%(東京地判H3.6.20)
  • 借地権価格の50%(高松高判H16.10.12)
  • 土地価格の15%(東京高判H10.6.12)

また、場所的利益については不動産鑑定評価の対象とはならないため、不動産鑑定士が場所的利益の鑑定評価をすることはありません。
(国土交通省に確認したところ、不動産鑑定士が場所的利益について不動産鑑定を行っていた場合指導対象になるとのことでした)

4.地主が取るべき建物買取請求への対策

建物買取請求は起こされないに越したことはありません。

そこで、建物買取請求を起されないようにするために地主さんはどうすべきか、買取請求を起されかねないような状況になってしまった場合の対応について解説します。

4-1.建物買取請求は拒むことができない

建物買取請求は形成権といって、借地人が建物買取請求の意思表示をすることで売買が成立したことになるという事はご説明しました。

ここで重要なのは、地主さんが承諾するとか、拒否するという意向と全く関係なく、一方的に借地人が買取請求の意思表示をすることにって成立するという事です。

話し合いで済めばよいのですが、裁判になるとかなり長期化することも予想されます。

ですので、出来る限り建物買取請求を起されないようにすることが大事です。

4-2.日ごろから借地人との関係を良好に

借地人との関係を日ごろから良好にしておくことで、建物買取請求を起されることを避けられます。

建物買取請求を起されるには、借地の更新を拒絶するか、建物の譲渡承諾を拒否しない限り、借地人から建物買取請求をされることはありません。

借地人さんの中には、一方的に自分の言い分しか言わず、強行的に地代の値下げ要求をしたりする人もおり、友好関係を築くのが難しいこともあるのは確かです。

しかし、借地を返還してほしいがために更新や譲渡承諾を拒否したり、法外な更新料や譲渡承諾料を請求したりしてしまうと、訴訟に発展することも少なくありません。

借地人さんの権利を尊重したうえで、良好な関係を築くようにしましょう。

▲ 借地人とのトラブルと対処法について解説しています。

5.建物買取請求で困ったらURUHOME

いくら地主さんとの関係を良好に保とうとしても、更新料ばかりか譲渡承諾料の支払いをしたくない、無理な地代の値下げ要求をしてくる方など、良い関係を築けない方もいらっしゃいます。

そんなときは、いっそのこと底地を売却して現金化してしまうのも一つの方法です。

当サイトURUHOMEを運営している株式会社ドリームプランニングは、建物買取請求を起されそうな不動産の買い取り実績も多数あり、2005年の創業より日本全国の底地の買取しております。

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