「不動産を売却したいけど、浄化槽がついている場合はどうすればいいの?」
「浄化槽がついていることで、安く買い叩かれてしまいそうで心配……」
そんな悩みをお持ちの方も、少なくないのではないでしょうか。
という訳で、今回は浄化槽つき不動産を売却する時に必要な手続きと、注意すべきポイントを浄化槽付き不動産などの買取会社社長が解説いたします。
監修者情報

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
全国の汚水処理の普及率は92.6%、そのうち浄化槽は9.4%あると言われております。
しかし、浄化槽のある家は売却しにくいのが現状です。
そこで今回、当サイトURUHOMEを運営する”2005年の創業より、浄化槽のある家など売却が難しい不動産”を専門に買取りを行ってまいりました。
お困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談ください。
1.浄化槽とは何か?
浄化槽とは、下水道が整備されていない地域で汚水を処理するための設備として浄化槽法に定められたものです。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
浄化槽法【昭和58年法律第43号】 第2条1
一 浄化槽 便所と連結してし尿及びこれと併せて雑排水(工場廃水、雨水その他の特殊な排水を除く。以下同じ。)を処理し、下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第六号に規定する終末処理場を有する公共下水道(以下「終末処理下水道」という。)以外に放流するための設備又は施設であつて、同法に規定する公共下水道及び流域下水道並びに廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第六条第一項の規定により定められた計画に従つて市町村が設置したし尿処理施設以外のものをいう。
浄化槽の中には微生物がすんでおり、彼らが家庭から排出された汚水を分解。
最後に消毒してから河川へ放流する仕組み(生物膜法、活性汚泥法)となっています。
浄化槽には水洗トイレからの汚水だけを処理する「単独処理浄化槽」と、台所排水や浴室排水などもまとめて処理する「合併処理浄化槽」の2種類があり、2001年4月以降は合併処理浄化槽だけが設置可能(単独処理浄化槽は設置禁止)となりました。
1-1.下水道との違い
浄化槽の使用者には、保守点検・清掃・法定検査という3つの義務(浄化槽法第7条~第12条の2)が定められています。
通常の下水道に比べて、維持管理にコストがかかるのがデメリットと言えるでしょう。
【浄化槽の維持管理コスト例】
- 清掃費用……25,000円/年
- 保守点検……18,000円/年
- 電気料金……11,000円/年
- 法定検査……5,000円/年
※上記価格は参考です。実際の価格は自治体や業者により異なるため、詳しくは依頼先へご確認ください。
また浄化処理しているとは言え、浄化槽の汚水は直接河川に放流されています。
処理が不十分だと悪臭や衛生環境の悪化、自然破壊などにつながりかねないので注意しましょう。
1-2.浄化槽の正しい使い方
汚水をきちんと浄化処理するためには、浄化槽を正しく使い、そのポテンシャルを引き出してあげる必要があります。
まず、浄化槽にすんでいる微生物の浄化能力には限界があるため、そのキャパシティをオーバーしないよう注意しなければなりません。
例えばトイレではトイレットペーパー以外の水に溶けないタイプの紙(新聞紙やティッシュペーパーなど)を流さないようにしましょう。
これらは微生物が分解できないのです。
台所から大量の油や生ごみなどを流すのも、微生物が分解できず浄化槽内の汚れや悪臭につながります。
合わせて洗剤などについても、合成洗剤を大量に使ってしまうと浄化槽内の微生物たちが死滅してしまうので控えましょう。
特に塩素系の洗剤は微生物を死滅させてしまいます。
定期的なメンテナンスに加えて、日常生活でも気をつかうことが多いため、浄化槽つき不動産は敬遠されがちなのです。
2.浄化槽つき不動産を売却する流れは?
そんな浄化槽つき不動産を売却する時は、どのようにすればいいのでしょうか。
不動産のある地域に下水道が整備されているかいないかによって、不動産売却の流れが少し変わってきます。
2-1.下水道が整備されている場合
下水道が整備されている場合、浄化槽を廃止して下水道に切り替えることが推奨されています。
第10条 公共下水道の供用が開始された場合においては、当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく、次の区分に従つて、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管、排水渠きよその他の排水施設(以下「排水設備」という。)を設置しなければならない。ただし、特別の事情により公共下水道管理者の許可を受けた場合その他政令で定める場合においては、この限りでない。
下水道法【昭和三十三年法律第七十九号】 第10条(排水設備の設置等)1
一 建築物の敷地である土地にあつては、当該建築物の所有者
かみ砕くと「下水道が整備された地域内の不動産所有者は、遅滞なく下水道につながる排水設備を準備しなさい」ということです。
ただし「特別の事情により公共下水道管理者の許可を受けた場合」等については例外であり、現在使っている浄化槽を廃止してまで下水道に切り替えなければならないのか、という点については下水道管理者によって考え方が分かれるようです。
このまま浄化槽を使い続けるか、あるいは下水道に切り替えるか、買主の意向を汲んだうえで、下水道管理者と協議して決めていきましょう。
浄化槽を使い続ける場合は、次の「2-2.下水道が整備されていない場合」で詳しく解説します。
また、浄化槽から下水道に切り替える場合は、相応の工事費が発生するため、事前に確認しておきましょう。
2-1-1.浄化槽から下水道への切り替え工事にかかる費用例
ちなみに、下水道が前面道路まで整備されていても、まだ浄化槽を利用している場合、下水道に切り替える必要があることもあります。
尚、下水道への切り替え工事にかかる費用例については、以下の通りです。
- 浄化槽の撤去費用(全撤去)……10~15万円
- 下水道への接続工事費用……15~50万円
合計25~60万円が相場
前面道路に下水の本管が通っていて、工事車両が問題なく通行出来れば、上記の費用で済むこともあります。
しかし、前面道路本管までの距離が離れていると、金額が跳ね上がる事があります。
また、工事車両が入れない場合は、掘削に手間かかるため費用が高くなります。
2-1-2.浄化槽の廃止方法
また、浄化槽から下水道に切り替える際に、浄化槽の廃止方法には「全撤去」と「埋め戻し」という2つの方法があります。
文字通り浄化槽の躯体まるごと撤去する「全撤去」に比べ、撤去せずに埋めたままにしてしまう「埋め戻し」の方が、目先の費用だけ見ればいくらか安くすむのです。
しかし、埋め戻した浄化槽もいずれは撤去しなければなりません。
つまり問題の先送りに過ぎないため、長い目で見るとかえって割高になってしまいます。
また、地中にいつまでも浄化槽が残っていると、土壌の衛生状態や地盤沈下などが気になってきます。
ですので、下水道に切り替える場合は、気持ちよく不動産を買ってもらうためにも全撤去の方が結局はお得と言えるでしょう。
2-1-3.浄化槽廃止時の届け出義務について
ちなみに、浄化槽を廃止した時には工事完了から30日以内に都道府県知事へ「浄化槽使用廃止届出書」を提出する必要があります(浄化槽法第11条の3)。
浄化槽法
(廃止の届出)
第十一条の三 浄化槽管理者は、当該浄化槽の使用を廃止したときは、環境省令で定めるところにより、その日から三十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
浄化槽法【昭和五十八年法律第四十三号】 第13条の3(廃止の届出)
この義務を怠ると浄化槽がまだ使用され続けているものとみなされ、清掃などの義務を課せられるほか、罰則の適用もある(浄化槽法第68条。5万円以下の過料)ので気をつけましょう。
第六十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の過料に処する。
浄化槽法【昭和五十八年法律第四十三号】 第68条2
二 第十一条の二第二項、第十一条の三、第十二条の十一又は第十二条の十六第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
2-2.下水道が整備されていない場合
一方で、下水道が整備されていなければ、今ある浄化槽をそのまま使い続けることになります。
この場合は目先の追加費用は発生しません。
ただし考えなければいけないのが、浄化槽の耐用年数です。
一般的に浄化槽の耐用年数は20~30年と言われており、設置後何年経っているのか確認し、もうすぐ寿命が来そうであれば交換も検討が必要でしょう。
買主にしてみれば、購入してすぐ浄化槽の交換費用がかかるとなれば、売主に文句の一つも言いたくなってしまいます。
※売買契約前の重要事項説明では、浄化槽を使っていることの説明は受けても、浄化槽の寿命までは教えてくれないでしょうから……。
2-2-1.浄化槽の交換費用
なお、浄化槽の本体価格はサイズによって異なりますが、5人槽(浄化槽の処理能力≒大きなを示す単位)で約80~100万円。
これに先ほどの撤去費用が加わると考えると、浄化槽の交換には、100~130万円ほどの出費は覚悟が必要です。
浄化槽の設置時期がおおかた分かっているなら、そこから計算して寿命がいつごろ来そうか伝えてあげた方が親切でしょう。
その上で浄化槽を交換するか、交換するなら費用の負担割合などを協議することになります。
2-2-2.浄化槽の所有者が変わった場合の届出義務
また、浄化槽つき不動産の所有者が変わった時は、買主に「浄化槽管理者変更報告書」を提出する義務があることも伝えなければなりません。
第10条の2 浄化槽管理者に変更があつたときは、新たに浄化槽管理者になつた者は、変更の日から三十日以内に、環境省令で定める事項を記載した報告書を都道府県知事に提出しなければならない。
浄化槽法【昭和五十八年法律第四十三号】 第10条2
浄化槽がある家をそのまま売却したい場合は、当サイトURUHOMEを運営するドリームプランニングにご連絡ください。
2-3.浄化槽つき不動産を売却する流れのまとめ
一般的な不動産売却の流れは大きく以下の6ステップです。
(1)不動産会社に売却を相談
(2)不動産会社と媒介契約を締結
(3)不動産の販売活動を開始
(4)買主と売買契約を締結
(5)物件の引き渡し・決済
(6)売却後に確定申告を行う
浄化槽つき不動産の売却も大体これと同じですが、浄化槽をどうするか、という問題が浮上します。
【下水道が整備されている場合Aケース】
ステップA-1.下水道に切り替えるか協議・検討する
※下水道に切り替えないならBケースと同じ
ステップA-2.下水道に切り替える場合は浄化槽を廃止・撤去する
ステップA-3.浄化槽を廃止した時は届け出る
【下水道が整備されていない場合Bケース】
ステップB-1.浄化槽の耐用年数により交換するか検討する
ステップB-2.必要ならば浄化槽を交換する
ステップB-3.浄化槽の所有者が変わった旨を届け出る
Aケースは全ステップ事前に行えます。BケースはステップB-3のみ(4)以降に行うことになるでしょう。
浄化槽の取り扱いについてお困りの際は、ドリームプランニングでもご相談いただけます。

3.浄化槽つき不動産を売却する時のポイント
ここからは、実際に浄化槽つき不動産を売却する際に留意すべきポイントを解説していきましょう。
何より重要なのは「浄化槽つき不動産であることのデメリット(心理面を含む)を少しでも緩和する」ことにつきます。
3-1.臭気対策を怠らない
浄化槽と聞いて、詳しく知らない人がまず思い浮かべるのは匂いの問題。
「この物件は、何かよく分からない方法で汚水を処理しているらしい」「生活に支障や不快感がもたらされるんじゃないか……」などの偏見を払拭しなければ、売れる不動産も売れません。
買主がそんな先入観を持ちながら何か不快な匂いを感じると、たとえそうでなくても「浄化槽があるからじゃないか」と思い込んでしまいます。
浄化槽から悪臭が発生する主な原因は、微生物の減少またはキャパシティオーバーのどちらかです。
3-1-1.臭気対策の為に、電気を止めない
微生物が減少するのは、浄化槽に酸素を供給するモーター(ブロアー)が停止したことによる酸欠死が主原因。
数が減れば当然処理能力が下がりますから、分解しきれない汚水が臭気を発するようになります。
先ほど紹介した通り、モーターを稼働させる電気代は年間で約11,000円とバカにならない金額です。
だから節約したくなりますし、まして現在使っていない空き家なら尚更でしょう。
しかし電気を止めてしまうと微生物が死滅して悪臭が発生するため、浄化槽つき不動産を売却したいなら、年間の電気代は必要コストと割り切るべきです。
また微生物が分解できない紙類や生ごみ、微生物を死滅させてしまう薬品類などを多量に流したり、清掃を怠ったりなども悪臭の原因。
逆にきちんと対策すれば、浄化槽つき不動産でも快適に暮らせることがアピールできます。
3-1-2.臭気対策の為に、適度な管理を
あと浄化槽と直接関係はないのですが、空き家にありがちな不快な匂いの原因はトイレの乾燥。
長い間使っていないことで排水トラップ内の水が蒸発してしまい、匂いをシャットアウトできなくなっているのです(加えて、ネズミや害虫が入ってくる可能性も)。
「ホラやっぱり浄化槽は……」なんて言わせないよう、内見が決まったら事前にトイレの水を流して、排水トラップに水を溜めておきましょう。
3-2.モーターの騒音・振動対策
浄化槽を健全に維持するためには、微生物に酸素を送り込むことが欠かせません。
それで絶えずモーターを回しておく必要がありますが、モーターが発する騒音や振動も生活面で少なからぬ影響を与えます。
実際に住んでみないと分からない部分ですが、後からトラブルにならないようにあらかじめケアしておきたいところです。
具体的にはモーターの下に防振マットを敷いたり、モーターの土台を建物の基礎から離して設置したりするのも効果があります。
また、浄化槽に使われるモーターの寿命は一般的に5~7年と言われており、無理して長く使っている場合は買い替えも視野に入ってくるでしょう。
モーターの交換費用は約7~11万円が相場と言われており、決して安くはありません。
そのため、費用負担については買主の方と十分な協議が必要です。
3-3.費用はこちらで負担、その代わり売価に上乗せ
ここまで浄化槽つき不動産の売却について解説してきましたが、浄化槽は維持管理するにせよ撤去するにせよ、通常の下水道に比べて費用がかさんでしまうことが分かります。
そのかさんだ費用について、少しでも買主に負担してほしいところですが、買主にしてみれば余計な出費以外の何者でもありません。
だから払いたくない気持ちは解ります。
しかし不動産を売却したい一心で、買主の要望を何でもかんでも呑んでいたら、こちらの利益はどんどん削られてしまうでしょう。
そこで浄化槽の費用負担について協議する時は、こちらから「こちらで持つ」と提案しておき、その分だけ負担分を不動産の売価にある程度上乗せしておく手が有効です。
もちろん浄化槽つき不動産に付加価値をつけるための材料が必要ですから、売り物に対する入念な下調べが必要となります。
ただ、素人がいきなり浄化槽つき不動産について調べたところで、付加価値を見つけ出すのは難しいもの。
そこで不動産のプロにアドバイスを求め、買主に満足してもらえるよう理論武装に努めましょう。
4.浄化槽つき不動産を売却するならURUHOME
以上、浄化槽つき不動産を売却する場合について解説してきました。
一般的には面倒な案件に分類されがちな浄化槽つき不動産でも、正しく段取りをすればきちんと売却できるのです。
しかし買主様と交渉する中で、お互いの利害が対立してしまうことも起こりえます。
そのような時には、当サイトURUHOMEを運営しているドリームプランニングにご相談くださいませ。
当社は創業より18年、東京・神奈川を中心にさまざまな不動産売却のお手伝いをして参りました。今回もお客様のお役に立てる可能性がございます。
また、浄化槽付き不動産については、他の不動産業者では買い取りが出来ないこともありますが、当社であれば直接買取させて頂くことも可能です。
問い合わせから最短2時間で査定、最短2日でお買取りさせて頂いた実績もありますので、ぜひ当社までお気軽に査定のご依頼をください。
もちろん査定は無料、金額にご納得いただけない場合は、一般のお客様に売却するお手伝いをすることも可能ですので、是非一度ご相談くださいませ。
.jpg)