「ウチの物件は『建築審査会の許可が必要』って言われたんだけど、いったい何のこと?」
ニッチな不動産屋としておなじみドリームプランニングでは、こうしたご相談をよくいただきます。

「そもそも建築審査会ってナニ?」「建築審査会の許可ってどう取るの?」
今回はドリームプランニングの社長が、建築審査会について分かりやすく徹底解説!
みなさんのご参考になれば幸いです。

【この記事を読むと、こんな悩みが解決できます!】

著者情報

建築審査会の許可が必要な物件ってナニ?不動産のプロが徹底解説!with image|URUHOME

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人

法政大学工学部建築学科卒、中堅不動産仲介業者を経て、株式会社ドリームプランニングに入社。底地、再建築不可、市街化調整区域内の土地など、特殊な土地の売買を多く手掛ける。2020年8月より代表取締役に就任

著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年の創業より売却の難しい不動産を買取りする専門業者として日本全国で訳アリ物件を買取してまいりました

大変ありがたいことに神奈川・東京をはじめ日本全国から不動産のご相談を頂いており、5,000万円位までの不動産であれば最短2日で買取りさせていただくことも可能です。

売却の難しい不動産でお困りでしたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。

  1. 建築審査会では何が審査されるのか?
  2. 結局「建築審査会の許可」とは何なのか
  3. 建築基準法第43条2項の許可とは?
  4. 建築審査会とはどういう機関なのか
  5. 建築審査会について、建築基準法を徹底解説!
  6. 不服申し立ては建築審査会へ
  7. 建築審査会の許可が必要な物件でお悩みなら、URUHOMEへご相談を

1.建築審査会では何が審査されるのか?

建築審査会というからには、建築に関して何かしら審査する会であることは分かります。

具体的には何を審査するのか?大きく4つに分類されるので、それぞれ解説していきましょう。

▲包括同意基準・個別提案基準などについて解説。こちらもどうぞ!

1-1.包括同意基準

包括同意基準(ほうかつどういきじゅん)とは建築審査会が設けた基準の一つです。

建築基準法第43条2項の許可を出す際、特定行政庁は建築審査会の同意を得なければなりません。

しかしすべての案件についていちいち審査していられないので「この基準を満たしていたら、建築審査会の審査なしで同意を得たものとみなします」という基準を設けました。これが包括同意基準です。

実務的には、特定行政庁から「包括同意基準を満たしていたので、建築審査会の同意を得たものとして処理した」などの事後報告を受け、内容を確認・了承することになります。

建築基準法第43条2項の許可については、後ほど詳しく解説しましょう。

1-1-1.【参考】神奈川県横浜市の包括同意基準

ここでは一例として、神奈川県横浜市で定めている包括同意基準を見てみましょう。

建築審査会包括同意基準1広場等に接する敷地に建築する建築物
建築審査会包括同意基準2公的機関等が管理する幅員4m以上の道に接する敷地に建築する建築物
建築審査会包括同意基準3-2都市計画法第37条の規定に基づく制限解除を受けた建築物、土地区画整理法第76条の規定に基づく許可を受けた建築物その他これらに類するもの
建築審査会包括同意基準3-3平成11年5月1日において現に存在する路線型の道等に接する敷地に建築する建築物「空地幅員1.8m以上、中心後退2m以上」
建築審査会包括同意基準3-3の2平成11年5月1日において現に存在する専用型の通路の終端等に接する敷地に建築する建築物「空地幅員1.5m以上、かつ、延長20m以下」
※参考:敷地等と道路との関係の許可・認定(建築基準法第43条第2項) 横浜市

【包括同意基準1】広場などに接している敷地に建てる建物
【包括同意基準2】公的機関等が管理している幅4m以上の道に接している敷地に建てる建物
【包括同意基準3-2】都市計画法第37条の制限解除や、土地区画整理法第76条の許可を受けた建物
【包括同意基準3-3】1999年5月1日時点で幅1.8m以上/中心後退2m以上の道(路線型)等に接している敷地に建てる建物
【包括同意基準3-3の2】1999年5月1日時点で現存する幅1.5m以上/長さ20m以下の通路(専用型)終端に接する敷地に建てる建物

路線型とは両方向へつながっている道路、専用型とはその敷地に出入りするための通路をイメージしてください。

実際に建築審査会の許可を求める際は、しっかりと確認しておきましょう。

※参考:敷地等と道路との関係の許可・認定(建築基準法第43条第2項) 横浜市

1-2.個別提案基準

個別提案基準(こべつていあんきじゅん)とは、建築審査会が設けたもう一つの基準になります。

提案された案件について「建築審査会の審査なしで同意できる水準ではないものの、この基準を満たしていれば『建築基準法第43条2項の許可に同意するか』を、審査しますよ」という最低ラインとイメージしてください。

1-2-1.【参考】神奈川県横浜市の個別提案基準(個別同意基準)

建築審査会個別同意基準3-4平成11年5月1日において現に存在する路線型の道等に接する敷地に建築する建築物「空地幅員0.9m以上1.8m未満、中心後退2m以上」
建築審査会個別同意基準3-4の2平成11年5月1日において現に存在する専用型の通路の終端等に接する敷地に建築する建築物「空地幅員0.9m以上、かつ、延長15m以下」
建築審査会個別同意基準3-5平成11年5月1日において現に存在する路線型の道等に接する敷地に建築する建築物「空地幅員0.9m以上、中心後退1.35m以上2m未満」
※参考:敷地等と道路との関係の許可・認定(建築基準法第43条第2項) 横浜市

【個別同意基準3-4】1999年5月1日時点で現存する幅0.9m以上~1.8m未満/中心後退2m以上の道(路線型)等に接している敷地に建てる建物
【個別同意基準3-4の2】1999年5月1日時点で幅0.9m以上/長さ15m以下の通路(専用型)の行き止まりに接している敷地に建てる建物
【個別同意基準3-5】1999年5月1日時点で現存する幅0.9m以上/中心後退1.35m以上~2m未満の道(路線型)等に接している敷地に建てる建物

こちらも、実際にはあらかじめ確認しておくのがおすすめです。

1-3.個々に審査すべき案件

では、個別提案基準にも達していない案件については問答無用で不許可なのかと言えば、必ずしもそういう訳ではないようです。

特別な事情を加味して許可を出すべきかどうか、特定行政庁が判断に迷った場合において建築審査会が総合的に審査してくれるでしょう。

1-4.その他、建築審査会の同意が必要な案件

他の案件についても建築審査会の同意が必要となる場合があります。実務的にはあまり出てこないと思いますが……。

ここでは建築基準法の条文をもとに、建築審査会の同意が必要なケースを解説していきましょう。

  • 文化財保護法などによる建築基準法の適用除外(3条1項3号)
  • 国宝や重要文化財などの原形再現の必要性認定(3条1項4号、1号)
  • 旧重要美術品等の保存に関する法律による重要美術品等の原形再現認定(3条1項4号、2号)
  • 特定建築物に対する点検免除の特例(12条2項)
  • 特定建築設備に対する点検免除の特例(12条4項)
  • 42条2項にもとづく幅員1.8メートル未満の道を指定(42条6項)
  • 42条3項にもとづく水平距離の指定(42条6項)
  • 道路上に公衆便所や巡査派出所など、公益上必要な建物を道路上にの建築する特例(44条1項2号)
  • 公共用歩廊など、政令で定める建築物の特例許可(44条2項、1項4号)
  • 壁面線の指定(46条)
  • 壁面線を越境する建築物の特例許可(47条)
  • 用途地域の許可外建築物の特例許可(48条15項)
  • 日影規制の特例許可(56条の2・第1項)
  • 予定道路の指定(68条の7・第2項)

色んな法律名や聞きなれない用語などが出てきましたね。それらについては、また改めて解説したいと思います。

▲日影規制や斜線制限について分かりやすく徹底解説しています。合わせてどうぞ!

1-5.神奈川県・横浜市建築審査会の事例(議事録)

建築審査会では実際どんなことが話し合われているのでしょうか。

ここではドリームプランニングの本社がある神奈川県横浜市の事例を確認してみたいと思います。

過去5年度(2018~2022年度)のデータを見ると、建築審査会は年度あたり8~14回ほど行われていました。固定化された定期開催ではなく、必要に応じて開かれるのですね(ちなみに2023年度は9回の予定)。

試しに2024年1月19日に開催された横浜市建築審査会の議事録を見てみましょう。

【横浜市建築審査会 議事録より】
議題1 横浜国際港都建設計画高度地区について(同意)
議題2 建築基準法第43条2項の規定による認定基準と許可基準の改正(了承)
議題3 建築基準法第44条1項に基づく包括同意基準の一部改正(了承)
議題4 建築基準法第48条に基づく許可基準の改正・策定(了承)
議題5 建築審査会包括同意に関する許可処分報告(了承)
議題6 前回会議録の確認(了承)
※議題名は分かりやすく変えてあります。

この「議題5 建築審査会包括同意に関する許可処分報告」というのが、いわゆる包括同意基準についてです。

特定行政庁から建築審査会に対して「包括同意基準を満たしていたから許可しました。ご確認下さい」という事後報告になります。

他の議事録ものぞいてみると勉強になるので、ご興味ある方はのぞいてみてください。

※参考:横浜市建築審査会 横浜市

2.結局「建築審査会の許可」とは何なのか

ここまで話を聞いてこられて、建築審査会は「審査」や「同意」「了承」をしても「許可」は出していないことにお気づきでしょうか。

そうです。「建築審査会の許可」と言われるものは、建築審査会が主体となって何かに許可を出している訳ではありません。

厳密には「建築審査会の同意を得て出す、特定行政庁の許可」ということになります。

大抵の場合は建築基準法第43条2項2号の許可(旧:但し書き許可)と考えてください。

あまりに案件が多いからこそ、手続きを少しでも円滑化するために包括同意基準/個別提案基準が設けられたのです。

2-1.【用語解説】特定行政庁とは何か?(建築基準法第2条)

特定行政庁(とくていぎょうせいちょう)、何か耳慣れませんね。特定行政庁とは、建築主事を設置している自治体の首長のこと。建築主事については後で解説しましょう。

具体的には建築主事が設置されている市町村ではその市町村長、建築主事を設置していない市町村では都道府県知事が特定行政庁となります。

特定行政庁については建築基準法第2条1項35号に定義されているので、条文も見てみましょう。

建築基準法 第2条
三十五 特定行政庁 建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。ただし、第九十七条の二第一項又は第九十七条の三第一項の規定により建築主事を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事とする。

2-1-1.神奈川県の特定行政庁は?

当社ドリームプランニングが本社を構える神奈川県には、33の自治体(3政令市・16市・13町・1村)があります。

どこに建築主事が設置されているのか、確認しておきましょう。

【建築主事が置かれている自治体】12自治体
政令指定都市:横浜市、川崎市、相模原市
一般市:厚木市、小田原市、鎌倉市、茅ヶ崎市、秦野市、平塚市、藤沢市、大和市、横須賀市

こちらの自治体に属する案件については、それぞれの市長が特定行政庁となります。

【建築主事が置かれていない自治体】21自治体
一般市:綾瀬市、伊勢原市、海老名市、座間市、逗子市、三浦市、南足柄市
町村:愛川町、大井町、大磯町、開成町、寒川町、中井町、二宮町、箱根町、葉山町、松田町、真鶴町、山北町、湯河原町、清川村

こちらの自治体に属する案件については、神奈川県知事が特定行政庁になります。

※参考:県所管区域における建築基準法の取扱いについて-神奈川県ホームページ

2-2.【用語解説】建築主事とは何か?(建築基準法第4条)

先ほど登場した建築主事(けんちくしゅじ)については、建築基準法第4条に規定されているので条文を確認しましょう。

建築基準法 第4条【クリックで全文表示】

(建築主事)
第四条 政令で指定する人口二十五万以上の市は、その長の指揮監督の下に、第六条第一項の規定による確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置かなければならない。
2 市町村(前項の市を除く。)は、その長の指揮監督の下に、第六条第一項の規定による確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置くことができる。
3 市町村は、前項の規定により建築主事を置こうとする場合においては、あらかじめ、その設置について、都道府県知事に協議しなければならない。
4 市町村が前項の規定により協議して建築主事を置くときは、当該市町村の長は、建築主事が置かれる日の三十日前までにその旨を公示し、かつ、これを都道府県知事に通知しなければならない。
5 都道府県は、都道府県知事の指揮監督の下に、第一項又は第二項の規定によつて建築主事を置いた市町村(第九十七条の二を除き、以下「建築主事を置く市町村」という。)の区域外における建築物に係る第六条第一項の規定による確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置かなければならない。
6 第一項、第二項及び前項の建築主事は、市町村又は都道府県の職員で第七十七条の五十八第一項の登録を受けた者のうちから、それぞれ市町村の長又は都道府県知事が命ずる。
7 特定行政庁は、その所轄区域を分けて、その区域を所管する建築主事を指定することができる。

長い条文ですね。各項目をかみ砕いて解説しましょう。以下はポイントごとに番号を振っているので、各項とは必ずしも一致しません。

(1)建築主事とは、建築確認(建築基準法第6条1項)に関する事務を行う役職役目です。
(2)人口25万人以上の都市には、必ず建築主事を設置しなければなりません。
(3)人口25万人未満の都市であっても、建築主事を設置することができます。
(4)建築主事を設置する前には、都道府県知事と協議しなければなりません。
(5)建築主事を設置する時は、設置30日前までに公示&知事へのに通知が必要です。
(6)知事は、建築主事がいない自治体のために建築主事を設置しなければなりません。
(7)建築主事は、国土交通大臣に登録された者の中から市町村長か知事が任命します。
(8)特定行政庁は、所轄する区域を建築主事を分担させれることができます。

ちなみに文中「第七十七条の五十八第一項の登録」とあるは、建築基準法第77条の58に規定された建築基準適合判定資格者検定の合格者を指します。

この登録者についての規定は建築基準法第77条の58から第77条の65にかけて規定されていますが、さすがに深掘り過ぎるので今回は割愛しましょう。

3.建築基準法第43条2項の許可とは?

さて、建築審査会が多く取り扱っている建築基準法第43条2項の許可とは何でしょうか。

「建築審査会の許可」と言われたら、だいたいこの許可と思って間違いありません。

具体的に何なのか、確認しておきましょう。

▲43条2項(但し書き)について解説。再建築不可物件でお悩みの方におすすめです。

3-1.接道義務を満たせない再建築不可物件の救済措置

土地に建物を建てるためには、原則として接道義務を満たしていなければなりません。

接道義務を簡単に言うと「建物の敷地が道路と2メートル以上接していること」。逆に言えば「道路と2メートル以上接していない敷地には、建物を建ててはならない」ということです。

この接道義務は建築基準法第43条1項に規定されています。

建築基準法第43条1項
(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
一 自動車のみの交通の用に供する道路
二 地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第十二条の十一の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。)内の道路

接道義務を満たしていない土地には建物が建てられません。建築基準法の制定前から建っていた建物(既存不適格建物)については見逃されているものの、建て替えができない「再建築不可」物件となります。

しかし、その救済措置として建築基準法第43条2項の許可、いわゆる「建築審査会の許可」があるのです。

▲接道義務について、分かりやすく徹底解説したページがこちら。合わせてどうぞ!

3-2.建築基準法第43条2項2号の許可

それでは「建築審査会の許可」を裏づけている建築基準法第43条2項の条文を見てみましょう。

文中「前項の規定」とは接道義務の原則(第43条1項)であり、2項の条件を満たしている物件については許可がとれる可能性があります。

建築基準法第43条2項
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの
二 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの

2項の中に1号と2号があり、1号は特定行政庁による「認定」となります(今回は割愛)。

いわゆる「建築審査会の許可」は2号。こちらの規定をかみ砕いてみましょう。

【意訳】敷地の周囲に広い空き地があり、特定行政庁の認定と建築審査会の同意がそろっているものは、特定行政庁が建築を許可することがあります。

つまり1号認定は「特定行政庁の認定のみで建築・再建築OK」、2号許可は「特定行政庁の認定&建築審査会の許可がダブルで初めて建築・再建築OK」という意味ですね。

3-3.以前は但し書き(ただしがき)許可と呼ばれていた

ちなみに、この建築基準法第43条2項2号の許可は、2018年の建築基準法改正以前は「但し書き(ただしがき。但し書き許可・道路)」などと呼ばれていました

この但し書きとは、条文中の「ただし」以降の部分を指します。

【例】原則として、これこれしなくてはならない。「ただし」、以下の場合は例外とする。等
※現行法の第43条からは「ただし」という文言が削除されています。

不動産会社が「但し書き」と言ったら、大抵この建築基準法第43条2項2号の許可を指していると思っていいでしょう。

もし会話の文脈から「但し書き」に違和感を覚えた場合は、「それって(建築基準法)43条ですよね?」などと軽く確認しておくと、誤解が防げます。

3-4.【注意】建築審査会の許可は、建物に対して下りるもの

いわゆる「建築審査会の許可」、建築基準法第43条2項2号の許可(但し書き許可)は、前面道路ではなく建物に対して下りるものです。

もう1回条文を確認しておきましょう。

建築基準法 第43条2項
二 その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの

つまり建築審査会の許可は「この建築物(建物)なら、この場所に建ててもいいよ」と言っているのです。
決して「この土地になら、どんな建物を建ててもいいよ」と言っている訳ではありません。

なので建物を建て替える都度、許可をとりなおさなければならないことに注意しましょう。

3-5.「建築審査会の許可(43条2項2号許可)」まとめ

【建築審査会の許可とは何なのか・まとめ】

  • 建築審査会の同意を得てから行う、特定行政庁の許可
  • 建築審査会が直接許可を出してくれる訳ではない
  • 接道義務を満たしていない敷地に建物を建てる救済措置
  • 根拠法規は建築基準法第43条2項2号
  • だから「43条2項2号許可」などとも呼ばれる
  • 昔は「但し書き許可」などと呼ばれていた
  • 土地に対してでなく、建物に対して許可される
  • だから建物を建てる&建て替える都度、許可をとり直す必要がある

建築審査会の許可について、より詳しく&具体的に知りたい場合、対象物件を管轄する自治体の建築審査会に問い合せましょう。

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4.建築審査会とはどういう機関なのか

ここまで、いわゆる「建築審査会の許可」を中心に、建築基準法を徹底解説してきました。

ときに建築審査会とは何でしょうか。どういう機関で、何を根拠に設置されているのでしょうか。

知らなくても困りませんが、知っていると役に立つかも。ここでは建築審査会について、分かりやすく解説してまいります。

4-1.建築基準法第78条にもとづいて設置される

建築審査会は、建築基準法第78条にもとづいて設置されているものです。

その役割はおおむね以下のとおりになります。

  • 建築基準法にもとづく特定行政庁の許可に対する同意
  • 審査請求(不服申し立て)に対する裁決
  • 建築基準法の運用に関する重要事項の調査・審議
  • 建築基準法の運用に会する関係機関への建議

基本的には特定行政庁の諮問を受けて答申したり、建築行為や建築許可に関する不服申し立てを受付けたり、関係機関への意見提案を行ったりする機関なのですね。

4-2.【注意】似て非なる建築審議会とは

今回は建築審査会の話をしていますが、よく似た名称で建築審議会という機関が存在します。

建築「審査会」と「審議会」。単なる言い間違い・勘違いの可能性もありますが、建築審査会と建築審議会はまったく違う機関なので注意しましょう。

建築審査会:特定行政庁が設置する機関で、地方自治体に属する。
建築審議会:旧建設省(現国土交通省)が設置。大臣の諮問機関。

とは言え、今さら旧建設省の話を持ち出す方もそう多くないと思います。

なので建築「審議会」と出てきたら、「たぶん言い間違いだろうな」と受け止めて、そっと脳内変換してあげるのが優しさというものです。

ちなみに建築士審査会というものもあるのだとか(建築士法第28~31条)。
建築士試験を職掌とし、国土交通省と都道府県に設置されているそうです。さすがに間違えませんよね。

5.建築審査会について、建築基準法を徹底解説!

続いて、建築審査会の根拠法規となっている建築基準法についても詳しく解説していきましょう。

これまではざっくり意訳でしたが、この場所では個々の条文をていねいにひもといて参ります。

5-1.建築基準法第78条(建築審査会)

建築基準法 第78条
(建築審査会)
第七十八条 この法律に規定する同意及び第九十四条第一項前段の審査請求に対する裁決についての議決を行わせるとともに、特定行政庁の諮問に応じて、この法律の施行に関する重要事項を調査審議させるために、建築主事を置く市町村及び都道府県に、建築審査会を置く。
2 建築審査会は、前項に規定する事務を行う外、この法律の施行に関する事項について、関係行政機関に対し建議することができる。

建築基準法第78条では、建築審査会の設置根拠や役割について規定されています。

  • 建築基準法にもとづく特定行政庁の許可に対する同意
  • 審査請求(不服申し立て)に対する裁決
  • 建築基準法の運用に関する重要事項の調査・審議
  • 建築基準法の運用に会する関係機関への建議

先ほど解説し、これまで何度となく繰り返されてきたとおりですね。

5-2.建築基準法第79条(建築審査会の組織)

建築基準法 第79条
(建築審査会の組織)
第七十九条 建築審査会は、委員五人以上をもつて組織する。
2 委員は、法律、経済、建築、都市計画、公衆衛生又は行政に関しすぐれた経験と知識を有し、公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから、市町村長又は都道府県知事が任命する。

ここでは建築審査会の構成人数と、求められる人物像が規定されています。

【建築審査会の組織】
建築審査会は、5人以上の委員で構成。これだけ見ると上限はないようですね。

ちなみに神奈川県横浜市の建築審査会では、7名の委員がその名を連ねています(会長・職務代理者1名ずつ、委員5名)。また専門調査員が3名いました。

【建築審査会の委員に求められる資質像】
法律・経済・建築・都市計画・公衆衛生・行政のエキスパートであり、公共の福祉について公正な判断ができる人格者が、市町村長or都道府県知事から任命されるようです。

ちなみに横浜市の建築審査会委員は、このようなエキスパートが集まっています(2024年3月現在)。

【会長】弁護士……法律
【職務代理者】建築士会会長……建築
【委員】大学准教授(経済学部)……経済
【委員】大学准教授(環境学部)……都市計画
【委員】住宅供給公社常務理事……都市計画
【委員】元 福祉保健センター長……公衆衛生
【委員】県土整備局建築住宅部長……行政
【専門調査員】3人とも弁護士……法律

もし皆さんが建築審査会の委員になりたいと思われたら、これらの水準が目安となるでしょう。

5-3.建築基準法第80条(委員の欠格事項)

建築基準法 第80条
(委員の欠格条項)
第八十条 次の各号のいずれかに該当する者は、委員となることができない。
一 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

ここでは建築審査会の委員になれない条件(欠格事項)について規定しています。ざっくり見てみましょう。

(1)破産して、復権していない者
(2)禁錮刑以上の判決を受けて刑期を満了するか、執行猶予期間が過ぎていない者

破産するということは、財産の管理ができていないこととほぼイコール。そういう状態の方に、高額な資産を取り扱う建築分野の重要判断はお任せできませんよね。

また禁錮刑以上の刑罰を受けるような悪い方は、十分に更生していただかないと、やはり建築分野の重要判断はお任せしたくありません。

5-4.建築基準法第80条の2(委員の解任)

建築基準法 第80条の2
(委員の解任)
第八十条の二 市町村長又は都道府県知事は、それぞれその任命に係る委員が前条各号のいずれかに該当するに至つた場合においては、その委員を解任しなければならない。
2 市町村長又は都道府県知事は、それぞれその任命に係る委員が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その委員を解任することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められる場合
二 職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められる場合

建築分野の重要判断を担う建築審査会ですから、委員の皆さんにはしっかりしてもらわねば困ります。

一度委員になったら任期いっぱい安泰かと言えばそういうことはなく、悪いことをしたら解任されてしまうのです。

(1)心身を病んでしまって、建築審査会の仕事ができないと判断された場合
(2)職務上の義務違反や、委員として恥ずべき行為があった場合

もし皆さんが建築審査会の委員になったら、そういう状態ことに陥らならないよう注意してくださいね。

5-4-1.【豆知識】第80条「の2」とは?

ところで、この条文は第80条「の2」となっています。これは「新しく追加した条文だけど、最後の条に足すと飛び飛びになってしまうので、第80条と第81条の間にはさみたいな」という時に使われる表現です。

建築基準法を見ると、第77条がエグいことになっていますね(第77条の66まで存在)。

他の法律でも、結構あるので探してみると面白いでしょう(法律を作った人々の苦労がしのばれます)。

5-5.建築基準法第81条(会長)

建築基準法 第81条
(会長)
第八十一条 建築審査会に会長を置く。会長は、委員が互選する。
2 会長は、会務を総理し、建築審査会を代表する。
3 会長に事故があるときは、委員のうちからあらかじめ互選された者が、その職務を代理する。

これは建築審査会の会長に関する規定ですね。委員の中から選び出して、建築審査会を代表します。

もし会長にトラブルがあった時は、委員の中からあらかじめ選んでおいた者が代行。職務代理者が担当するのでしょうか、あまりそういう事例は聞きません。

5-6.建築基準法第82条(委員の除斥)

建築基準法 第82条
(委員の除斥)
第八十二条 委員は、自己又は三親等以内の親族の利害に関係のある事件については、この法律に規定する同意又は第九十四条第一項前段の審査請求に対する裁決に関する議事に加わることができない。

除斥(じょせき)とはあまり耳慣れない言葉かもしれません。要するに
「委員自身のに利害が関係からむする案件について、その委員は決定に加われませんよ」
という規定です。だって、自分や親族の利害がからんできたら、公平な判断なんてできませんよね?

「いや、俺なら私なら無私無欲に判断できる!」

などと言い張ってもダメです。大人しく退出して、メンバーの公正な判断を仰いでください。

5-7.建築基準法第83条(条例への委任)

建築基準法 第83条
(条例への委任)
第八十三条 この章に規定するものを除くほか、建築審査会の組織、議事並びに委員の任期、報酬及び費用弁償その他建築審査会に関して必要な事項は、条例で定める。この場合において、委員の任期については、国土交通省令で定める基準を参酌するものとする。

建築審査会についてより詳しいことを決めたい場合、自治体の条例である程度は決められますよ、という規定です。
例えば神奈川県横浜市には、横浜市建築審査会条例が定められています。

建築審査会については建築基準法よりも建築審査会条例の方がより詳しく具体的なので、実務的なことを調べるときは条例から確認するのがおすすめです。

6.不服申し立ては建築審査会へ

さて、建築審査会について基本的なことはおさえました。

続いては建築許可などについて何か問題が発生した時、不服申し立て(審査請求)を受けた時の処理について建築基準法の条文を確認しましょう。

6-1.建築基準法第94条(不服申し立て)

建築基準法 第94条【クリックで全文表示】

(不服申立て)
第九十四条 建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員、都道府県知事、指定確認検査機関又は指定構造計算適合性判定機関の処分又はその不作為についての審査請求は、行政不服審査法第四条第一号に規定する処分庁又は不作為庁が、特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は都道府県知事である場合にあつては当該市町村又は都道府県の建築審査会に、指定確認検査機関である場合にあつては当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について第六条第一項(第八十七条第一項、第八十七条の四又は第八十八条第一項若しくは第二項において準用する場合を含む。)の規定による確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に、指定構造計算適合性判定機関である場合にあつては第十八条の二第一項の規定により当該指定構造計算適合性判定機関にその構造計算適合性判定を行わせた都道府県知事が統括する都道府県の建築審査会に対してするものとする。この場合において、不作為についての審査請求は、建築審査会に代えて、当該不作為庁が、特定行政庁、建築主事、建築監視員又は都道府県知事である場合にあつては当該市町村の長又は都道府県知事に、指定確認検査機関である場合にあつては当該指定確認検査機関に、指定構造計算適合性判定機関である場合にあつては当該指定構造計算適合性判定機関に対してすることもできる。
2 建築審査会は、前項前段の規定による審査請求がされた場合においては、当該審査請求がされた日(行政不服審査法第二十三条の規定により不備を補正すべきことを命じた場合にあつては、当該不備が補正された日)から一月以内に、裁決をしなければならない。
3 建築審査会は、前項の裁決を行う場合においては、行政不服審査法第二十四条の規定により当該審査請求を却下する場合を除き、あらかじめ、審査請求人、特定行政庁、建築主事、建築監視員、都道府県知事、指定確認検査機関、指定構造計算適合性判定機関その他の関係人又はこれらの者の代理人の出頭を求めて、公開による口頭審査を行わなければならない。
4 第一項前段の規定による審査請求については、行政不服審査法第三十一条の規定は適用せず、前項の口頭審査については、同法第九条第三項の規定により読み替えられた同法第三十一条第二項から第五項までの規定を準用する。

条文は読まなくていいです。読みたければ止めはしませんが、寝落ちに注意してください。

まずは落ち着いて、各項を読みほぐしていきましょう。

6-1-1.建築基準法第94条1項の要約

建築基準法の取り扱いについて問題があった場合は、建築審査会に対して不服申し立て(審査請求)をしてください。

問題を起こした当事者が特定行政庁などであった場合、建築審査会の代わりにその特定行政庁などに不服申し立てをすることもできます。

……分かりやすさ優先でめちゃくちゃ端折りましたが、要はそういうことです。実際に問題が起こった際は、まず建築審査会に問い合わせましょう。

6-1-2.建築基準法第94条2項の要約

審査請求が行われた場合、建築審査会は請求された日から1ヶ月以内に決着をつけなければなりません。

ただし、請求に不備(行政不服審査法第23条による)があった場合はそれを直させ、不備が直った日から1ヶ月以内まで延長できます。

6-1-3.建築基準法第94条3項の要約

建築審査会が審査請求を受けた時は、審査の前に関係者を呼び出して口頭審査を行わなければなりません。

口頭審査とは、要するに聴き取り調査ですね。この口頭審査は公開で行われ、関係者には以下のような人々が挙げられます。

  • 審査請求人(要するに今回不満を持っている当人)
  • 特定行政庁
  • 建築主事
  • 建築監視員
  • 都道府県知事
  • 指定確認検査機関の担当者
  • 指定構造計算適合性判定機関の担当者

これら関係者については、代理人による出頭も可能です。ちなみに、行政不服審査法第24条の規定にもとづいて審査請求を却下する場合は、口頭審査の必要はありません。

6-1-4.建築基準法第94条4項の要約

建築基準法 第94条4項
4 第一項前段の規定による審査請求については、行政不服審査法第三十一条の規定は適用せず、前項の口頭審査については、同法第九条第三項の規定により読み替えられた同法第三十一条第二項から第五項までの規定を準用する。

ここだけあえて条文を書き出しました。文中「第一項前段」というのは、この場合建築基準法第94条1項「建築基準法令の規定による~」から「~都道府県の建築審査会に対してするものとする。」までの部分です。

その後にあれやこれやと注釈や「ただし書き」が追加されます。ちょっとした法律知識として覚えておくといいでしょう。

第4項で言いたいのは「建築基準法第94条1項の審査請求について、行政不服審査法第31条の規定は適用しませんよ」ということです。

さらに「行政不服審査法第9条3項の規定にならい、同法第31条2~5項の規定を流用(準用)して審査を行いましょう」と言っています。

法律をあっちこっちハシゴして、条文も行ったり来たりと大変ですね。

6-1-5.【参考】行政不服審査法 第31条2~5項

行政不服審査法 第31条2~5項
2 前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。
3 口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
4 口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。
5 口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。

では、参考として行政不服審査法の第31条2~5項についても確認しておきましょう。ちょっとこれまでと違う単語が登場しますが、適宜脳内変換していくのが、スムーズに読むコツです。

【2項の意訳】建築審査会が事前の口頭審査を行う時は、あらかじめ期日と場所を指定して、すべての関係者を一度に招集します。

【3項の意訳】口頭審査に出席する関係者は、建築審査会の許可を得て補佐人をつけることも可能です。

【4項の意訳】口頭審査中、関係者が案件と無関係なことを言い出した場合、委員はこれを制止する権限があります。

【5項の意訳】審査請求を行った申立人(当事者)は、建築審査会の許可を得て不満のある相手に質問をすることも可能です。

6-2.建築基準法第95条(再審査請求)

建築基準法 第95条
第九十五条 建築審査会の裁決に不服がある者は、国土交通大臣に対して再審査請求をすることができる。

建築審査会の決定に不満がある場合は、国土交通大臣に対して審査のやり直しを求めることができます。

これは行政不服審査法第6条に規定されているので、条文を見てみましょう。

行政不服審査法第6条
(再審査請求)
第六条 行政庁の処分につき法律に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合には、当該処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、再審査請求をすることができる。
2 再審査請求は、原裁決(再審査請求をすることができる処分についての審査請求の裁決をいう。以下同じ。)又は当該処分(以下「原裁決等」という。)を対象として、前項の法律に定める行政庁に対してするものとする。

なお再審査請求は何でもできる訳ではなく、今回の建築基準法第95条のように「再審査請求ができる」旨の定めがある場合に限られるので注意しましょう。

7.建築審査会の許可が必要な物件でお悩みなら、URUHOMEへご相談を

以上、建築審査会の許可をはじめ、建築審査会にまつわる事柄について徹底解説してまいりました。

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