「不動産を売却したいけど、所有者と連絡が取れない」
「相続が発生して親戚と不動産を共有しているけど、誰も連絡先を知らない」
こういったお悩みを抱えている方も多くいらっしゃると思います。
所有者が分からない不動産を売却するには幾つかの方法があり、令和5年4月からは新しい制度が誕生しました。
ただ、今回はまず、今まで利用されていた『不在者財産管理人制度』と『失踪宣告』の2つの制度についてプロが解説いたします。
著者情報
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、「共有者の中に所在不明の方がいる不動産」や「すでに解散した法人が保有している不動産」など、一般の不動産会社では取り扱いが難しい不動産を専門的に買い取ってまいりました。
大変ありがたい事に日本全国から不動産のご相談を頂いており、無料査定を行い、5000万円位までの物件であれば最短2日でお買取りさせていただくことも可能です。
ご売却にお困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
- 行方不明や失踪した人が居ても不動産は売れる?
- 失踪した人の不動産売却方法①-失踪宣告を受ける
- 失踪した人の不動産売却方法②-不在者財産管理人選任
- 行方不明や失踪した人が生きていた場合
- 行方不明や失踪した人が居る不動産売却はURUHOME
1.行方不明や失踪した人が居ても不動産は売れる?
結論から申し上げますと、行方不明者や失踪者の不動産は売却できます。
行方不明になってしまった方が居る場合の不動産の売却方法として、「不在者財産管理人制度」と「失踪宣告」があります。
令和5年4月以降は他の方法でも不動産を売却できるようになりましたが、今回は上記の方法での不動産を売却について解説してまいります。
まずは、不動産の所有者(又は共有者)が行方不明になってしまった場合の売却方法「失踪宣告」について見ていきましょう。
2.失踪した人の不動産売却方法①-失踪宣告を受ける
2-1.失踪って何?
そもそも失踪とはどのようなことを指すのでしょうか。
失踪とは姿をくらまして行方が分からなくなること、人の所在や生死が知れなくなることで、家出などで数日行方をくらますなどの場合は勿論失踪には当てはまりません。
行方が分からなくなってから一定期間が経過すると、失踪とみなされることになります。
また、失踪には民法31条で定められている「普通失踪」と「特別失踪」があります。
➤「普通失踪」-失踪から7年が経過した時に死亡したものとみなされ、相続が開始されます。
➤「特別失踪」-は戦争や船の沈没、震災などの危難に遭い、行方不明となった後、1年間生死不明が継続した場合、危難の去った日を死亡日として相続が開始されます。
2-2.失踪宣告の受け方
失踪宣告をすることによって相続をすることができ、不動産の売却なども出来るようになります。
失踪宣告には具体的にどのような手続きが必要となるのか見ていきましょう。
2-2-1.申立人となる人
申立人は配偶者や相続人にあたる法律上利害関係のある人が該当します。
その他の親族や失踪者の友人は含まれません。
失踪宣告されることによって、財産は申立人に相続されることになります。
2-2-2.申立費用
続いては費用についてです。
失踪宣告の申立費用には以下の3つが必要となります。
➤ ① 申立手数料 800円ー申立手数料は現金ではなく収入印紙で納めます。
失踪宣告の申立書に収入印紙800円分を貼付して提出します。
➤ ② 連絡用の郵便切手ー切手料金は申立される家庭裁判所へ確認していただくことになります。
➤ ③ 官報公告料 4816円
(失踪に関する届出の催告3053円、及び失踪宣告1763円の合計額)
裁判所の指示があってから納めてください。
2-2-3.申立の期間
「普通失踪」の場合、行方不明になってから7年以上経過すると申立が出来るようになります。
危難に遭遇して生死が不明となった「特別失踪」の場合には、危難が去って1年間生死が不明の場合、7年間待たなくても、失踪宣告を申し立てることができます。(民法30条2項)
2-2-4.失踪宣告に必要な書類
失踪宣告には、下記の様な書類が必要になります。
審理の為に必要な場合は追加書類の提出をお願いされることがあります。
- 申立書
- 標準的な申立添付書類
- 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 不在者の戸籍附票
- 失踪を証する資料
- 申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))
2-2-5.失踪を証する資料とは?
必要書類を見みると「失踪を証する資料」とありますが、具体的にどのようなものになるのでしょう?
失踪を証する資料には「行方不明者届受理証明書」「職権消除された戸籍附票」「返送された行方不明者宛ての手紙」が挙げられます。
「行方不明者受理証明書」とは、警察署の出す「捜索願(平成22年4月1日より『行方不明届』に変更されました)」の受理書の事です。
「行方不明者届受理証明書」は無くても失踪宣告が認められることはありますが、一般的には警察署に行方不明届を提出し、受理書を発行してもらいます。
2-3.失踪宣告が確定したら役所に届け出
失踪宣告を申立て、審判が確定した後10日以内に申立人は市区町村役場に「失踪の届出」をしなければなりません。
申立人には、戸籍法による届出義務がありますので、市区町村役場に「失踪の届出」をする必要があるのです。
届出には、「審判書謄本」と「確定証明書」が必要になります。
「確定証明書」は審判をした家庭裁判所に申請して交付されます。
また、届出は不在者の本籍地又は申立人の住所地の役場にしなければならず、戸籍謄本などの提出を求められることがあります。
詳しくは届出する役場に問い合わせする必要があります。
2-4.失踪宣告手続き終了後登記を行う
失踪宣告後、不動産は相続人に相続されますので、登記の申請を必ず行う必要があります。
令和6年4月1日から不動産登記法の改正で、相続登記が義務化されることになっております。
相続登記を怠ると10万円以下の過料に課せられる可能性がありますので、注意しましょう。
相続登記の申請には失踪宣告が記載された戸籍謄本が添付書類となりますが、申請の仕方は基本的には通常の相続登記と方法は変わりません。
3.失踪した人の不動産売却方法②-不在者財産管理人選任
失踪者の不動産を売却するもう一つの方法に不在者財産管理人の選任があります。
失踪宣告との違いは、失踪宣告を申し立てるのには「7年以上行方不明」という条件がありますが、「不在者財産管理人」については期間の制限はありません。
また、不在者財産管理人を選定し、権限外行為の許可を取得すれば失踪者の不動産が売却できるようになります。
不在者財産管理人の決め方については、不在者の配偶者や親族などの利害関係者の申立てによって家庭裁判所にて選任されます。
候補者を推薦することは可能ですが、家庭裁判所が当該候補者を選任するとは限りません。
ここでは不在者財産管理人選任について詳しく見ていきましょう。
3-1.不在者財産管理人の選任条件
不在者財産管理人には資格は必要ありませんが、不在者の財産を管理するために選ばれるものであり、財産管理を適切に行えることが必須条件になります。
基本的には行方不明者と利害関係が無い事が条件とされ、適格性あるかどうか家庭裁判所が判断します。
不在者財産管理人の選任は家庭裁判所に委ねられており、場合によって弁護士、司法書士などの専門職が選ばれることがあります。
3-1-1.利害関係のない第三者が選任される
利害関係の有無を考慮して選定されていると前述しましたが、一般的に利害関係のない第三者が選任されます。
家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申し立てをする際に、候補者を記入する欄がありますが、親族内から候補者を立てる場合、相続人でない親族であることが前提となります。
3-1-2.候補がいない時、家庭裁判所が選任
候補者を選んで不在者財産管理人選任の申し立てをしたとしても、財産の適正管理ができないような人である場合や親族に適任の人物がいない場合、家庭裁判所は適正に管理できそうな第三者、つまり弁護士や司法書士などの専門家を不在者財産管理人に選任することがあります。
3-2.不在者財産管理人の申立て方法
ここでは不在者財産管理人の申立て方法を具体的に説明していきます。
申立が出来るのは相続人などの利害関係人、不在者の親族、債権者および検察官です。
申立先は不在者の住所、または居所を管轄する家庭裁判所となります。
必要費用は収入印紙800円と連絡用の郵便切手のみで申請できます。
また、必要書類は以下の通りです。
- 申立書
- 不在者の戸籍謄本
- 不在者の戸籍附票
- 不在者財産管理人の候補者の住民票もしくは戸籍附票
- 不在者の不在を証明する資料
- 不在者の財産に関する資料
- 申立人の戸籍謄本や賃貸契約書などの申立人との関係性を証明するもの
上記の書類を用意した上で、申立書に記入し、裁判所に提出します。
3-2-1.不在者の証明等について
不在者財産管理人選任の申立ての前に、所有者が不在者であるかについて、住民票や戸籍の附票で住所を確認するのとともに、現地調査や親族へ問い合わせをする必要があります。
「不在の事実を証する資料」は不在者宛ての郵便物で「あて所に尋ね当たらず」などの理由で返送されたもの等を用います。
3-2-2.不在者の財産に関する資料
不在者の財産に関する資料については、申立人が把握している財産目録を作成、謄本や預金通帳など財産が分かる資料を添付します。
申立人側が把握している不在者の全財産について目録を作成するのが原則ですが、状況によっては、家庭裁判所の判断で、取得等の対象となっている土地のみの目録でもよいこととされる場合があります。
3-3.不在者財産管理人の権限は3つ
では不在者財産管理人はどのような権限を持っているのでしょうか?
不在者財産管理人は法定代理人であることから、民法103条で定める権限の定めがない代理人の権限として与えられている「保存行為」「利用行為」「改良行為」の3つの行為のみ可能です。
➤「保存行為」-物の滅失・損傷を防止し、その現状を維持するための行為であり、家屋の修繕、清掃作業、固定資産税の支払い、不動産登記の変更や期限の到来した債務の弁済があります。
➤「利用行為」-財産の収益を図る行為で、不動産の賃貸借契約の締結や有利子での金銭貸付けなどが当てはまります。
➤「改良行為」-財産の価値を増加する行為で、建物にエアコンを付ける契約などが当てはまります。
(権限の定めのない代理人の権限)
民法第103条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
民法103条(権限の定めのない代理人の権限) e-Govより
1.保存行為
2.代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
3-4.不動産売却には「権限外行為許可」が必要
不在者財産管理人を選任する理由として多いのは不動産売却のためですが、不在者財産管理人にはこの「処分行為」の権限がありません。
そのために必要となるのが「権限外行為許可」です。
「権限外行為許可」とは不在者財産管理人が不在者に代わって遺産分割協議をしたり、不在者の財産を処分するなど、民法第103条に定められた権限を越える行為をすることを指します。
この不在者財産管理人の権限外行為許可の申立ては家庭裁判所に行なうのですが、審判に当たっては、売却金額、売却の必要性、買受人の資力や代金の支払方法等が審査されます。
権限外行為許可を得ることによって、はじめて売却が可能となるのです。
4.行方不明や失踪した人が生きていた場合
行方不明になった人や失踪した人が生きて戻ってくるということも起こりえます。
その場合、失踪宣告や不在者財産管理人はどのようになるのでしょうか。
4-1.失踪宣告は取り消され財産返還
失踪宣告は取り消されると、失踪者の財産は返還されます。
失踪宣告により死亡とみなされた人の生存が確認されても、自動的に失踪宣告が取消しになるわけではなく、家庭裁判所に対して取消しの申立てをする必要があります。
尚、申立てが出来るのは不在者本人と利害関係人のみです。
財産の返還の義務については民法32条によって下記のように定められています。
失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。
民法 第32条(失踪の宣告の取消し)e-Govより
ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
失踪宣告が取り消されると、宣告が初めから無かったものとなるので、契約関係も無かったこととなりますが、取消前に善意で行った法律行為には影響はないとされています。
また、相続した財産を返還しなくてはいけないのは、その利益が残っている限度(現存利益)のみということになりますが、相続した財産を生活費に充てていた場合などは、全額を返還する必要があります。
4-2.不在者が見つかった場合
不在者が見つかった際には、不在者財産管理人はどのようになるのでしょうか?
そうなった場合、不在者財産管理人の業務は終了し、見つかった不在者に管理財産を引渡して終了となります。
家庭裁判所は、不在者が財産を管理することができるようになったとき、管理すべき財産がなくなったときその他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、不在者、管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、民法第二十五条第一項の規定による管理人の選任その他の不在者の財産の管理に関する処分の取消しの審判をしなければならない。
家事事件手続法 第147条(処分の取消し)e-Govより
5.行方不明や失踪した人が居る不動産売却はURUHOME
行方不明者や失踪者の保有する物件を売却したい、そんな時はURUHOMEを運営しているドリームプランニングにお任せ下さい。
ドリームプランニングは行方不明者や失踪者などがいる、込み入った法律知識が必要な不動産の売買に長けております。
築年数が古くても、傾斜地や再建築不可、市街化調整区域などで売却が難しくても、全く問題ありません。
私たちはこうした他社では取り扱いが難しい不動産を、現況のままお買取りさせていただいており、行方不明者など連絡が全く取れない方と共有している不動産でも、共有持ち分の一部だけでもお買取りさせていただいております。
お困りの不動産がございましたら、ぜひ一度ご相談くださいませ。