「定期借地権を相続した」
「定期借地で貸している底地を相続した」
このような理由で、相続税の評価額がどうなっているか気になる所だと思います。
そこで今回、定期借地の相続税評価額と相続税について
底地専門業者であるドリームプランニングの私が解説いたします。
著者情報
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年の創業より定期借地権負担付きの底地など売却が難しい不動産の買取を行ってまいりました。
大変ありがたい事に日本全国から不動産のご相談を頂いており、無料査定を行い、5000万円位までの物件であれば最短2日でお買取りさせていただくことも可能です。
ご売却にお困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
- 定期借地権って何?
- 定期借地権の相続税評価額
- 定期借地権が設定されている底地の相続税評価額
- 定期借地やその底地の相続税は幾ら?
- 定期借地やその底地を相続するメリット・デメリット
- 定期借地権やその底地の売却はURUHOME
1.定期借地権って何?
定期借地権は、1992年4月に施行された借地借家法で創設された新しい制度です。
それまでの「旧借地法・借家法」では借地人が強く保護されていることから、一旦借地を貸すと返還してもらうと難しいという問題がありました。
定期借地権では、当初定めた契約期間で借地は終了し、その後更新がないため、地主さんとしては安心して土地を貸すことが出来るようになりました。
1-1.定期借地権には3つのタイプがある
定期借地権には「一般定期借地権」「事業用定期借地権」「建物譲渡承諾付き定期借地権」の3種類があります。
借地権の種類 | 契約方法 | 用途等 | 期間、特徴 |
一般定期借地権 | 公正証書等の書面 | 用途制限なし | 50年以上、定期借地権付マンションなどで利用される |
事業用定期借地権 | 必ず公正証書 | 事業用のみ | 10年以上50年未満、店舗・事務所・倉庫など事業用に限られる |
建物譲渡特約付定期借地権 | 規定なし | 用途制限なし | 30年以上、あまり利用されない契約形態 |
1-2.普通借地権との違い
普通借地権との違いは、定期借地権には更新が無いことや、地代の相場が高いことなどが挙げられます。
また、普通借地権や旧法借地の住宅地での地代が更地価格の2~3%、商業地での地代が更地価格の4~5%であることに対し、一般定期借地権は、地代が更地価格の4~5%位が相場、事業用定期借地は更地価格の6%程度が相場になります。
旧法借地・普通借地権 | 定期借地権 | |
住宅地・一般定期借地 | 更地価格の2~3% | 更地価格の4~5% |
商業地・事業用定期借地 | 更地価格の4~5% | 更地価格の6% |
期間が決まっていることから、借地としての価値も普通借地権や旧法借地より安くなります。
これら普通借地より資産価値が低いことを前提に、定期借地の相続税評価額について見ていきましょう。
2.定期借地権の相続税評価額
定期借地の相続税評価は、原則的には「課税する時の借地人に帰属する経済的利益」と「定期借地の存続期間」を元に評価します。
しかし、基本的には”定期借地権が設定された時期”と”課税時期”で借地人に帰属する経済利益が変わらない場合、次に紹介する簡単な方法により評価額を算出出来ます。
2-1.定期借地権評価額の簡単な計算方法
簡単な計算方法といっても中々難しいのですが、以下のような計算式なります。
定期借地権の評価額 =
定期借地権の目的となっている宅地の自用地評価額×(① ÷ ②)×(③ ÷ ④)
①定期借地権等の設定時に受ける経済的利益の総額
②定期借地権等の設定時の宅地の通常の取引価額
③課税時期における定期借地権等の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
④定期借地権等の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
自用地評価額については、「前面道路の路線価×面積」で計算可能です。
①の「定期借地権者に帰属する経済的利益の総額」は以下A~Cの合計額となります。
A.定期借地権等の設定の時に、借地人から地主に対し、権利金など借地契約の終了時に返還しない金銭等
B.定期借地権等の設定の時に、借地人から受け取った保証金など返還が必要な金銭を運用した場合の運用益
C.定期借地権等の設定の時に、差額地代を運用したと仮定した場合の運用益
②「定期借地権等の設定時の宅地の通常の取引価額」は、下記計算式からおおよその価格が分かります。
不動産の実勢価格=路線価による評価額÷0.8×1.1
また、③、④については複利年金現価率の説明が少し長くなるため、こちらをご参照ください。
2-2.一般定期借地権の評価額
一般定期借地権については、課税上弊害が無い限り、以下の計算方法により計算します。
定期借地権の評価額 =
定期借地権の目的となっている宅地の自用地評価額×(1―借地権設定時の底地割合)×(③ ÷ ④)
③課税時期における定期借地権等の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
④定期借地権等の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
路線価図 | C地域 | D地域 | E地域 | F地域 | G地域 | |
借地権 割合 | 評価倍率表(%) | 70 | 60 | 50 | 40 | 30 |
*底地割合(%) | 55 | 60 | 65 | 70 | 75 |
2-3.複利年金現価率って何?
複利年金現価率とは、将来の一定期間中、毎年支払われる一定金額の現在価値を複利で求めたものです。
定期借地は一定期間すると地主に返還されるため、土地自体の現在の価値を計算することによって、借地や底地の評価額を計算するのです。
相続税にかかる複利年金現価率の計算には、基準年利率にもとづいたものを知る必要があります。
基準年利率とは、形や市場性がない財産の価値を推し量る際に用いられるものです。
○ 令和5年分 基準年利率(単位:%)
区分 | 年数又は期間 | 令和5年1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
短期 | 1年~2年 | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.01 |
中期 | 3年~6年 | 0.25 | 0.10 | 0.10 | 0.10 | 0.05 | 0.05 |
長期 | 7年以上 | 1.00 | 1.00 | 0.75 | 0.75 | 0.50 | 0.75 |
基準年利率は国税庁の法令解釈通達にて公表されおり、相続日時点の複利年金現価率を同じページ内の複利表にてpdfで掲載されています。借用年数に応じた複利年金現価率はこのpdfで知ることが可能です。
2-3-1.課税時期における定期借地権等の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
2-1の③にある「課税時期における定期借地権等の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率」については、“相続した時点で定期借地の残存期間が何年か?”が分かれば、法令解釈通達のページから複利年金現価率は分かります。
例えば定期借地権の期間が40年、15年経過した令和5年6月に相続が発生したとすると以下のような現価率になります。
●区分:長期 ●年数または期間:7年以上 ●基準年利率:0.75
●残存期間25年の複利年金現価率:22.719
2-3-2.定期借地権等の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
2-1の④「定期借地権等の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率」は、元々の定期借地権の設定年数40年であり、40年に対応する基準年利表を当てはめると以下のような現価率になります。
●区分:長期 ●年数または期間:7年以上 ●基準年利率:0.75
●借地権設定期間40年の複利年金現価率:34.447
2-4. 定期借地権の簡単な相続額の計算例
上記の事から、定期借地権の期間40年で設定した土地を、15年目の令和5年6月に相続、自用地評価額などを下記のように仮定した場合の計算方法は以下の通りです。
●自用地評価額:5000万円
●借地権者に帰属する経済的利益の総額:1000万円
●通常の取引価額:6875万円(=自用地評価額÷0.8×1.1)
●定期借地設定期間:40年
●定期借地権残存期間:25年
定期借地権の相続税評価額=5000万円×1000万円/6875万円×22.719/34.447=479万6618円
3.定期借地権が設定されている底地の相続税評価額
定期借地権の底地の相続税評価は、原則として宅地の自用地評価額から、上記の2項でご紹介した定期借地権の価額を控除した金額により評価します。
定期借地権が設定されている底地の評価額 = 宅地の自用地評価額 ― 定期借地権の評価額
3-1.定期借地の評価が基準より低い場合の底地の評価
2で計算した定期借地権の評価額が、下記の計算式で計算した額(自用地評価額 × 定期借地権の残存期間に応じた下記WからZのいずれかの割合)を下回る場合、自用地評価額から次に掲げる割合を乗じた金額を控除した金額で評価します。
《2の定期借地権の評価額が低い場合の底地評価》
定期借地権の底地の評価額(定期借地の評価が低い場合) =
自用地評価額 - 自用地評価額 × 定期借地権の残存期間に応じた次のW.からZ.のいずれかの割合
W.残存期間が 5 年以下のものは、5%
X.残存期間が 5 年超 10 年以下のものは、10%
Y.残存期間が 10 年超 15 年以下のものは、15%
Z.残存期間が 15 年超のものは、20%
ここで、2-4の計算例を元に、底地の評価額を比較すると、以下のようになります。
定期借地権の相続税評価額479万6618円<自用地評価額5000万円×20%=1000万円
定期借地権の底地評価額=自用地評価額5000万円-自用地評価額5000万円×20%
=4000万円
3-2.一般定期借地権が設定されている底地の相続税評価
一般定期借地権では借地期間が50年以上となっているため、事業用定期借地や建物譲渡特約付き借地権が設定されている底地より評価額が低くなるようになっております。
計算方法としては、2-2の方式により一般定期借地権の評価額を計算し、自用地評価額から一般定期借地権の評価額を引く方法により底地の評価額を計算することが多くなります。
定期借地権が設定されている底地の評価額 = 宅地の自用地評価額 ― 一般定期借地権の評価額
一般定期借地権の評価額 =定期借地権の目的となっている宅地の自用地評価額×(1―借地権設定時の底地割合)×(③ ÷ ④)
③課税時期における定期借地権等の残存期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
④定期借地権等の設定期間年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率
ただし、一般定期借地権の借地権者と地主の関係が親族間や同族法人等の場合など課税上弊害がある場合には、2-1の方法により評価します。
3-3.一般定期借地権が設定されている底地の相続税評価の計算例
一般定期借地権の評価額の計算例について考えてみましょう。
まずは自用地評価額を5000万円、借地権設定時の底地割合を55%、一般定期借地権の存続期間を60年、借地権設定から15年経過し、令和5年6月に相続が発生したとすすると
区分:長期 年数または期間:7年以上 基準年利率 0.75
残存期間25年の複利年金現価率 38.073
借地権設定期間60年の複利年金現価率 48.173
一般定期借地権の評価額については、 【定期借地権の目的となっている宅地の自用地評価額×(1―借地権設定時の底地割合)×(③ ÷ ④)】という計算式だったため、これに当てはめると以下の様な計算になります。
5000万円×(1-55%)×38.073/48.173=1778万2627円
つまり底地の評価は以下の様な計算になります。
一般定期借地権の底地の評価額=5000万円-1778万2627円
=3221万7373円
4.定期借地やその底地の相続税は幾ら?
相続が発生する場合、定期借地や底地やそれ以外の財産の合計を評価し、相続税計算をします。
相続する財産の合計額を計算し、基礎控除額(3000万円+〔600万円×法定相続人の数〕)を差し引いて、課税遺産総額を計算します。
課税遺産総額=相続税の対象となる財産―基礎控除(3000万円+〔600万円×法定相続人の数〕)
例えば父が亡くなり、長男、長女が相続人のケースを仮定すると、相続税評価が3200万円の定期借地権が設定されている底地と、1億円の現金が相続対象だった場合、課税相続の総額は1億3200万円
課税遺産総額=相続対象財産(1億3200万円-〈3000+600万円×2人〉)
=9000万円
一度法定相続分1/2ずつを相続したと仮定して、長男、長女の相続税額を計算します。
それぞれの相続税を計算するには、下記のグラフを参照します。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | - |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
法定相続分を相続したと仮定した場合のそれぞれの相続税額
〇長女 法定相続分1/2 4500万円
相続税=700万円(4500万円×20%-200万円)
〇長男 法定相続分1/2 4500万円
相続税=700万円(4500万円×20%-200万円)
本来はここから相続割合から相続税額を按分して計算し、控除などを考慮します。
5.定期借地やその底地を相続するメリット・デメリット
定期借地やその底地を相続したときの相続税評価や、相続税額については分かってきましたが、相続するべきか、売却した方が良いか悩むところです。
そこで、定期借地やその底地を相続することによるメリット・デメリットを考えてまいります。
5-1.定期借地やその底地を相続するメリット
定期借地やその底地を相続すると、以下のようなメリットがあります。
メリットとデメリットをよく比較したうえで、相続後の方向性を考えてみましょう。
➤ 定期借地権を相続するメリット
- 普通借地権や旧法借地と違い相続税評価額が安い
- 契約内容が明確で地主とのトラブルが少ない
➤ 定期借地権の底地を相続するメリット
- 存続期間が終わったら自由に利用できる
- 普通借地権や旧法借地より高い地代を受領できる
5-2.定期借地やその底地を相続するデメリット
定期借地でも底地でも、相続するメリットよりデメリットの方が大きければ、売却なども考える必要があります。
実際に相続するときには、保有するメリット・デメリットを良く理解しておくようにしましょう。
➤ 定期借地権を相続するデメリット
- 返還の際に解体費用の負担がある
- 利用できる期限が限られている
- 売却が極めて難しい
➤ 定期借地権の底地を相続するデメリット
- 相続の際の評価額が普通借地権や旧法借地より高い
- 実際の売却可能価格より評価額が高い
- 定期借地であっても一定期間利用が出来ない
- 地主となっても利用できないため売却が難しい
6.定期借地権やその底地の売却はURUHOME
定期借地権やその底地の相続の際の評価額計算は非常に難しいことが分かりました。
また、相続するにも、様々なメリット・デメリットがあることをご説明してまいりました。
定期借地権は旧法借地の問題点を解消するために作られましたが、管理や税務の事を考えると、売却した方が良いのではとお考えになる方も多くいらっしゃると思います。
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