借地借家法とはナニ?【旧法借地との違い、成立の歴史など】わかりやすく解説します
借地権の土地を所有しているけど、旧法借地権、新法借地権って何?
これから購入する不動産は全て新法借地権が適応されるの?
旧法、新法でどのような違いがあるの?
旧借地法と借地借家法の違いについて詳しく解説いたします。
借地借家法とは?
- 1-1.借地借家法の歴史、旧借地法は1921年制定、借地人保護色の強い法律
- 1-2.旧借地法の特徴
- 1-3.借地借家法の成立、特徴
- 1-4.借地借家法の適用範囲等
1-1.借地借家法の歴史―旧借地法は1921年制定、借地人保護色の強い法律、存続期間は木造20年、堅固建物30年
借地借家法の説明の前に成立の歴史からご説明していきます。借地借家法の前に建物の保護に関する法律、借地法、借家法の3つの法律があり、不動産における賃貸借契約の決まりをまとめたものとして、3つの法律が統合して作られたのが借地借家法です。
旧借家法は1921年制定の法律で、借地人、賃借人保護色の強い法律でした。
旧借地法に限って説明しますと、契約の存続期間を木造の場合は20年以上、マンションなどの堅固建物期間は30年以上と定められました。しかしこの旧法が定める建物の基準が複雑で、マンションのような堅固な建物といえば鉄筋コンクリートをはじめブロックやレンガ、石や土、コンクリート造りの建物が該当し、それ以外は堅固でないものと分類されていました。
契約更新の際は地主が承諾しなくとも法定更新といって、旧借地法により借地契約はそのまま存続されていきます。更に、旧法によって借地契約を結んだ土地については、旧借地法がそのままずっと適用される事もあり、旧借地法は借地人の保護色の強い法律と言われる所以です。
1-2. 旧法借地の特徴
20年よりも短い期間の契約の場合は「期間の定めがないもの」とされ、その場合は木造は一律で30年、堅固な建物は60年と定められていました。
存続期間の決まっているものに関しては、その間に建物が老朽化して壊れてしまっても期間中は借地権がありますが、「期間の定めのないもの」に関しては借地権を第三者に主張することができませんでした。また、地主がその土地を必要とすることがある場合、正当な事由があれば更新を拒否しても良いとされていましたが、どの理由なら良いのかということでトラブルもありました。
旧借地法の特徴としては、堅固建物、非堅固建物という分かりにくい区別、土地返還を受けにくい普通借地権のみである事など、ルールがあいまいである事や借地人有利である事が挙げられます。
1-3.借地借家法の成立、特徴
旧法借地法で複雑だった部分や借主の権利などを改善し、1992年借地借家法が制定されました。
これによって、堅固な建物かどうかに関係なく一律で契約期間を30年とし、それ以上なら自由に決められます。契約更新の場合は1回目なら20年、2回目以降は10年と定められました。
また「期間の定めのないもの」に関しては途中で建物が滅びれば土地の権利が主張できませんでしたが、新法ではその土地に決められた事柄を書いた掲示板をわかりやすく設置したうえで、建物滅亡後2年以内に新しく建てて登記をすれば第三者にも権利の主張ができるように改正されました。
1-4.借地借家法の適用範囲
借地借家法には適用範囲があり、”建物所有を目的とする賃貸借契約”『借地の契約』と””建物賃貸借を目的と賃貸借契約””『借家の契約』が適用範囲になります。
また、全ての建物に適用されないのが特徴で
- 1.建物の所有を目的としないもの
- 2.一時使用目的のもの
- 3.無償で貸しているもの
以上に関しては借地借家法は適用されません。ただ使用貸借契約や一時使用目的のものについても権利の一部が認められることもありますので、借地、借家以外の一時使用目的や使用貸借契約のお困りごとがございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
2.借地借家法の特徴、旧法借地との違い
2-1.借地借家法には「普通借地権」と「定期借地権」があります。
法改正による最大の違いは、「定期借地権」という概念が生まれたことです。これによって地主は建物所有目的で土地を貸した時、いつになったら返ってくるか分からないという不安から解消されることになりました。
1992年以降に新規で結ばれた契約に限り「定期借地権」は使えるのですが、更新をしなくても良い「定期借地権」が生まれたのは、地主にとっては最大のプラス材料と言えるかと思います。
2-2.旧借地法と借地借家法の違い
旧借地法と借地借家法の最大の違いは定期借地権だと思いますが、旧法は「借地権の残存期間内に建物が滅失してしまった場合、第三者に借地権を対抗できない」だったのが、借地借家法では「期間満了前に建物が朽廃しても、残存期間中の権利は保護される」となっていたり、旧法は「残存期間を超える建物を再建築した場合、地主が遅延なく異議を述べない限り借地期間は延長される」だったのが、借地借家法では「地主からの承諾が無い場合、地主が解約の申し入れをするだけで借地権が消滅する」となりました。
また、借地の更新を拒絶する場合についても、旧法では「正当な事由がなければならない」という表現に留まり、正当な事由の解釈の違いによるトラブルが多くありましたが、借地借家法では、立退料の支払で更新を拒絶をしやすくなったというのも大きな特徴です。
旧借地法から借地借家法に改正されたことで、「借地権の契約期間内での建物の滅失に関しても契約期間内の借地権を保護出来るよう改めた」「契約期間の満了によって地主が借地権の消滅を主張しやすくなった」と言えます。
借地借家法(新法) | 借地法 | |
制定 | 平成4年 | |
存続期間 | 10年以上 | 堅固30~60年、非堅固20~30年 |
更新 | 最初20年、以後10年 | 堅固30~60年、非堅固20~30年 |
更新拒絶 | 正当事由必要、立退料によって補完 | 正当な事由が必要、正当事由は曖昧 |
建物再建築 | 再建築には地主の承諾必要 期間延長は20年以上 | 堅固30年、非堅固20年 |
建物朽廃 | 朽廃に関する定め無し | 存続期間の定めが無い場合、借地権は消滅(存続期間の定めがあれば存続) |
建物滅失 | 1度目の更新以降、地主の承諾を得ていない再築は、地主側が借地の契約解除をできる | 滅失に関する定め無し |
借地、底地の問題については、借地借家法の成立後においても専門家の間で意見が分かれる事もある難しい問題です。弁護士であっても専門でない場合に知識が乏しい事も多いため、取り扱いの多い専門家や専門業者に相談するようにしましょう。
著者情報

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人