傾斜地・崖が売れない理由と、売却方法について
「傾斜地や崖を相続した」
「傾斜地・崖を売りたいけど売れなくて困っている」
こんな悩みを抱えていらっしゃる方も多いかと思います。
傾斜地や崖を宅地として利用するには「樹木の伐採費用」「宅地造成費用」など
多額の費用を要します。
そのため、一般の方には売却しにくい不動産となっております。
今回、傾斜地など、売却が難しい不動産を専門とする不動産会社社長が
「なぜ傾斜地やがけ地は売れないのか」
「傾斜地、がけ地をどうやって売ればよいか」
について、詳しく解説してまいります。
著者情報

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、
東京・神奈川の傾斜地・がけ地などの特殊な不動産を専門的に取り扱うため、
多数の不動産トラブルの相談を受けておりました。
当サイトURUHOMEは、私達の積み上げてきたノウハウを
不動産のお悩みを抱えていらっしゃる方々の問題解決に少しでもお役に立てればと思い、
「ニッチな不動産のお悩み解決サイト」として立ち上げたものです。
大変ありがたい事に日本全国から不動産のご相談を頂いており、
無料査定を行い、5000万円位までの物件であれば最短2日でお買取りさせていただくことも可能です。
ご売却にお困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
1.傾斜地・がけ地とは
「傾斜地」とはそのままで傾斜している土地を指します。
「崖」とは、不動産関連の法律では、都市計画法施行規則第16条や、宅地造成等規制法施行令第1条で定義されていて、地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地で硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外のものを指します。

2.傾斜地・がけ地の売却が難しい理由
傾斜地・がけ地はそのままでは宅地として利用できないため、売却が難しい不動産の一つです。そこで、傾斜地やがけ地が売却しにくい理由を詳しく解説いたします。
2-1.傾斜地・がけ地は利用方法が限られる
傾斜地やがけ地は利用用途がかなり限られます。
なだらかな傾斜地であれば「太陽光発電用地」「農業用地」などで利用ができます。
また、土地が広ければ「キャンプ場」などとしても利用することも可能ですが、傾斜が急な崖地となるとほとんど利用が出来なくなります。
2-2.住宅などが建てにくい
傾斜地は造成をしないと住宅が建てにくいというのも売却が難しい理由の一つです。
造成をしないでも「鉄骨基礎工法」などを利用すれば建物が建てられますが、鉄骨も経年劣化があるので、長く住むことを考えると造成するのがベストです。
また、1990年代位までは、傾斜地マンションが流行していましたが、バブル崩壊以降は販売価格が下がる一方で、平坦地よりも工事費が高くなるこのようなマンションが新築されることは、ほとんど無くなってしまいました。
2-3.造成の難易度が高い
傾斜地やがけ地でも鉄骨の基礎を組んで建物を建てることも可能ですが、住宅として長く利用するには、造成をしないと宅地として利用することは難しいです。
また、傾斜地やがけ地の造成工事は以下のような理由から簡単には出来ません。
- 土地家屋調査士による高低測量図が必要
- 設計士による擁壁の設計が必要
- 場合によっては構造計算事務所に構造計算を依頼必要がある
- 多額の宅地造成工事が必要
造成工事については、上記のように擁壁の設計に専門性が求められるという事と、造成費用が高く、費用負担が高いという意味でも難易度が高いと言えます。
2-4.様々な法律により建築が制限されている
傾斜地やがけ地を造成しても、他の様々な法令や条例で建築の際に制限を受けることがあります。
住宅を売買したことがある方であれば聞き覚えがあるかと思いますが、宅地造成工事規制法や、土砂災害防止法にかかる区域内で建築する際に、土地利用や建物建築で制約を受けることがあります。
このため費用的にも平坦地に建物を建てるより高くなる上、心理的な不安も大きくなるのも、売買が難しい要因の一つです。
次の項では、これらの傾斜地やがけ地にかかる法律についてご紹介してまいります。
3.傾斜地・がけ地にかかる法律
前述したように、傾斜地、がけ地では、様々な法令や条例が関わります。ここでは、どんな法律や条例があり、建築の際にどのような制限があるかをご紹介してまいります。
3-1.宅地造成工事規制法
災害の生ずるおそれのある市街地などとして行政が指定した宅地造成工事規制区域内で次のいずれかに当てはまる工事を行う場合には、市長の許可を受けなければならないという法律です。
- 切土の場合で、その部分に高さが2メートルを超える『崖』ができるもの
- 盛土の場合で、その部分に高さが1メートルを超える『崖』ができるもの
- 切土と盛土を同時にする場合で、盛土の部分に高さが1メートル以下の『崖』が生じ、かつ、切土と盛土を行った部分に、高さが2メートルを超える『崖』ができるもの
- 切土又は盛土をする土地の面積が500平方メートルを超えるもの

また、宅地造成工事規制区域内の宅地の所有者には、崩れ等の災害が生じないよう、常に安全な状態を維持する責務があり、市長が災害の防止のため宅地の所有者等に勧告や改善命令を行うことがあります。
宅地造成工事規制区域内で造成工事をする場合、簡易的なコンクリートブロック積による土留めでは無く、間知ブロックや鉄筋コンクリートで擁壁を築造し、基準をクリアしなければ宅地造成工事の許可が出ません。
そのため、宅地造成工事規制法のかかる土地での擁壁工事は、そうではない所と比べて擁壁の設計、工事で2倍程度の金額差が出ることがあります。
3-2.土砂災害防止法
がけ崩れや土石流などの土砂災害から国民の生命を守るため、土砂災害防止法に基づき、土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)および土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)の指定を行っています。
土砂災害特別警戒区域に指定されると、後述するように建物を建築する際に土砂災害に耐えうる建築物を建築しなければならないという構造規制が生じるため、設計費や建築費が割高になります。
尚、土砂災害警戒区域や特別警戒区域に指定されるのは、次のような災害が想定される区域です。
土石流
土石流の発生のおそれのある渓流において、扇頂部から下流で勾配が2度以上の区域
地すべり
ア 地すべり区域
イ 地すべり区域下端から、地すべり地塊の長さに相当する距離(250mを越える場合は250m)の範囲内の区域
急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)
ア 傾斜度が30度以上で高さが5m以上の区域
イ 急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域
ウ 急傾斜地の下端から急傾斜地の高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の区域

3-2-1.土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)に指定されるとどうなる?
土砂災害警戒区域は、土砂災害が発生した場合に、住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域が指定されます。
尚、土砂災害警戒区域に指定されると以下のような義務が生じます。
- 宅地建物取引業者は、当該宅地または建物の売買等にあたり、警戒区域内である旨について重要事項説明を行うこと
- 要配慮者利用施設の管理者等は、避難確保計画を作成し、その計画に基づいて避難訓練を実施すること等が義務づけられます。
3-2-2.土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)に指定されるとどうなる?
土砂災害特別警戒区域は、建築物の損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域が指定されます。
特別警戒区域に指定されると次のように建築の際の許可や、建築の際に一部若しくは全部を鉄筋コンクリート造などにしなければならないなどの構造規制、移転勧告がされることがあります。
下記のように、土砂災害警戒区域と違い、かなり厳しい制限がされることになります。
- 特定の開発行為に対する許可制
- 建築物の構造規制
- 建築物の移転勧告

3-3.森林法
森林法では、全国森林契約・地域森林計画などの森林計画制度、林地開発許可制度、保安林制度などが規定されています。そして、樹木の伐採などに許可や届け出が必要です。
- 地域森林計画の対象森林を取得した場合に届け出が必要になります。
- 保安林の指定を受けている場合は開発が制限されます。
ア 立木の伐採制限
保安林内で立木を伐採する場合には、都道府県知事の許可または届け出が必要となり、指定された方法および限度に従って伐採をしなければなりません。
イ 土地形質の変更制限
保安林の適切な保全を図るため、保安林内において土地の整地や掘削などの形状変更、立木の損傷といった土地の形質変更などの行為をする場合には、あらかじめ都道府県知事の許可を受けることが必要になります。
ウ 伐採後の植栽義務
森林所有者などが保安林の立木を伐採した場合は、あらかじめ定められている植栽の方法、期間および樹種に従って植栽を実施しなければなりません。
3-4.急傾斜法
正式名称は「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」と言います。
台風や集中豪雨の際に発生する急傾斜地の崩壊による災害から住民の生命を保護することを目的として、崩壊するおそれのある急傾斜地で、その崩壊により危害が生ずるおそれのあるものに、一定の行為を制限する必要がある土地の区域を「急傾斜地崩壊危険区域」として都道府県知事が指定します。
急傾斜地崩壊危険区域では、がけ崩れを防止するための工事を実施するとともに、盛土や切土、立木の伐採、その他急傾斜地の崩壊を助長し、誘発するおそれのあるものなどに一定の行為が制限されます。

3-5.がけ条例
建築基準法第 19 条では、「建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない」と規定しております。
これに対し、各自治体の建築基準条例では崖に関する規定を設けています。(通称がけ条例)
がけ条例では、がけの上部、崖下で土地利用をする際に、擁壁や防護壁の築造をしなければならない事などについても規定されていて、どういった場合に擁壁や防護壁が必要かなどについての基準は自治体によって全く違い、崖被害の大きい自治体ほど条例が厳しい傾向があります。
4.売れない傾斜地、がけ地をどうすればよいか?
売れない傾斜地やがけ地、どうすれば良いか悩ましいところです。
そこで、活用方法や売却方法について解説してまいります。
4-1.太陽光発電用地として利用する
傾斜地やがけ地の利用方法の一つは、太陽光発電の用地として賃貸することです。
基本的には300坪以上のまとまった土地で、道路に面している方が価値が高い土地となります。
傾斜が急ながけ地や、樹木を伐採できない保安林などは、太陽光発電用地として利用できないため、注意が必要です。
広くて、地盤が固く、近隣住民からの反対がない土地が向いているので、地方の余っている土地などは、太陽光発電の用地として利用しやすいと言えます。
4-2.キャンプ場として利用する
多少の傾斜で、時間的な余裕があればキャンプ場経営などもお勧めです。
ただ、宿泊業や飲食店、酒類販売の営業許可など、許可が必要になることがあるので事前に確認しましょう。
4-3.URUHOMEで売却する
太陽光発電の用地として賃貸や、キャンプ場や農地として活用する以外は、
売却するのも方法の一つです。
ニッチな不動産”URUHOME”でお馴染みドリームプランニングは、創業18年で、傾斜地やがけ地などの売却が難しい不動産を専門として、積極的にお買取りしています。
最短30分で査定、お問い合わせから最短2日でお買取りさせていただいた事も多数ございます。お困りの不動産がありましたら、お気軽にご相談くださいませ。