建築基準法では、用途地域ごとに建蔽率(第53条。30~80%)や容積率(第52条。50~1300%)が定められています。しかし市街化調整区域には用途地域が定められていません。

用途地域が定められていない市街化調整区域では、建蔽率や容積率の制限がなく、どんな建物でも無制限に建てられるのでは?と思っている方もいるのではないでしょうか。

しかし現実にそんなことはなく、市街化調整区域でも建蔽率や容積率がきちんと決められているのです。

そこで今回は、市街化調整区域で建築する際の建蔽率・容積率はじめ、関連知識についても不動産取引のプロが分かりやすく徹底解説してまいります!

【この記事は、こんな方のために書きました】

著者情報

市街化調整区域内の建蔽率、容積率について『どうなってるの?』with image|URUHOME

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人

法政大学工学部建築学科卒、中堅不動産仲介業者を経て、株式会社ドリームプランニングに入社。底地、再建築不可、市街化調整区域内の土地など、特殊な土地の売買を多く手掛ける。2020年8月より代表取締役に就任

著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年の創業より市街化調整区域の買取業者として日本全国の調整区域の買取をしてまいりました
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  1. 市街化調整区域の建蔽率・容積率は?
  2. 市街化調整区域の建蔽率・容積率【首都圏版】
  3. 市街化調整区域の建築用語解説
  4. 市街化調整区域の不動産で困ったらURUHOMEへご相談を

1.市街化調整区域の建蔽率・容積率は?

いつもなら予備知識として市街化調整区域や建蔽率、容積率についての解説から入るのですが、今回は結論から先にお伝えします。

ただしここで紹介するのは法律に基づく一般論ですから、実際の運用数値については自治体によって異なることをお含みおきください。

またお時間と興味がある方は、その先にある専門用語の解説編も合わせてご覧いただくと、より理解が深まるでしょう。

1-1.市街化調整区域の建蔽率は?

【結論】市街化調整区域の建蔽率は特定行政庁が決めます。

建蔽率の数値は30%・40%・50%・60%・70%のいずれかです。

1-2.市街化調整区域の容積率は?

【結論】市街化調整区域の容積率は特定行政庁が決めます。

容積率の数値は50%・80%・100%・200%・300%・400%のいずれかです。

1-3.市街化調整区域の斜線制限は?

【結論】市街化調整区域の斜線制限は以下の通りです。

・道路斜線制限:勾配1.25または1.5
・隣地斜線制限:20m+勾配1.25または31m+勾配2.5
・北側斜線制限:適用対象外(ただし自治体が条令で定めているケースあり)

1-4.市街化調整区域の日影規制は?

【結論】市街化調整区域の日影規制は地方公共団体が条例で決めます。

市街化調整区域に斜線制限はかかる?日影規制は?

2.市街化調整区域の建蔽率・容積率【首都圏版】

以上、市街化調整区域における建蔽率/容積率/斜線制限/日影規制についてシンプルに解説してきました。

しかしご覧いただければ分かるように、これらはあくまでも一般論。実務的には自治体ごとに確認する必要があります。

そこでここでは、関東6軒の中から主要7都市をピックアップ。それぞれの具体的なデータを確認していきましょう。

2-1.神奈川県横浜市の建蔽率/容積率/斜線制限/日影規制は?

横浜市の市街化調整区域では、このようになっています。

【一般区域】
・建蔽率 50%
・容積率 80%(※1)
・道路斜線 1.25/1
・隣地車線 20m+1.25/1
・日影規制 1.5m、3h、2h
・道路幅員による容積率の低減係数 0.4

【沿道区域】(※2)
・建蔽率 60%
・容積率 200%
・道路斜線 1.25/1
・隣地車線 20m+1.25/1
・日影規制 4m、4h、2.5h
・道路幅員による容積率の低減係数 0.4

(※1)2004年4月1日以前から建っていた建物について、80%を超える容積率で建築確認をとっていた場合、100%を超えない範囲(81~100%)で以前の容積率まで認められます。

(※2)都市計画法施行規則第7条第1号に定める幅員18m以上の幹線道路(自動車専用道路を除く)に沿って50m以内の区域を言います。

……と、こうなっているんですが、記号や数式が並んでいてちょっと分かりにくい方がいるかも知れません。

数値だけじゃなくて、書かれている意味もちゃんと知りたいという方は、この後にある基礎知識編も合わせてご活用ください。

※参考:市街化調整区域の建築物の制限(建築基準法第52条第1項第8号ほか) 横浜市

2-2.神奈川県川崎市の建蔽率/容積率/斜線制限/日影規制は?

【結論】現地の状況を応じて、特定行政庁が原則どおりにケースバイケースで指定します。

川崎市のHPを見ると、市街化調整区域について、このような表現がなされていました。

「川崎市では、これらの建築物について周辺地域の容積率等に合わせた基準による開発許可及び指導を行ってきており、今回の特定行政庁(※1)による指定にあたっては、この従来からの開発許可基準等に準じて、周辺地域との整合を図った指定としています。」

・建蔽率 30%・40%・50%・60%・70%のいずれか
・容積率 50%・80%・100%・200%・300%・400%のいずれか
・道路斜線制限:勾配1.25または1.5のいずれか
・隣地斜線制限:20m+勾配1.25または31m+勾配2.5のいずれか
・日影規制(※1)  3h/2h、4h/2.5h、または5h/3hのいずれか
・前面道路の幅員による容積率制限にかかる係数 6/10(※2)

(※1)日影規制は高さ10m超または軒高7m超もしくは地上3階以上の建物に適用。

(※2)特定行政庁が都市計画審議会の議を経て指定する場合は4/10または8/10。

※参考:川崎市:指定の背景(建築基準法の改正概要)について

2-3.千葉県千葉市の建蔽率/容積率/斜線制限/日影規制は?

千葉市の市街化調整区域では、このようになっています。

【一般区域】
・建蔽率 60%
・容積率 200%
・道路斜線制限 勾配1.5
・隣地斜線制限 20m+勾配1.25
・日影規制 指定なし

【花見川区宇那谷町の一部・み春野住宅団地】
・建蔽率 50%
・容積率 100%
・道路斜線制限 勾配1.25
・隣地斜線制限 20m+勾配1.25
・日影規制 指定なし

※参考:千葉市:市街化調整区域の建築物形態制限値の指定

※参考:花見川区宇那谷町の一部(み春野住宅団地)詳細図

※参考:千葉市地図情報システム(認定道路・都市計画・建築基準法道路・道路工事情報・公共基準点情報・道路境界確定位置情報)

2-4.埼玉県さいたま市の建蔽率/容積率/斜線制限/日影規制は?

さいたま市の市街化調整区域では、このようにほぼ一律となっています。

・建蔽率 60%(※1)
・容積率 200%
・高さ 10m(※)

(※1)建築基準法第53条第3項第2号に該当するものは70%
(※2)絶対高さを準用

斜線制限や日影規制は高さを制限するものなので「斜線や日影に関係なくすべて高さ10m以下」と決めてしまえば、細かな計算をしなくていいので楽ですね。

※参考:市街化調整区域に係る開発行為の立地に関する基準

※参考:建築基準法|e-Gov法令検索

2-5.茨城県水戸市の建蔽率/容積率/斜線制限/日影規制は?

水戸市の市街化調整区域では、このようになっています。

・建蔽率 60%
・容積率 200%
・道路斜線制限 建築基準法第 55・56条に基づく規制の表のとおり
・隣地斜線制限 建築基準法第 55・56条に基づく規制の表のとおり
・日影規制 4m・5h・3h(※1)

(※)高さ10m超の建物にのみ適用(用途地域の指定がない地域)

※参考:水戸市における建築物の高さ等にかかる規制(建築指導課)‐水戸市ホームページ

2-6.栃木県宇都宮市の建蔽率/容積率/斜線制限/日影規制は?

宇都宮市の市街化調整区域では、以下の通りとなっています。全域統一されているので、分かりやすいですね。

・建蔽率 60%(10分の6)
・容積率 200%(10分の20)
・道路斜線制限 1.5
・隣地斜線制限 1.25
・日影規制 4m・5h・3h(※1)

(※1)高さ10mを超える建築物が対象。

※参考:用途地域の指定のない区域における容積率・建ぺい率等の指定について|宇都宮市

※参考:よくある質問 宇都宮市の日影規制の規制内容について知りたい。|宇都宮市

2-7.群馬県前橋市の建蔽率/容積率/斜線制限/日影規制は?

前橋市の市街化調整区域では、このように決められていました。角地による緩和規定が設けられています。

・建蔽率 70%または80%(※1)
・容積率 200%
・道路斜線制限 勾配1.5 適用距離20m
・隣地斜線制限 勾配2.5 立ち上がり31m
・日影規制 4m・5h・3h(※2)

(※1)建築基準法第53条第3項第1号に規定される角地については+10%で80%となります。詳しい条件は前橋市建築基準法等施行規則(角地の指定)第17条を参照。

(※2)高さ10mを超える建築物が対象。

※参考:前橋市における建築物の制限一覧表

※参考:前橋市建築基準法等施行規則

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3.市街化調整区域の建築用語解説

ここまで建蔽率だの容積率だの斜線制限だの日影規制だの……小難しい単語を当たり前のように並べてきました。

分かっている方はいいのですが、そうでない方はここで予備知識を確認しておきましょう。

3-1.市街化調整区域とは(都市計画法第7条第3項)

市街化調整区域とは、都市計画法第7条に定められた区域区分の一つです。

(区域区分)
第七条 都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。

※参考:都市計画法|e-Gov法令検索

区域区分には(1)市街化区域(2)市街化調整区域(3)非線引き区域(区域区分が定められていない都市計画区域内)の3つがあります。

市街化調整区域について、徹底的に解説している記事はコチラ

市街化調整区域とは何か?市街化区域との違いは?

市街化調整区域とは

3-1-1.市街化区域とは

都市計画法 第7条
2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。

※参考:都市計画法|e-Gov法令検索

市街化区域については、都市計画法第7条第2項に定められています。

(1)すでに市街地として賑わっている地域
(2)今後10年以内に優先して発展させたい地域

行政としては発展させたい意図があるため、家を建てるなどの開発行為は基本的にウェルカム。許可基準は比較的ゆるく、手続きもスムーズに進むでしょう。

3-1-2.市街化調整区域とは

都市計画法 第7条
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

※参考:都市計画法|e-Gov法令検索

市街化区域に対して、今度は本題の市街化「調整」区域です。この調整って何でしょうか。

都市計画法の条文を読んでみると、調整とは抑制とおおむねイコールのようです。

つまり「なるべく市街化≒開発したくない区域」と言えるでしょう。

開発したくない/してほしくない事情があるため、行政は市街化調整区域における開発行為について、大きな制限をかけてきます。

一部裏ワザや抜け道はあるものの、原則として市街化調整区域では家が建てられないのもそのためです。

相続などで手に入ってしまった等の事情があるならともかく、家を建てるなどの利活用を考えているなら、市街化調整区域の不動産に手を出すのはおすすめできません。

3-1-3.非線引き区域(区域区分が定められていない都市計画区域内)とは

都市計画区域について、市街化区域か市街化調整区域の区域区分を定めることを、俗に「線引き」と言います。

この線引きがされていない区域について、実務的には非線引き区域と呼ぶことが多いです。

非線引き区域について、正式な名称は存在しません。都市計画法の中では「区域区分が定められていない都市計画区域内」と呼ばれています。

※都市計画法第13条第1項第8・13・14号と第57条第1項の4ヶ所に登場。

市街化区域でも市街化調整区域でもないため、開発行為に対する許可基準は非常にあいまいで、ケースバイケース(自治体担当者の判断)となるでしょう。

実務的な感覚として、市街化調整区域よりは規制がゆるめな一方、市街化区域よりは規制が厳しめになりがちです。

3-2.建蔽率とは(建築基準法第53条)

建蔽率(けんぺいりつ)については、建築基準法第53条でこう規定されています。

建築基準法
(建蔽率)
第五十三条 建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建蔽率」という。)は……(以下略)

※参考:建築基準法|e-Gov法令検索

建蔽率の定義を抜き出すと「建築物の建築面積の敷地面積に対する割合」とのことですが、要するに「敷地を建物が隠蔽(覆い隠)している率(割合)」と言えるでしょう。

例えば100㎡の敷地があったとします。その敷地内に50㎡の建物を建てた場合、建蔽率は50%となるのです。

【建蔽率を求める計算式】

建蔽率(%)=建物面積÷敷地面積×100

ちなみに、建物がいくつか建っている場合は、それらの建物面積を合計した数値で計算しましょう。

【敷地内に複数の建物が建っている場合】

建蔽率(%)=建物面積合計(建物A+建物B……)÷敷地面積×100

例えば、100㎡の敷地に建物面積20㎡の建物が2棟建っていた場合、

建物面積合計(20+20)㎡÷敷地面積100㎡×100

で、建蔽率は40%となります。なお、建蔽率の最大値は理論上100%です。

3-3.容積率とは(建築基準法第52条)

容積率(ようせきりつ)については、建築基準法第52条でこう規定されています。

(容積率)
第五十二条 建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下「容積率」という。)は……(以下略)

※参考:建築基準法|e-Gov法令検索

こちらは「建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合」とのこと。延べ面積とは各階の面積合計を指します。

例えば100㎡の敷地に対して、1階あたり40㎡×2階建ての建物が1棟あったとしましょう。

その場合、40㎡×2階÷100㎡で容積率は80%となります。

容積率は建物の階数が増えるほど高くなるため、法的・現実的にはともかく理論上の最大値は青天井(無限大)です。

建ぺい率容積率

3-4.斜線制限とは(建築基準法第56条)

斜線制限(しゃせんせいげん)とは、建築基準法第56条に規定されている高さ制限を言います。

建築基準法 第56条 【クリックで全文表示。長文注意】

(建築物の各部分の高さ)
第五十六条 建築物の各部分の高さは、次に掲げるもの以下としなければならない。
一 別表第三(い)欄及び(ろ)欄に掲げる地域、地区又は区域及び容積率の限度の区分に応じ、前面道路の反対側の境界線からの水平距離が同表(は)欄に掲げる距離以下の範囲内においては、当該部分から前面道路の反対側の境界線までの水平距離に、同表(に)欄に掲げる数値を乗じて得たもの
二 当該部分から隣地境界線までの水平距離に、次に掲げる区分に従い、イ若しくはニに定める数値が一・二五とされている建築物で高さが二十メートルを超える部分を有するもの又はイからニまでに定める数値が二・五とされている建築物(ロ及びハに掲げる建築物で、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内にあるものを除く。以下この号及び第七項第二号において同じ。)で高さが三十一メートルを超える部分を有するものにあつては、それぞれその部分から隣地境界線までの水平距離のうち最小のものに相当する距離を加えたものに、イからニまでに定める数値を乗じて得たものに、イ又はニに定める数値が一・二五とされている建築物にあつては二十メートルを、イからニまでに定める数値が二・五とされている建築物にあつては三十一メートルを加えたもの
イ 第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域内の建築物又は第一種住居地域、第二種住居地域若しくは準住居地域内の建築物(ハに掲げる建築物を除く。) 一・二五(第五十二条第一項第二号の規定により容積率の限度が十分の三十以下とされている第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域以外の地域のうち、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内の建築物にあつては、二・五)
ロ 近隣商業地域若しくは準工業地域内の建築物(ハに掲げる建築物を除く。)又は商業地域、工業地域若しくは工業専用地域内の建築物 二・五
ハ 高層住居誘導地区内の建築物であつて、その住宅の用途に供する部分の床面積の合計がその延べ面積の三分の二以上であるもの 二・五
ニ 用途地域の指定のない区域内の建築物 一・二五又は二・五のうち、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの
三 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域若しくは田園住居地域内又は第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域(次条第一項の規定に基づく条例で別表第四の二の項に規定する(一)、(二)又は(三)の号が指定されているものを除く。以下この号及び第七項第三号において同じ。)内においては、当該部分から前面道路の反対側の境界線又は隣地境界線までの真北方向の水平距離に一・二五を乗じて得たものに、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内の建築物にあつては五メートルを、第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域内の建築物にあつては十メートルを加えたもの
2 前面道路の境界線から後退した建築物に対する前項第一号の規定の適用については、同号中「前面道路の反対側の境界線」とあるのは、「前面道路の反対側の境界線から当該建築物の後退距離(当該建築物(地盤面下の部分その他政令で定める部分を除く。)から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものをいう。)に相当する距離だけ外側の線」とする。
3 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域又は準住居地域内における前面道路の幅員が十二メートル以上である建築物に対する別表第三の規定の適用については、同表(に)欄中「一・二五」とあるのは、「一・二五(前面道路の反対側の境界線からの水平距離が前面道路の幅員に一・二五を乗じて得たもの以上の区域内においては、一・五)」とする。
4 前項に規定する建築物で前面道路の境界線から後退したものに対する同項の規定の適用については、同項中「前面道路の反対側の境界線」とあるのは「前面道路の反対側の境界線から当該建築物の後退距離(当該建築物(地盤面下の部分その他政令で定める部分を除く。)から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものをいう。以下この表において同じ。)に相当する距離だけ外側の線」と、「前面道路の幅員に」とあるのは「、前面道路の幅員に、当該建築物の後退距離に二を乗じて得たものを加えたものに」とすることができる。
5 建築物が第一項第二号及び第三号の地域、地区又は区域の二以上にわたる場合においては、これらの規定中「建築物」とあるのは、「建築物の部分」とする。
6 建築物の敷地が二以上の道路に接し、又は公園、広場、川若しくは海その他これらに類するものに接する場合、建築物の敷地とこれに接する道路若しくは隣地との高低の差が著しい場合その他特別の事情がある場合における前各項の規定の適用の緩和に関する措置は、政令で定める。
7 次の各号のいずれかに掲げる規定によりその高さが制限された場合にそれぞれ当該各号に定める位置において確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして政令で定める基準に適合する建築物については、それぞれ当該各号に掲げる規定は、適用しない。
一 第一項第一号、第二項から第四項まで及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。) 前面道路の反対側の境界線上の政令で定める位置
二 第一項第二号、第五項及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。) 隣地境界線からの水平距離が、第一項第二号イ又はニに定める数値が一・二五とされている建築物にあつては十六メートル、第一項第二号イからニまでに定める数値が二・五とされている建築物にあつては十二・四メートルだけ外側の線上の政令で定める位置
三 第一項第三号、第五項及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。) 隣地境界線から真北方向への水平距離が、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内の建築物にあつては四メートル、第一種中高層住居専用地域又は第二種中高層住居専用地域内の建築物にあつては八メートルだけ外側の線上の政令で定める位置

※参考:建築基準法|e-Gov法令検索

条文は読まなくても大丈夫です。読んでもすぐには理解できません。こういう

小難しい法律にもとづいて決められているんだな、というご参考程度に載せました。

この長大かつ複雑な文章をかいつまんで解説すると「一定の基準から斜線をのばしたものとして、その下に収まるように建物を建てなければならない」という高さ制限です。

斜線制限には基準ごとに(1)道路斜線制限(2)隣地斜線制限(3)北側斜線制限の3つがあり、市街化調整区域には(1)と(2)がかかります。

ただし自治体によって条例で(3)を定めているところもあるため、実際の運用には確認が必要です。

ちなみに、斜線制限の表記はこのようになっています。

【横浜市の例】
・道路斜線 1.25/1
・隣地車線 20m+1.25/1

【千葉市の例】
・道路斜線制限 勾配1.5
・隣地斜線制限 20m+勾配1.25

この「1.25/1」というのは、水平距離1に対して1.25の高さをとった時の勾配(25%≒約14.03度)という意味です。

道路斜線制限は前面道路の反対側(対面敷地との境界)を基準にその角度で斜線をのばすことになります。

続けて「勾配1.5」は水平距離1に対して高さ1.5をとった時の勾配(50%≒約26.56度)ですね。

隣地斜線制限の「20m+」とあるのは地上(隣地との境界線)から20m上空を起点とし、25%の勾配で斜線をのばすことを意味します。

道路斜線
隣地斜線
北側斜線

3-5.日影規制とは(建築基準法第56条の2)

日影規制(にちえいきせい)とは、文字通り日影がかかる時間を規制するもので、根拠となるのは建築基準法第56条の2です。

建築基準法 第56条の2 【クリックで全文表示。長文注意】

(日影による中高層の建築物の高さの制限)
第五十六条の二 別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(以下この条において「対象区域」という。)内にある同表(ろ)欄の当該各項(四の項にあつては、同項イ又はロのうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(四の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(二の項及び三の項にあつては、当該各項に掲げる平均地盤面からの高さのうちから地方公共団体が当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)の水平面(対象区域外の部分、高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分及び当該建築物の敷地内の部分を除く。)に、敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、同表(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては、(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合又は当該許可を受けた建築物を周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置及び規模の範囲内において増築し、改築し、若しくは移転する場合においては、この限りでない。
2 同一の敷地内に二以上の建築物がある場合においては、これらの建築物を一の建築物とみなして、前項の規定を適用する。
3 建築物の敷地が道路、川又は海その他これらに類するものに接する場合、建築物の敷地とこれに接する隣地との高低差が著しい場合その他これらに類する特別の事情がある場合における第一項本文の規定の適用の緩和に関する措置は、政令で定める。
4 対象区域外にある高さが十メートルを超える建築物で、冬至日において、対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、当該対象区域内にある建築物とみなして、第一項の規定を適用する。
5 建築物が第一項の規定による日影時間の制限の異なる区域の内外にわたる場合又は建築物が、冬至日において、対象区域のうち当該建築物がある区域外の土地に日影を生じさせる場合における同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

※参考:建築基準法|e-Gov法令検索

これも参考までに乗せたので、条文は読まなくても問題ありません。

なお日影規制について、実際にはこのように表記されていることが多いです。

【横浜市の例】
・日影規制 1.5m、3h、2h

これは「地上1.5mの高さで測定する」「敷地境界から5~10mの場所で3時間/日以上の日影ができてはいけない」「同じく10mを超えた範囲で、2時間/日を超える日影ができてはいけない」という意味になります。

ちなみに測定する日時は、太陽が最も低い冬至の8:00~16:00(北海道では9:00~15:00)となっており、少しでも日影による周辺への影響を抑えたい当局の意図がくみ取れますね。

日影規制

3-6.用途地域とは(都市計画法第8条)

用途地域とは都市計画法第8条第1項第1号に規定されるもので、地域を用途別に13分類しています。

都市計画法
第八条 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。
一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)
(以下略)

※参考:都市計画法|e-Gov法令検索

(1)第一種低層住居専用地域……閑静な住宅街
(2)第二種低層住居専用地域……閑静だけどコンビニなど小店舗もOK
(3)第一種中高層住居専用地域……中高層マンション(3F以上)あり
(4)第二種中高層住居専用地域……マンションや大きめ事務所などあり
(5)第一種住居地域……住居と中規模店舗(スーパー・ホテル等)
(6)第二種住居地域……店舗や事務所多め(パチンコ屋・カラオケ等も)
(7)準住居地域……幹線道路沿い。住宅街との緩衝地帯
(8)田園住居地域……低層住居や農業用施設等に限定
(9)近隣商業地域……いわゆる商店街のイメージ
(10)商業地域……都心部の繁華街やオフィス街のイメージ
(11)準工業地域……町工場が立ち並ぶ地域
(12)工業地域……より大規模な工場が密集
(13)工業専用地域……港のコンビナートなど、工業の利便を促進

※注釈は理解しやすいよう、大まかなイメージを描いたものです。

用途地域は市街化区域には必ず定める一方で、市街化調整区域には原則として定めません。

また、非線引き区域と準都市計画区域には用途地域を定めることができます(できる、なので定めなくでもOK)。

都市計画区域外・準都市計画区域外には用途地域を定めることができません。

3-7.特定行政庁とは(建築基準法第2条第1項第35号)

特定行政庁(とくていぎょうせいちょう)と言っても、別にそういう官庁が設けられているわけではありません。

建築基準法第2条第1項第35号には、このように定義されています。

建築基準法 第2条第1項
三十五 特定行政庁 建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。ただし、第九十七条の二第一項又は第九十七条の三第一項の規定により建築主事を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事とする。

※参考:建築基準法|e-Gov法令検索

つまり特定行政庁とは、基本的に

「建築主事がいる市町村では、その市町村長」

「建築主事がいない市町村では、都道府県知事」

ということになります。

3-8.建築主事とは(建築基準法第4条)

建築主事(けんちくしゅじ)とは、建築基準法にもとづく建築計画の審査や工事完了後の検査など、建築行政事務を行う権限を与えられた職員です。

その根拠法規は建築基準法第4条となります。

建築基準法 第4条【クリックで全文表示】

(建築主事)
第四条 政令で指定する人口二十五万以上の市は、その長の指揮監督の下に、第六条第一項の規定による確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置かなければならない。
2 市町村(前項の市を除く。)は、その長の指揮監督の下に、第六条第一項の規定による確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置くことができる。
3 市町村は、前項の規定により建築主事を置こうとする場合においては、あらかじめ、その設置について、都道府県知事に協議しなければならない。
4 市町村が前項の規定により協議して建築主事を置くときは、当該市町村の長は、建築主事が置かれる日の三十日前までにその旨を公示し、かつ、これを都道府県知事に通知しなければならない。
5 都道府県は、都道府県知事の指揮監督の下に、第一項又は第二項の規定によつて建築主事を置いた市町村(第九十七条の二を除き、以下「建築主事を置く市町村」という。)の区域外における建築物に係る第六条第一項の規定による確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置かなければならない。
6 第一項、第二項及び前項の建築主事は、市町村又は都道府県の職員で第七十七条の五十八第一項の登録を受けた者のうちから、それぞれ市町村の長又は都道府県知事が命ずる。
7 特定行政庁は、その所轄区域を分けて、その区域を所管する建築主事を指定することができる。

※参考:建築基準法|e-Gov法令検索

建築主事は都道府県には必ず設置される一方、市町村では基本的に任意となります。

ただし条文にもある通り、政令で指定する人口25万人以上の市には建築主事を必ず設置しなければなりません。

建築主事がいるかどうかは自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

3-9.絶対高さとは(建築基準法第55条第1~2項)

絶対高さとは建築基準法第55条第1~2項に定められた高さ制限で、用途地域のうち3地域に適用されます。

建築基準法
(第一種低層住居専用地域等内における建築物の高さの限度)

第五十五条 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、建築物の高さは、十メートル又は十二メートルのうち当該地域に関する都市計画において定められた建築物の高さの限度を超えてはならない。
2 前項の都市計画において建築物の高さの限度が十メートルと定められた第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物であつて、特定行政庁が低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認めるものの高さの限度は、同項の規定にかかわらず、十二メートルとする。

※参考:建築基準法|e-Gov法令検索

(1)第一種低層住居専用地域
(2)第二種低層住居専用地域
(3)田園住居地域

この3用途地域については、いかなる理由があろうと10mか12m(どちらを選ぶかは自治体による)を絶対に超えてはならない。そう制限するから「絶対高さ」というわけです。

市街化調整区域には原則として適用されませんが、自治体によってはこの絶対高さを準用しているケースもあるため、事前に確認しておきましょう。

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以上、市街化調整区域の建蔽率・容積率・斜線制限・日影規制などについて徹底解説してまいりました。

かなりの長文だったので、すべてお読みくださった方はありがとうございます。必要な知識をピックアップして下さった方は、お役に立てましたら幸いです。

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