「傾斜地って安いって聞くけど、固定資産税や相続税などの税金はどうなってるの?」
「傾斜地を保有しているけど、利用できないし、固定資産税は安くならないの?」
このようなご質問を不動産屋を経営していて、お客様より質問を頂くことがございます。

そこで、今回は《傾斜地の固定資産税や相続税はどのような計算方法で、一般的な土地と比べてどのくらい安いか》を実例を交えて、傾斜地の評価について不動産会社社長が解説します。

著者情報

崖地・傾斜地の不動産評価 (固定資産税評価・相続税評価・実勢価格)with image|URUHOME

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人

法政大学工学部建築学科卒、中堅不動産仲介業者を経て、株式会社ドリームプランニングに入社。底地、再建築不可、市街化調整区域内の土地など、特殊な土地の売買を多く手掛ける。2020年8月より代表取締役に就任

著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年より日本全国の傾斜地などの特殊な不動産を専門的に買い取ってまいりました。
どんな傾斜地でも買取りさせて頂きますので、お困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。

1.傾斜地・崖地の固定資産税、相続税評価額

1-1.傾斜地・崖地の固定資産税評価額

固定資産税、都市計画税の土地の価格は国の定める「固定資産税評価基準」によって決定されます。

また、固定資産の評価は適正な時価を求めることとされておりますが、実はこれは実際の売買価格と乖離があり、あくまで固定資産税などの計算のための価格と考えたほうが良いと思います。

この固定資産の評価の為には路線価が元となりますが、この路線価に評価する土地の形状や奥行き、間口や接道、傾斜地、高圧線下などによって評価が補正(画地補正)され、固定資産の評価がされることになります。

本来固定資産の評価は毎年行われるべきですが、実務的に困難なため3年間毎の見直しとなっております。

急傾斜地とは

傾斜度が30度以上である土地を指します(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律)。

付表1:東京都主税局ホームページより/平成30年を基準年度とした「崖地や急傾斜地崩壊危険区域の画地補正率」

がけ地地積の総地積に対する割合20%以上50%未満50%以上80%未満80%以上
傾斜地0.900.750.60
急傾斜地0.750.600.50
東京都画地補正率 付表11崖地補正率表
出典:東京都主税局ホームページ(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/map/H30/
PDFリンク:画地補正率表(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/map/H30/hoseiritsu.pdf

付表2:東京都主税局ホームページより/東京都画地補正率 土砂災害特別警戒区域補正率表(総地積に対する特別警戒区域の割合)

土砂災害特別警戒区域の総地積に対する割合20%未満20%以上50%未満50%以上80%未満80%以上
補正率0.950.900.850.80
出典:東京都主税局ホームページ(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/map/H30/
PDFリンク:画地補正率表(https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/map/H30/hoseiritsu.pdf

例えば、次のような土地の場合の固定資産税評価額》は以下の通りです。

土地の例》

  • 前面道路が200,000円/㎡
  • 対象地が100㎡
  • 急傾斜地で崖の割合が30%
  • 土砂災害特別警戒区域が20%

固定資産税評価額》

200,000円×100㎡×0.75(急傾斜地30%の場合)×0.9(土砂災害特別警戒20%の場合)=13,500,000円

急傾斜地でも土砂災害特別警戒区域でもない場合200,000円×100㎡=20,000,000円になるので、
650万円近く評価が変わる計算になります。

固定資産税路線価
平成30年から令和2年 固定資産税評価情報/横浜市地図行政情報システムより

固定資産税評価額は「固定資産税・都市計画税」の他に「不動産取得税」「登録免許税」の基準にもなります。

1-2.傾斜地・崖地の相続税評価額

次に傾斜地、崖地の相続税評価額をしていきますが、この時に固定資産税路線価と相続税路線価が違うのでご注意ください。

相続税路線価は下図のように不動産の所在する場所の地区区分や崖地の地積によっても異なります。

固定資産税路線価と相続税路線価は異なります。

付表3:国税庁ホームページより/不整形地補正率(平11課評2-12外追加・平18課評2-27外改正)

地区区分高度地区繁華街地区普通商業等普通住宅等
地積区分ABCABC
10%以上(崖地割合)0.990.991.000.980.990.99
15%以上(崖地割合)0.980.990.990.960.980.99
20%以上(崖地割合)0.970.980.990.940.970.98
25%以上(崖地割合)0.960.980.990.920.950.97
30%以上(崖地割合)0.940.970.980.900.930.96
35%以上(崖地割合)0.920.950.980.880.910.94
40%以上(崖地割合)0.900.930.970.850.880.92
45%以上(崖地割合)0.870.910.950.820.850.90
50%以上(崖地割合)0.840.890.930.790.820.87
55%以上(崖地割合)0.800.870.900.750.780.83
60%以上(崖地割合)0.760.840.860.700.730.78
65%以上(崖地割合)0.700.750.800.600.650.70
出典:国税庁ホームページ

付表4・5・6:がけ地補正率表(平3課評2-4外・平11課評2-12外改正)

地積区分・地区区分
普通住宅地区500平方メートル未満500平方メートル以上
750平方メートル未満
750平方メートル以上
出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
崖地方位西
0.10以上(崖地地積/総地積)0.960.950.940.93
0.20以上(崖地地積/総地積)0.920.910.900.88
0.30以上(崖地地積/総地積)0.880.870.860.83
0.40以上(崖地地積/総地積)0.850.840.820.78
0.50以上(崖地地積/総地積)0.820.810.780.73
0.60以上(崖地地積/総地積)0.790.770.740.68
0.70以上(崖地地積/総地積)0.760.740.700.63
0.80以上(崖地地積/総地積)0.730.700.660.58
0.90以上(崖地地積/総地積)0.700.650.600.53
出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm
特別警戒区域の地積補正率
0.10以上(総地積)0.90
0.40以上(総地積)0.80
0.70以上(総地積)0.70
出典:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

先ほど固定資産税路線価を計算したものと、同じ土地で計算すると、次のような場合の《相続税評価額》は以下の通りです。

  • 前面道路が200,000円/㎡
  • 対象地が100㎡
  • 住宅地、崖の割合が30%
  • 土砂災害特別警戒区域が20%
  • 西側が崖の場合

相続税評価額

290,000円×100㎡×0.90(普通住宅地・地積区分A)×0.86(崖地地積/総地積0.30以上)×0.81,795,6800円

傾斜地でない場合は290,000円×100㎡=29,000,000円になるので、
1100万円近く評価が変わる計算になります。

また、今回の場合は同じ土地でも相続税評価と固定資産税評価が450万円位違いました。

不動産の固定資産税評価と相続税評価はかなり異なります。
《固定資産税評価》と《相続税評価》は異なるため、注意しましょう。

また、《傾斜地や崖地の売却》をお考えの際は、こちらからお気軽にご相談くださいませ。

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