「傾斜地って安いって聞くけど、固定資産税や相続税などの税金はどうなってるの?」
「傾斜地を保有しているけど、利用できないし、固定資産税は安くならないの?」
このようなご質問を不動産屋を経営していて、お客様より質問を頂くことがございます。
そこで、今回は《傾斜地の固定資産税や相続税はどのような計算方法で、一般的な土地と比べてどのくらい安いか》を実例を交えて、傾斜地を含む土地の固定資産税や相続税の評価について解説します。傾斜地の割合や土砂災害特別警戒区域に指定されているか、そして意外にも方角にもよって変わってきます。
著者情報

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年より日本全国の傾斜地などの特殊な不動産を専門的に買い取ってまいりました。
どんな傾斜地でも買取りさせて頂きますので、お困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
1.傾斜地・崖地の固定資産税、相続税評価額
1-1.傾斜地・崖地の固定資産税評価額
固定資産税、都市計画税の土地の価格は国の定める「固定資産税評価基準」によって決定されます。
また、固定資産の評価は適正な時価を求めることとされておりますが、実はこれは実際の売買価格と乖離があり、あくまで固定資産税などの計算のための価格と考えたほうが良いと思います。
この固定資産の評価の為には路線価が元となりますが、この路線価に評価する土地の形状や奥行き、間口や接道、傾斜地、高圧線下などによって評価が補正(画地補正)され、固定資産の評価がされることになります。本来固定資産の評価は毎年行われるべきですが、実務的に困難なため3年間毎の見直しとなっております。
急傾斜地とは
傾斜度が30度以上である土地を指します(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律)。
付表1:平成30年を基準年度とした「崖地や急傾斜地崩壊危険区域の画地補正率」
がけ地地積の総地積に対する割合 | 20%以上50%未満 | 50%以上80%未満 | 80%以上 |
---|---|---|---|
傾斜地 | 0.90 | 0.75 | 0.60 |
急傾斜地 | 0.75 | 0.60 | 0.50 |
付表2:東京都画地補正率 土砂災害特別警戒区域補正率表(総地積に対する特別警戒区域の割合)
土砂災害特別警戒区域の総地積に対する割合 | 20%未満 | 20%以上50%未満 | 50%以上80%未満 | 80%以上 |
---|---|---|---|---|
補正率 | 0.95 | 0.90 | 0.85 | 0.80 |
例えば、次のような土地の場合の固定資産税評価額は以下の通りです。
土地の例:以下の
- 前面道路が200,000円/㎡
- 対象地が100㎡
- 急傾斜地で崖の割合が30%
- 土砂災害特別警戒区域が20%
固定資産税評価額:
200,000円×100㎡×0.75(急傾斜地30%の場合)×0.9(土砂災害特別警戒20%の場合)=13,500,000円
急傾斜地でも土砂災害特別警戒区域でもない場合《200,000円×100㎡=20,000,000円》になるので、
650万円近く評価が変わる計算になります。

固定資産税評価額は「固定資産税・都市計画税」の他に「不動産取得税」「登録免許税」の基準にもなります。
1-2.傾斜地・崖地の相続税評価額
次に傾斜地、崖地の相続税評価額をしていきますが、この時に固定資産税路線価と相続税路線価が違うのでご注意ください。相続税路線価は下図のように不動産の所在する場所の地区区分や崖地の地積によっても異なります。
固定資産税路線価と相続税路線価は異なります
地区区分 | 高度地区 | 繁華街地区 | 普通商業等 | 普通住宅等 | ||
地積区分 | A | B | C | A | B | C |
10%以上(崖地割合) | 0.99 | 0.99 | 1.00 | 0.98 | 0.99 | 0.99 |
15%以上(崖地割合) | 0.98 | 0.99 | 0.99 | 0.96 | 0.98 | 0.99 |
20%以上(崖地割合) | 0.97 | 0.98 | 0.99 | 0.94 | 0.97 | 0.98 |
25%以上(崖地割合) | 0.96 | 0.98 | 0.99 | 0.92 | 0.95 | 0.97 |
30%以上(崖地割合) | 0.94 | 0.97 | 0.98 | 0.90 | 0.93 | 0.96 |
35%以上(崖地割合) | 0.92 | 0.95 | 0.98 | 0.88 | 0.91 | 0.94 |
40%以上(崖地割合) | 0.90 | 0.93 | 0.97 | 0.85 | 0.88 | 0.92 |
45%以上(崖地割合) | 0.87 | 0.91 | 0.95 | 0.82 | 0.85 | 0.90 |
50%以上(崖地割合) | 0.84 | 0.89 | 0.93 | 0.79 | 0.82 | 0.87 |
55%以上(崖地割合) | 0.80 | 0.87 | 0.90 | 0.75 | 0.78 | 0.83 |
60%以上(崖地割合) | 0.76 | 0.84 | 0.86 | 0.70 | 0.73 | 0.78 |
65%以上(崖地割合) | 0.70 | 0.75 | 0.80 | 0.60 | 0.65 | 0.70 |
地積区分・地区区分 | A | B | C |
---|---|---|---|
普通住宅地区 | 500平方メートル未満 | 500平方メートル以上 750平方メートル未満 | 750平方メートル以上 |
崖地方位 | 南 | 東 | 西 | 北 |
---|---|---|---|---|
0.10以上(崖地地積/総地積) | 0.96 | 0.95 | 0.94 | 0.93 |
0.20以上(崖地地積/総地積) | 0.92 | 0.91 | 0.90 | 0.88 |
0.30以上(崖地地積/総地積) | 0.88 | 0.87 | 0.86 | 0.83 |
0.40以上(崖地地積/総地積) | 0.85 | 0.84 | 0.82 | 0.78 |
0.50以上(崖地地積/総地積) | 0.82 | 0.81 | 0.78 | 0.73 |
0.60以上(崖地地積/総地積) | 0.79 | 0.77 | 0.74 | 0.68 |
0.70以上(崖地地積/総地積) | 0.76 | 0.74 | 0.70 | 0.63 |
0.80以上(崖地地積/総地積) | 0.73 | 0.70 | 0.66 | 0.58 |
0.90以上(崖地地積/総地積) | 0.70 | 0.65 | 0.60 | 0.53 |
特別警戒区域の地積 | 補正率 |
---|---|
0.10以上(総地積) | 0.90 |
0.40以上(総地積) | 0.80 |
0.70以上(総地積) | 0.70 |
先ほど固定資産税路線価を計算したものと、同じ土地で計算すると、
前面道路が200,000円/㎡
対象地が100㎡、
住宅地、崖の割合が30%、土砂災害特別警戒区域が20%、
西側が崖の場合、場合の相続税評価額は以下の通りです。

290,000円×100㎡×0.90(普通住宅地・地積区分A)×0.86(崖地地積/総地積0.30以上)×0.8=1,795,6800円
傾斜地でない場合は290,000円×100㎡=29,000,000円になるので、
1100万円近く評価が変わる計算になります。
また、今回の場合は同じ土地でも相続税評価と固定資産税評価が450万円位違いました。
不動産の固定資産税評価と相続税評価はかなり異なります
固定資産税評価と相続税評価は異なるため、注意しましょう。
相続税評価については初回相続相談無料の「損をしない!賢い相続のお手伝いをします 【相続の窓口】」
を利用すると便利です。
また、傾斜地や崖地の売却をお考えの際は、こちらからお気軽にご相談くださいませ。