「借地権には土地の固定資産税ってかかるの?」底地や借地の専門買取業者である当社にはこのような相談が多数寄せられます。
結論から言うと、借地には土地の固定資産税・都市計画税はかからず建物の固定資産税・都市計画税が課税されます。
そもそも、借地権にはどんな税金がかかるのでしょうか?
現役不動産屋の社長が、借地権にかかる税金について解説します。
借地権をこれから購入する方、借地権を所有している方は必見です。
著者情報
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
1.借地権の固定資産税はだれが払う?
1-1 土地所有者には土地の固定資産税・都市計画税がかかります。
土地の固定資産税・都市計画税がかかるのは土地所有者、つまり地主になります。
借地はあくまで地主の土地を借りて利用しているので、土地自体は所有しておらず、借地人にとって土地は課税対象になりません。
1-2 建物所有者に建物の固定資産税・都市計画税がかかります。
借地人には土地の固定資産税・都市計画税はかかりませんが、借地上の建物は借地人所有の為、公租公課がかかります。
「固定資産税の税額」は不動産の価格×1.4%
「都市計画税の税額」は不動産の価格×0.3%
になります。
1-2-1.借地権付き建物にも固定資産税には軽減措置があります
ちなみに、新築された住宅が次の床面積要件をみたす場合は、新たに課税される年度から3年度分(3階建以上の耐火・準耐火建築物は5年度分)に限り、固定資産税額の2分の1が減額されます。
- 新築年月日が令和6年4月2日~令和8年3月31日まで(延長)
- 一戸建住宅の場合、床面積50㎡以上280㎡以下
- 店舗などとの併用住宅の場合、居住部分の床面積50㎡以上280㎡以下
- アパート、マンションなどは居住部分の床面積+共有部分を按分した床面積50㎡以上280㎡以下
1-2-2.借地権付き建物にも固定資産税の免税点があります
区市町村の各区域内で、所有する固定資産の課税標準額の合計額が、それぞれ次の金額に満たない場合、固定資産税は課税されません。
なお、固定資産税が免税点未満の土地・家屋は、都市計画税は課税されません。
土地・・・30万円 家屋・・・20万円
1-2-3.不動産の価格とは、固定資産税課税台帳に登録されたもの
ところで、固定資産税を計算するときの「不動産の価格」が何か気になりますよね?
基本的には不動産の税額を決めるときは同じものを基準としていて、それが何かというと…
「不動産の価格」とは、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて評価された額を知事又は市町村長が決定し、固定資産課税台帳に登録したものをいいます。
市町村の役場などで評価証明を閲覧すれば課税台帳に記載されている評価額を知ることが出来る他、固定資産税などの納税通知書にも記載されています。
固定資産税は登記簿に記載された所有者が納税義務者なので、土地の固定資産税は地主負担、建物の固定資産税は借地人負担になります。
2.借地権にはどんな税金がかかる?
- 2-1 借地権にかかる税金①登録免許税
- 2-2 借地権にかかる税金②不動産取得税
- 2-3 借地権にかかる税金③贈与税
- 2-4 借地権にかかる税金④相続税
- 2-5 借地権にかかる税金⑤譲渡所得税
2-1.借地権にかかる税金①登録免許税
「登録免許税」とは、土地や建物を購入や建築したときに、所有権移転や所有権保存登記などをするのですが、登記をする際にかかる税金を登録免許税と言います。
借地権付き建物を購入した際、「土地に借地権設定」をするのに不動産の価格の1000分の10の登録免許税がかかります。(相続又は法人の合併による移転の登記は1000分の2)
ただし、一般的には土地に対して借地権の設定をすることはほとんどないため、一般的には建物に対する登録免許税しか発生しないことが多いです。
建物については新築の際に必要になる「所有権の保存登記」が不動産の価額の1000分の4(自己居住用の場合1000分の1.5)、売買又は競売による「所有権の移転登記」が不動産の価額の1000分の20(自己居住用の場合1000分の3)がかかります。
固定資産税のところでもご説明しているのですが、「不動産の価格」とは、評価証明などに記載されている『土地・建物の評価額』を指します
登記種別 | 税率 | 軽減税率、相続による移転 |
借地権設定 | 不動産の価額×10/1000 | 不動産の価額×2/1000 |
所有権保存登記 | 不動産の価額×4/1000 | 不動産の価額×1.5/1000 |
所有権移転登記 | 不動産の価額×20/1000 | 不動産の価額×3/1000 |
2-2.借地権にかかる税金②不動産取得税
「不動産取得税」とは、土地や建物を取得したときに、課税される税金です。
購入した場合でも譲り受けた場合でも、登記されているか否かにも関わらず課税されます。
借地権の場合、不動産取得税は建物のみに課税され、住宅の場合は不動産の価格の3%が税額、住宅でない場合は不動産の価格の4%が税額になります。
土地については課税されません。
また、課税標準となるべき額が次に金額以下の場合、不動産取得税は課税されません。
- 新築、増築、改築ー23万円
- その他(売買など)ー12万円
不動産取得税の「不動産の価格」についても、評価証明などに記載されている『土地・建物の評価額』を指します。
2-3.借地権にかかる税金③贈与税
「贈与税」とは、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金で、借地権付き建物の贈与を受けた場合、贈与をされた方に納税義務が生じます。
〇借地権の評価について
相続税や贈与税を計算する際に、借地権の評価額をどのように計算するかという疑問がありますが、一般的には国税庁のホームページにある『財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』で路線価を確認して、借地権割合を乗算して計算することが一般的です。
例えば更地の評価額が1億円、借地権割合が70%の場合、借地権の評価額は7000万円という事になります。
〇贈与税額の計算
贈与税額の計算=[(借地権の相続税評価額+建物評価額-110万円)×税率]-控除額
例えば借地権の相続税評価額が1000万円、建物評価額が500万円の借地権付き建物を両親から相続した場合、次に解説する特例贈与財産が適用されるため、速記表より計算することができます。
[(1000万円+500万円-110万円)×40%]―190万円=366万円であると分かります。
〇贈与税率と控除額
贈与税については、父母や祖父母など、直系尊属からその年の1月1日において20歳以上の子や孫に贈与した場合は「特例贈与財産」、それ以外の場合は「一般贈与財産」とされ、税額、控除額が異なります。
◎一般贈与財産用
兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合など「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使用するものです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
◎特例贈与財産用
直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に使用
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
2-4.借地権にかかる税金④相続税
「相続税」は、亡くなった親などから、財産を相続した際に、その受け取った財産にかかります。
借地権付き建物を相続した場合も、相続人に対して課税されます。
〇相続税の計算の際の注意点
借地権付き建物を相続したときの計算方法は、借地権やその他の財産を単体でそれぞれ相続税を計算するわけではなく、合計の遺産額から基礎控除額を差し引いた残りの額を民法に定める相続分によりあん分した額に税率を乗じます。
〇基礎控除について
この場合、民法に定める相続分は基礎控除額を計算するときに用いる法定相続人の数に応じた相続分(法定相続分)により計算します。基礎控除額は[3000万円+(600万円×法定相続人の数)]となります。
例えば両親が借地権付き建物のみを所有していて、法定相続人が1人しかいない場合、借地権の相続税評価額が1000万円、建物評価額が500万円の借地権付き建物を両親から相続した場合、上記の基礎控除の範囲となる為、相続税はかかりません。
◎相続税の税率
法定相続分により按分した法定相続分に応ずる取得金額を下表に当てはめて計算し、算出された金額が相続税の総額の基となる税額となります。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
2-5.借地権にかかる税金⑤譲渡所得税
「譲渡所得税」は、借地権付き建物を売却して利益が出た場合、利益に対して譲渡所得税がかかります。
譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年超の場合は「長期譲渡所得」がかかります。
〇居住用財産を譲渡した場合の特別控除
また、売却した借地権付き建物が自己居住用の場合、一定の要件を満たせば、3000万円の特別控除があり、3000万円以上の利益が出なければ譲渡所得税は不要になります。
〇空き家を相続した場合の譲渡所得の特別控除
これは、空き家の相続人が売却時までに耐震基準を満たすか、建物を解体すれば譲渡所得から3,000万円が控除されるものです。
令和5年度税制改正において、適用要件が見直され、一定の要件を満たせば令和9年12月31日まで、譲渡日の属する年の翌年2月15日までに、空き家を相続した者、若しくは購入者が空き家等の耐震リフォーム若しくは解体すれば、譲渡所得から3,000万円が控除されることとなりました。
〇居住用財産以外の借地権付建物を売却した場合の税額
自己居住用でなかった場合は、所有期間5年以下の短期譲渡所得の場合、所得税30.63%(令和19年まで復興所得税含む)、住民税9%がかかります。5年超の場合所得税15.315%(令和19年まで復興所得税含む)、住民税5%がかかります。
この時譲渡金額から取得費と譲渡費用などが控除されますが、相続などで取得費が分からない場合、売った金額の5%相当額が取得費となってしまう為、取得費用がきちんと分かるように契約書などは保存しましょう。
3.借地の税金で困ったらURUHOME
借地権にかかる税金については、譲渡所得や相続税など計算が難しいものもある為、税理士や会計士などの専門家に相談する事のがベストです。
ただ、売却などに関しましては、当サイトURUHOMEを運営しているドリームプランニングにご相談くださいませ。
当社は2005年の創業より底地・借地の買取専門業者として東京、神奈川で買取りをしてまいりました。
借地や底地の税務上の相談も含めた売却では、当社より税理士や会計士をご紹介させていただき、売却も含めた適切な対策をご提案させていただきます。
お困りごとなどがございましたら、お気軽にご相談くださいませ。