借地権にかかる”固定資産税・都市計画税、取得税、贈与税、相続税など、その他税”について【土地、建物の固定資産税は誰に課税されるか?】
借地権には土地の固定資産税ってかかるの?
借地権にかかる税金にはどのようなものがあるの?
借地権をこれから購入する方、借地権を所有している方の気になる疑問を解決します。
1.土地の固定資産税は土地所有者に、建物の固定資産税は建物所有者にかかります
1-1 土地所有者には土地の固定資産税・都市計画税がかかります。
土地の固定資産税・都市計画税がかかるのは土地所有者、つまり地主になります。借地はあくまで地主の土地を借りて利用しているので、土地自体は所有しておらず、借地人にとって土地は課税対象になりません。
1-2 建物所有者に建物の固定資産税・都市計画税がかかります。
借地人には土地の固定資産税・都市計画税はかかりませんが、借地上の建物は借地人所有の為、公租公課がかかります。
固定資産税は登記簿に記載された所有者が納税義務者なので、土地の固定資産税は地主負担、建物の固定資産税は借地人負担になります。
2.借地権にはどんな税金がかかる?
2-1.登録免許税
借地権付き建物を購入した際、土地に借地権設定をするのに不動産の価格の1000分の10の登録免許税がかかります。(相続又は法人の合併による移転の登記は1000分の2)
建物については新築の際に必要になる「所有権の保存登記」が不動産の価額の1000分の4(自己居住用の場合1000分の1.5)、売買又は競売による「所有権の移転登記」が不動産の価額の1000分の20(自己居住用の場合1000分の3)がかかります。
登記種別 | 税率 | 軽減税率、相続による移転 |
借地権設定 | 不動産の価額×10/1000 | 不動産の価額×2/1000 |
所有権保存登記 | 不動産の価額×4/1000 | 不動産の価額×1.5/1000 |
所有権移転登記 | 不動産の価額×20/1000 | 不動産の価額×3/1000 |
2-2.不動産取得税
不動産取得税は建物の不動産の価額の3%になります。土地については課税されません。
2-3.贈与税
借地権付き建物の贈与を受けた場合、贈与をされた方に納税義務が生じます。
父母や祖父母など、直系尊属からその年の1月1日において20歳以上の子や孫に贈与した場合は「特例贈与財産」、それ以外の場合は「一般贈与財産」とされ、税額、控除額が異なります。
贈与税額の計算=[(借地権の相続税評価額+建物評価額-110万円)×税率]-控除額
例えば借地権の相続税評価額が1000万円、建物評価額が500万円の借地権付き建物を両親から相続した場合、下記の特例贈与財産の速記表より計算することができます。
[(1000万円+500万円-110万円)×40%]―190万円=366万円であると分かります。
◎一般贈与財産用
兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合など「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使用するものです。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
◎特例贈与財産用
直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に使用
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
2-4.相続税
借地権付き建物の相続を受けた場合、相続をされた方に納税義務が生じます。
借地権付き建物を相続したときの計算方法は、借地権やその他の財産を単体でそれぞれ相続税を計算するわけではなく、合計の遺産額から基礎控除額を差し引いた残りの額を民法に定める相続分によりあん分した額に税率を乗じます。
この場合、民法に定める相続分は基礎控除額を計算するときに用いる法定相続人の数に応じた相続分(法定相続分)により計算します。
基礎控除額は[3000万円+(600万円×法定相続人の数)]となります。
例えば両親が借地権付き建物のみを所有していて、法定相続人が1人しかいない場合、借地権の相続税評価額が1000万円、建物評価額が500万円の借地権付き建物を両親から相続した場合、上記の基礎控除の範囲となる為、相続税はかかりません。
◎相続税の税率
法定相続分により按分した法定相続分に応ずる取得金額を下表に当てはめて計算し、算出された金額が相続税の総額の基となる税額となります。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1000万円以下 | 30% | 90万円 |
1500万円以下 | 40% | 190万円 |
3000万円以下 | 45% | 265万円 |
4500万円以下 | 50% | 415万円 |
4500万円超 | 55% | 640万円 |
2-5.譲渡所得税
借地権付き建物を売却して利益が出た場合、利益に対して譲渡所得税がかかります。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年超の場合は「長期譲渡所得」がかかります。
また、売却した不動産が自己居住用の場合、3000万円の特別控除があり、3000万円以上の利益が出なければ譲渡所得税は不要です。
自己居住用でなかった場合は、所有期間5年以下の短期譲渡所得の場合、所得税30%、住民税9%がかかります。5年超の場合所得税15%、住民税5%がかかります。この時譲渡金額から取得費と譲渡費用などが控除されますが、相続などで取得費が分からない場合、売った金額の5%相当額が取得費となってしまう為、取得費用がきちんと分かるように契約書などは保存しましょう。
借地権にかかる税金については、譲渡所得や相続税など計算が難しいものもある為、専門家に相談する事をお勧めいたします。
著者情報

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人