借りている借地がそろそろ更新の時期になってきた。
契約書には更新時には更新料を支払うって書いてあるけど、更新料って払わなければならないの?
払えない場合はどうしたらいいの?
更新料の相場って幾らくらいなの?

そんな疑問にお応えすべく現役不動産会社の社長が解説します。

著者情報

借地権の更新料【払う必要は?相場は?払えない時は?】with image|URUHOME

株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人

法政大学工学部建築学科卒、中堅不動産仲介業者を経て、株式会社ドリームプランニングに入社。底地、再建築不可、市街化調整区域内の土地など、特殊な土地の売買を多く手掛ける。2020年8月より代表取締役に就任

著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年より日本全国の底地・借地などの特殊な不動産を専門的に買い取ってまいりました。
どんな借地でも買取りさせて頂きますので、お困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。

1.借地権の更新期間は「借家法」「借地借家法」で違う

借地の契約には、1992年7月31日以前に最初の契約がされた場合は「借地法」1992年8月1日以降に最初の契約がされた場合、「借地借家法」が適用されます。

あくまで最初に契約された時期によって「借地法」か「借地借家法」かどちらが適用されるか異なるので、最初の契約が1992年7月以前で、1992年8月以降に更新があったような場合は「借地法」(旧法)が適用されます。

1-1.借地法と借地借家法では借地期間が違う

借地法と借地借家法は当初契約がされた時期が1992年7月以前か8月以降かによって、どちらが適用されるか異なると説明しましたが、借地法と借家法で異なるのは借地期間です。

借地法でも借地借家法でも、最低の期間より短い期間で契約が成立したとしても、その期間については無効という事になります。(借地法11条、借地借家法9条)

1-1-1.借地法による借地期間

借地法による借地期間は、鉄筋コンクリート、石造、煉瓦造などの堅固な建物を所有する目的の場合と、その他の建物を所有する目的によって、契約期間が異なります。

一般的には木造の建物の所有目的で契約されていることが多く、その場合借地の契約更新は20年毎になります。

建物所有の目的初回の期間期間の合意がない場合更新後の期間
堅固建物を所有する目的30年以上60年30年
その他建物を所有する目的20年以上30年20年

尚、借地法(旧法)での契約の場合、契約の時期が分からない事が良くあります。

「相続した底地で契約書も見つからず、最初に契約したのがいつか分からない」そんな時は以下のようなことを参考にして契約期間を特定させます。

  • 登記簿謄本に記載されている「建築年月日」
  • 市役所などの建築課で取得できる「建築計画概要書」
  • 居住者の住民票の「住民になった日」

これらの要素から、契約日を推定し堅固建物か非堅固建物かによって更新期間が分かるので、それを元に推定更新日に更新するという手続きを実務では行います。

1-1-2.借地借家法による借地期間

1992年8月以降に締結された建物所有目的の土地賃貸借の場合、借地借家法が適用されます。

借地借家法には更新が無い定期借地権もありますが、普通借地権の場合は建物構造・種類にかかわらず、借地期間は当初30年、次は20年、以降は10年毎になります。

建物所有の目的最初の契約期間最初の契約期間に合意がない場合更新後の期間以降の契約期間
全ての建物所有の目的30年以上30年20年10年

30年、20年、10年、10年、10年と続き、旧借地法の契約期間とは違うため、1992年以降に契約をした方は注意しましょう。

1-2.借地権の更新は3種類ある

借地権の更新は以下の3種類があります。

更新請求による更新

借地人から地主に請求することで出来る更新です。
借地上に建物が存在し、地主に正当な事由がなければ、地主は拒否できず、以前と同じ内容で契約更新されます。

合意更新

一般的な更新で、地主と借地人が双方合意して進める更新の手続きです。
更新料や更新後の地代などについて、話し合いで決めます。

法定更新

地主や借地人が相続などによって、通常の更新手続きがなされなかった場合においても、旧借地権・普通借地権であれば法定更新によって自動的に契約が更新されます。

ただし、以下のような条件があります。

  • 借地上に建物があり、借地人が継続して使用していること
  • 地主が正当な事由があり、更新について異議を申し立てをしないこと
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2.借地権の更新料って支払わなければならない?

1992年8月1日の借地借家法の制定以前に締結された借地の場合、更新は20年に一度ですが、更新料の支払いを巡って地主と借地人でトラブルになることが良くあります。

地主としては更新料を支払うべきと考える方が多く、借地人としては支払い義務はないと考える方が多いのですが、特に地主や借地人が相続などによって変わることで、借地の更新拒絶などの大きな問題発展することがあります。

結論から申し上げますと、更新料は支払う必要はないことが多いのですが、更新料の支払いについて明確に合意していた場合は更新料を支払う必要があります。

まずは更新料の支払い義務がどんな時に生じるか解説してまいります。

2-1.借地権の更新料って何?

更新料は賃料の補充や前払い、賃貸借契約を継続するための対価の趣旨を含む複合的な性質(平成23年7月15日最判)と考えられていて、簡単に言うと地主と借地人が円滑に契約を継続するためにあります。

東京などの都市部では更新料を支払うのが慣習となっており、これは借地の更新時に地主から更新拒絶をされる可能性があることから、昭和30年頃から更新を認めることの対価として更新料の支払いが広まったと考えられています。

また、契約書の特約条項などで「更新の際は更新料〇〇〇万円を支払う事により更新することが出来る」などと記載がある場合や、更新時に合意があった場合において更新料を支払う義務が生じると考えられています。

しばしばこの特約自体が有効であるか争われることもありますが、更新料が高額すぎるなどの特段の事情が無い限り有効とされています。(平成23年7月15日最判)

2-2.借地権の更新料を支払わなくても良い場合

まず、結論から言うと借地契約で更新料の支払いについて明確な合意が無ければ、更新料を支払う義務はありません。

実際は借地法や借地借家法では、必ずしも更新料の支払いを義務付けておらず、支払うべき場合と支払わなくても良い場合があります。

支払わなくても良い場合であっても、譲渡や建て替えの時に承諾を得やすくしたり、更新の拒否をさせないようにするという意味では、支払った方が円滑に物事が進むこともあります。

まずは、判例を元に、更新料を支払うべきケースと、支払わなくても良いケースについて見てまいりましょう。

更新料を支払わなくても良い場合

  • 更新料の支払いに関して合意が無い
  • 更新料の支払いが契約書に明記されているが、金額が不明

更新料を支払うべき場合

  • 過去に何度か更新料を支払っている場合
  • 更新料の支払いに関して合意している場合
  • 契約書に更新料に関して、明確な金額が分かる記載があるとき

2-2-1.借地の更新料の支払いに関して合意が無い場合

基本的に更新料の支払いに関して、合意が無い場合は更新料を支払う必要はありません。

ただ、契約書に更新料の支払いについて記載が無くても、更新料を何度か払っており、更新料の支払いに合意があったとも思われるような事があった場合、更新料を支払わなければなりません。

また、実務では合意がなくとも地主と借地人が円滑に契約を存続させるため、更新料の授受がされることがあります。

しかし判例では、「法定更新の際に地主の請求があれば、当然に借地人の更新料支払い義務が生ずる商慣習または、事実なる慣習は存在しない(昭和51年10月1日 最判第657号)」「更新料の支払いを賃借人に対して求めることが一般化しているとしても、更新料の支払いが慣行とか事実上の慣習として行われているという事実を認めることは出来ない(平成5年9月8日(東京高判)」という判決が出ており、合意が無い状態での更新料の支払い義務を明確に否定しています。

2-2-2. 更新料の支払いが契約書に明記されていているが、金額が不明の場合

更新料の支払いについて契約書に明記されていても、金額が客観的には明らかでない場合、更新料の支払い義務が無いとされた判例があります。

令和2年7月20日の東京高等裁判所の判決では、契約書面に「相当の更新料」を支払うという記載があったケースについて、裁判所は「相当の更新料」という文言が抽象的で裁判において客観的に更新料の額を算出できないということで、更新料の支払い義務を認めなかった判決がありました。

つまり、「契約更新時に〇〇〇万円の更新料を支払うものとする」「契約更新時には更新時の路線価の7割を借地権価格とし、5%の更新料を支払うものとする」など、誰が見ても明確な形で更新料の額が分かるようになっていないと、更新料の支払いをしなくても良いことがあります。

➤「更新料の支払をする事及び金額の記載がある場合」
 ・更新料の支払を命じられる判例が多い
 ・更新料が支払われなかったために契約解除になった事例あり
「更新料のを過去に支払っておらず、支払いに関して契約書に明記されていない場合」
 ・支払い義務は存在しないという判例が多い

2-3.借地の更新料を支払うべき場合

更新料については支払わなくても良い場合をご説明してまいりましたが、地主さんとの関係を良好にしておきたい場合や、借地の更新拒否などをされてトラブルになりたくない方は支払った方が良いと言えます。

しかし、金銭的な問題から更新料の支払いが出来ない方も居る中で、出来れば支払いたくないと考えている方も多いのではないでしょうか?

更新料に関しては、どんな時も支払う必要が無いとされているわけではなく、判例で更新料の支払わなければいけないと認められたケースもあります。

そこで、更新料を支払うべき場合について解説してまいります。

2ー3-1.過去に何度か更新料を支払っている場合

契約書には更新料の記載が無くても、過去に何度か更新料を支払っているということで、黙示的に合意されているとされた判例(平成28年3月29日(東京地判))もありますので、契約書に更新料の記載が無くても合意があったとみなされる例もあるので注意が必要です。

しかし、単に「過去に更新料を支払ったことがある」程度では、必ずしも支払い義務があるとは認められない事もあるため、更新料を支払ったことはあるけど、これからは支払えない場合は弁護士さんに相談する事をお勧めいたします。

2-3-2.契約書に明らかに更新料の支払い及び金額について明記されている時

契約書に記載されている更新料の支払いについて、金額が記載されていない場合は支払わなくても良い事がありますが、明確な金額や、誰が見ても更新料の料金が明らかな形で記載があった場合、更新料を支払わなくてはなりません。

更新料の金額を決めたのに支払わなかったということで、借地契約を解除された判例もあります。(昭和59年4月20日 最判)

ただ、「合意更新の場合には相場による更新料を支払わなくてはならない」と書いてあるような場合は、法定更新には適用できないとして更新料の支払い義務はないという事になった判例(令和3年3月18日東京高判)もあります。

このような事もあるため、地主さんとしては、契約書に明らかな金額を明記したうえで、法定更新の場合でも更新料〇〇〇万円を支払うものとするという形で明確に示す必要があります。

2-3-3.契約書に更新料の記載が無くても合意している場合

契約書に更新料の記載が無くても、合意更新などによって更新料を決めた場合、更新料を支払うべきと考えられます。

合意をしていても、契約書に記載がなければ裁判になっても更新料は支払わなくても良い事になる可能性はありますが、信頼関係の中で借地契約は成り立っていますので、一度更新料の支払いについて金額面も含めて合意した場合、更新料の支払いをするのが望ましいと言えます。

2-4.借地権の更新料がまとまらず、更新を拒否された場合

更新料の支払いについては、話し合いで解決出来る事が望ましいです。

しかし、話し合いがまとまらずに、更新料の支払い請求だけでなく、地主さんより借地の更新を拒否されてしまうことも良くあります。

このような場合、次のような対策をすることが出来ます。

  • 建物買取請求の訴訟をする
  • 借地非訟で地主の承諾の代わりに裁判所の許可を求める。

2-4ー1. 更新を拒否された場合、建物買取請求も可能

更新料の支払いについて纏まらなかった場合、地主さんから借地権の更新を拒否されることもあります。

このような場合、借地借家法13条により地主に対して建物の買取請求も可能です。

こちらはあくまで建物の買取請求になるので、借地権価格は含まれないとされています。(代わりに場所的利益というものが更地価格の15~40%程度)程度、建物価格とは別に考量されます。

詳しくは下の記事で解説しておりますので、更新が拒否されてしまった場合は参考にしてみてくださいませ。

 建物買取請求についてはこちらで詳しく説明しております

2-4-2.更新を拒否された場合は地主の承諾に代わる許可を裁判所に求めることも可能

更新料がまとまらず、更新を拒否された場合、借地非訟で地主の承諾に代わる許可を裁判所に求めることもできます。

借地非訟とは、借地に基づく簡略化された裁判のようなもので、更新を拒否された場合などのよくあるケースについては、裁判ではなく借地非訟による申し立てが出来ます。

借地の使用を継続したい場合は建物買取請求よりも、こちらを利用するのが一般的です。

 借地非訟で地主の承諾に代わる裁判所の許可を得たい場合はこちらから
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3.借地権の更新料の相場は幾ら?

更新料については、支払うべき場合と、支払わなくても良い場合があることは分かりましたが、更新料を支払うにしても幾らが妥当か分からない方も多いかと思います。
そこで、次に気になる更新料の相場についてご説明してまいります。

3-1. 借地権の更新料相場

更新料の相場というのは裁判でも基準が無く、一般的には住宅の場合、借地権価格の5%、更地価格の3%程度であり、商業地の場合は借地権価格の10%程度、更地価格の7%程度になります。

ちなみに、増改築承諾や譲渡承諾の場合、裁判所が決めるため承諾料の算定基準がありますが、更新料の場合裁判所の算定基準はありません。

住宅利用商業利用
借地権価格を基準5%10%
更地価格を基準3%7%
更新料の相場

3-2.借地権の更新料相場の計算方法は?

更新料の相場については、住宅の場合借地権価格の5%程度とご説明しましたが、借地権価格については、国税庁のホームページにある路線価図で調べることができます。

路線価とは、その道路に面する1㎡辺りの価格、路線価の横に記載されているAからGのアルファベットは借地権割合になります。

そのうえで、更新料の相場は以下の計算式で計算できます。

更新料の相場=路線価×土地面積×借地権割合×5%

例えば図のような路線価で290Dと記載された道路については、290が1㎡29万円で、Dが借地権割合60%という意味なので、100㎡の土地に面している場合、以下の計算で更新料を計算します。

更新料相場=29万円×100㎡×60%×5%
=87万円

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3-3.借地権の更新料支払い時期

更新料の支払いについては、基本的には更新までに支払います。更新前の地代と一緒に支払うことが多く、契約内容によっては、更新後の地代と一緒に支払うこともあります。

更新料を法律的にも支払う義務がなくとも、更新料の支払いに協力することで、譲渡する時や建て替えするときに承諾を得やすくなります。

地主と借地人は信頼関係のものに成り立っているため、相手の主張をかたくなに拒否することはお勧めできません。悪質な地主さんでない限り、更新料の支払いに協力してみるのも良いかもしれません。

4.借地権に高額な更新料を請求されたら?

高額な更新料を請求されたとき、もし契約書で合意をしている訳でなく、過去の更新料の支払い歴から考えても請求が高いとき、更新料の支払いをする必要はありません。

しかし、契約書の特約条項などで高額な更新料を支払うことに合意をした場合、特段の事情もないのに著しく高額な更新料でない場合、契約は無効とはならないと考えられています。

また、例えば「更新料を支払わない場合、借地を更新しない」などの特約は、強行規定(契約当事者の合意があったとしても、優先される規定)といって、当事者間で合意された場合でも、借地権に不利なものとして当然に無効になります。

5.借地の更新料でトラブルになったら?

更新料の支払いに関しては、地主さんと借地人という立場の違いから、トラブルに発展してしまうことが良くあります。

地主さん、借地人さんと「話し合ってみたけど中々話が進まない」「更新料を支払ってほしいけど、支払ってくれない」「高額な更新料を請求されて困っている」等々、実際にトラブルを抱えていて、いっそのこと底地や借地権を売却したいという方もいらっしゃるかと思います。

そのようなときは、当サイトURUHOMEを運営している株式会社ドリームプランニングまでお気軽にご相談ください。

当社は2005年の創業より底地の買取専門業者として東京、神奈川の底地の買取りをしてまいりました
トラブルのある底地・借地も現状のままお買取りをさせて頂いております。

また、トラブルを解消したいという場合は、弁護士法第72条により、当社では交渉事に当たらず、弁護士さんをご紹介させて頂くなどして、問題解決のお手伝いをさせていただくこともあります。

底地や借地の売却、お困りごとなどがございましたら、お気軽にご相談くださいませ。

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