借地を貸しているけど「貸していた借地権が相続放棄された」
借地権を相続したけど「借地を相続したけどお金にならなそうだし、相続放棄したい!」
地主様にとっても、借地人様にとっても借地権の相続放棄は頭の痛い問題です。
そこで今回は当サイト「URUHOME」を運営している底地専門買取業者『ドリームプランニング』の代表が、借地権の相続放棄について解説します。
著者情報
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年より日本全国の底地・借地などの特殊な不動産を専門的に買い取ってまいりました。
どんな底地でも買取りさせて頂きますので、お困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
1.借地権を相続するメリット・デメリット
借地権を相続する際、利用しない借地の為に地代の支払いをしたり、更地にして返す心配をするのは嫌ですよね。
そこで、まず借地権を相続放棄すべきかどうか検討するために、借地権を相続するメリットとデメリットを解説いたします。
1-1.借地権を相続するデメリット
一般的な不動産と違い、借地権は売却や建て替えの際に地主さんの承諾が必要だったり、更新料の支払いなどもあるため、流通が難しい傾向にあります。
他にも相続することによる幾つかのデメリットがあり、相続放棄するかどうかよく考える必要があります。
主なデメリットは以下ようなことがあり、それぞれ詳しく説明します。
- 利用しなくても地代がかかる
- 相続税評価額が高い
- 建物のメンテナンスコストがかかる
- 売却や建て替えの際に地主の承諾と承諾料が必要
1-1-1.利用しなくても地代がかかる
借地権を相続した場合、事故利用するのであれば良いのですが、たとえ利用していない借地でも地代を支払い続けなければなりません。
地代の支払いを怠ると、借地権を解除されてしまいますし、借地権を返還する際は更地にして返す特約などがあるため、とりあえず地代を支払い続けている方も多くいらっしゃいます。
良くご相談を頂くケースでは、「何かに利用するかと思って借地権を相続したけど、結局何も利用せずに親の家財が大量に残っていて片付けも出来ない」という方が多くいらっしゃいます。
残置物撤去費用は4LDKで50万円程度かかりますし、そのままだと住めないのでリフォームなどをする場合はリフォーム代もかかります。
軽い気持ちで相続してしまい、後悔されている方が多いので、相続した場合にどうするのかをきちんと決めるようにしましょう。
1-1-2.相続税評価額が高い
借地は都心部などの場合、借地権の相続税評価の基本となる借地権割合が60%や70%のところが多く、実際に売れる価格に比べて評価額が高くなることが多いです。
例えば、実際に売買するなら3000万円の借地権でも、相続税を計算するうえでの評価は7000万円というように、『実勢価格<相続税評価額』となるのがほとんどで、所有権の一戸建て、土地、マンション、一棟ビルなど、他の不動産に比べて相続に向かないと言えます。
1-1-3.建物のメンテナンスコストがかかる
相続した借地上の建物は戦後まもなく建てられたものも多く、リフォームして住むのにも1000万円位かかることもあります。
賃貸と違い建物を所有する形になるため、定期的な設備の交換や内外装の修繕費用が発生します。
また、建て替えするにも次に紹介する建て替え承諾料がかかります。
1-1-4.売却や建て替えに地主の承諾と承諾料がかかる
借地権は建て替えや売却の際に地主さんの承諾が必要なうえ、承諾を得るために建替え承諾料は更地価格の3~5%、譲渡承諾料は借地権価格の10%程度になることが多いです。
更新の際にも更新料がかかることもあり、定期的にまとまったお金が必要になります。
1-2.借地権を相続するメリット
借地を相続すると色々と面倒なことがあることが分かってきました。次に借地を相続するメリットを説明してまいります。
1-2-1.自己居住や賃貸用に利用できる
借地は立地が良いところが多く、自己居住や賃貸用として利用する場合も、所有するほどの費用負担が無く利用できる、賃貸として第三者に貸すと賃貸不動産として収益を上げることができるなどのメリットがあります。
ただ、自己居住の場合は相続した時で相続人が自宅を保有していることが多く、賃貸する場合は借地の契約に賃貸禁止の特約がある場合は、第三者に賃貸することができないので注意が必要です。
1-2-2.借地権単体でも売却ができる
借地権は、底地と一緒でなくても単体で売却できるため、売却すればまとまった資産を得ることができます。
ただ、借地は立地が良くないと売却が難しく、立地の良い場所でも地主が譲渡承諾をしなければ売却できません。
また、地主が譲渡承諾を拒否しても、裁判所が許可をすれば第三者に売却できますが(借地借家法19条)裁判所の許可によって売却した場合は借地権の購入者がローンを利用できないこともあり、安い金額になってしまうことがあります。
※実務では、借地権を取得した第三者がローンを組むには、借地上の建物に抵当権設定をする旨の地主の念書が必要ですが、裁判では地主に念書に署名、捺印させることは出来ないため、悪質な地主は借地を安く取得するために譲渡承諾を悪意を持って拒否することもあります。
2.借地権を相続放棄すべきか?
- 2-1.相続放棄とは?
- 2-2.借地権を相続放棄した方が良い場合
2-1.相続放棄とは?
相続放棄とは、相続する財産の全てを放棄することです。
相続放棄をすると、不動産や株式、預貯金などのプラスの財産と、借り入れなどの全ての財産を相続しないことになります。
相続財産すべてを放棄するという事なので、例えば借地権のみ相続放棄するというようなことは出来ません。
そのため、借地権を相続放棄する方は、プラスの財産があったとしても借地権を相続放棄するメリットがあるかどうかを慎重に考える必要があります。
また、相続開始を知った時から3か月以内でないと相続放棄の申述が出来ないため、早急な判断が必要になります。
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
民法915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)民法 | e-Gov法令検索
2-2.借地権を相続放棄した方が良い場合
借地権を相続放棄するのはいくつかのケースが考えられます。
どのような場合に相続放棄した方が良いか見ていきましょう。
2-2-1.借地権の評価が高いが借地権の譲渡承諾を取得できない場合
借地権を相続して困っている方の多くは、高い相続税を支払ったが、地主が第三者に譲渡することを承諾せず、地代のみ支払い続けているというケースです。
下記のような条件が全てそろっていた場合、相続放棄をすることをお勧めいたします。
- 地主が譲渡承諾をしない
- 相続財産が他にない、もしくは負債の方が多い
- 借地権を利用する予定がない
被相続人に他に財産が無い、もしくは負債の方が多かったとしても、借地権を売却することで借金を返すことができ、さらに残るものがあるのであれば相続するメリットはあります。
しかし、地主が譲渡承諾をしない場合、借地権を売却することも出来ず、裁判所に申し立てて売却はできるものの、譲渡承諾を得て売却するのに比べ著しく低い金額になります。
2-2-2.借地権に売買・賃貸の需要が無く、建物も朽廃している場合
需要が無いエリアでの借地権は、そもそも売却することが難しく、借地契約を終了させるためには建物を解体して地主に返還しなければなりません。
被相続人に解体費を捻出してもプラスになる財産があれば相続する価値がありますが、そこまでの財産が残されていることは稀です。
また、建物が朽廃している場合で、建物が壊れて第三者にけがをさせて場合、無過失でも損害賠償請求をされることがあります。
さらに改正空家法(空き家等対策の推進に関する特別措置法)によって管理不全の空き家に対して、市町村長から指導や勧告、場合によっては行政代執行がなされ解体費用を請求されることもあります。
2-2-3.地主が借地権の買取や、底地と借地の同時売却を検討していない場合
時々、売買や賃貸の需要があまりなくとも、地主さんが自己利用のため、借地権の買い戻しを検討していることもあります。
また、借地を売却するタイミングで、地主さんもちょうど売却を考えていたというケースも時々あります。
地主さんが借地権の買取や、底地と借地を同時売買することによって利益が出そうであれば、相続放棄をする必要はないかと思います。
しかし、需要が無いエリアの借地の場合、地主さんが借地権の買取や底地と借地の同時売却を検討出来ないのであれば、相続放棄をお勧めいたします。
3.借地権を相続放棄する時の注意点
借地権を相続放棄した方が良い場合に当てはまっても、本当に相続放棄してよいか、次にご紹介するリスクも考えたうえで相続放棄を検討しましょう。
- 3-1.他の相続人とトラブルになる可能性がある
- 3-2.相続財産管理人などの選任を行う必要がある
- 3-3.他の財産も相続出来ない
- 3-4.建物を解体したり、他の預金などに手を付けてはならない
- 3-5.相続放棄は3か月以内にしなければならない
3-1.他の相続人とトラブルになる可能性がある
令和5年4月1日に施行された改正民法では借地を占有していて相続放棄をした場合、次の順位の相続人か相続財産清算人が選任されるまで借地権を保存(滅失や損傷させないこと)しなければならないとされており、占有していなければ保存義務はないと考えられます。
ただ、建物が壊れて第三者に実害があった場合、その第三者に対して損害賠償責任を負う可能性は否定できないため、他の相続人に断りなく相続放棄した場合、他の相続人が損害賠償請求を受ける可能性があります。
3-2.相続財産管理人などの選任を行う必要がある
完全に管理義務を逃れるには、次の順位の相続人に管理を引き継ぐか、相続財産管理人を選任して借地権を管理してもらう必要があります。
前述しているように、借地権を相続放棄しただけだと、次の順位の相続人に管理義務が引き継がれるだけで、相続財産管理人を選任しなければ建物が倒壊などして第三者に危害があった場合、損害賠償請求を受ける可能性があります。
ちなみに、相続財産の管理制度が令和5年4月1日の民法改正によって、今までの土地建物やその他の財産の管理までに及んでいたのに対し、改正後は土地建物の管理だけになったのですが、それでも相続財産管理人を選任する際は予納金を裁判所に納める必要があります。
3-3.他の財産も相続出来ない
相続放棄をすると、借地権以外の預金や他の不動産も一切相続できません。
借地権だけ相続放棄することは出来ないので注意が必要です。
3-4.建物を解体したり、他の預金などに手を付けてはならない
相続放棄をする場合、借地上の建物を解体してはいけません。
解体すると単純承認が成立することにより相続放棄が出来なくなります。
また、預金や株式など、被相続人が保有していた他の財産に手を付けてもいけません。
3-5.相続放棄は3か月以内にしなければならない
相続放棄には「熟慮期間」として、「自己の為に相続の開始があったことを知った時から3か月以内」として決められており、この期限内に相続放棄申述書を提出し、相続放棄の申立てをする必要があります。
例えば、他の相続人が相続放棄をして自分に相続権が回ってきた場合は、自分のところに相続権がきたことを知ってから3か月以内ということになります。
そして、この3か月以内に何もしないままでいると、相続したことになるので、相続が発生したと知ったら直ぐに放棄すべきかどうか決めなければなりません。
4.借地権を相続放棄されたら、地主はどうする?
今まで土地を貸していた借地人が亡くなってしまった場合、借地権は相続人に相続されるため、相続人から地代を受け取ることができます。
しかし、相続人が相続放棄した場合、地代が支払われない上に借地上の建物も管理されないまま放置されてしまいます。
このような場合、地主としてはどのような対応をすれば良いのでしょう?
4-1.法定相続人が居れば、その人が相続します
借地権は相続放棄されたら、他に法定相続人がいればその人が相続することになるので、建物の管理や地代の支払いに関しては、法定相続人に求めることになります。
法定相続人になれるのは配偶者と血族で、同じ順位の人が何人かいる場合には全員が対象ですが、先の順位の人が1人でもいる場合には後の順位の人は相続人にはなりません。
第1順位となるのは子どもで、もし子どもがすでに亡くなっている場合には孫にあたる人が相続人です。
第2順位となるのは親、第3順位となるのが兄弟姉妹で、亡くなっている兄弟姉妹に子どもがいれば相続人になります。
借地権が相続放棄されたときは、これらの人たちをたどって当たっていくことになります。
4-2.誰も相続しなかった場合、相続管財人を選任
相続放棄した人以外に相続人がいなかったり、すべての人が放棄したりする場合には、相続財産管理人を家庭裁判所に選任してもらいます。
地主は借地権を相続放棄された場合、利害関係人となりますので、相続財産管理人の選任を申し立てすることができます。
相続財産管理人は相続人の捜索や、相続財産の管理、換金するなどして清算し、最終的に財産を国庫に帰属させることを職務としています。借地権が相続放棄された場合、家庭裁判所の許可を得て任意売却や競売にかけて現金に換え、清算することになります。
4-3.地主が相続管財人の選任の申し立てをするには
地主が相続財産管理人の選任を申し立てをする際には、亡くなった人の最後の住所があった地域の家庭裁判所に申し立てをおこないます。
申し立てをするのには必要な費用がかかる点に注意が必要です。
相続財産管理人の報酬や財産管理費用に充てられるお金が予納金として100万円程度が必要となるほか、800円の収入印紙代と連絡に使用するための郵便切手代、4000円程度の官報公告費などがかかります。
ただし予納金から必要な費用を差し引いた額は、申立人に返還されることとなります。
弁護士に依頼して手続きをしてもらう場合には、弁護士の費用も必要となる点もあらかじめ押さえておきたいものです。
5.借地権の相続放棄で困ったらURUHOME
借地人さんはを相続放棄したとしても、建物が倒壊などして第三者に危害を加えたときは所有者責任を問われる可能性があることが分かってきました。
また、地主さんも相続放棄された借地は相続財産管理人を申し立てるなど、手続きが大変なことも分かったと思います。
そこで、相続放棄を検討している借地も、借地を相続放棄をされて困っている底地を売却するというのも一つの方法です。
借地権の相続放棄で困った借地、底地については、当サイトURUHOMEを運営しているドリームプランニングにお気軽にご相談くださいませ。
当社は2005年の創業より底地や借地の買取専門業者として全国の底地・借地の買取りをしてまいりました。
複雑な案件、トラブルを抱えた底地・借地も積極的に買取しておりますので、お気軽にご連絡ください。