土地の賃貸借契約を結ぶとき、地主さんは出来るだけ地代を上げたいと思います。
一方、借地人さんは出来るだけ地代を下げてほしいと考えます。
地代をどうしても値上げしたいとき、地主さんはどうしたら良いのでしょう?
また、地代の値上げが正当でないと考える借地人さんはどうしたら良いでしょう?
今回は、「地代の値上げ」のみに焦点をあて、それぞれの立場から地代を値上げしたいときと地代を値上げされそうなときの対策を底地買取業者の社長が解説します。
著者情報
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年より日本全国の借地などの特殊な不動産を専門的に買い取ってまいりました。
どんな借地でも買取りさせて頂きますので、お困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
1.地代の値上げ「相場はいくら?」
地代の値上げの話の前に、地代が適正かどうか知るために、適正な地代の計算方法を4つご紹介いたします。
1-1.固定資産税・都市計画税を元に計算する方法
旧法借地や普通借地権の地代の計算で、最も良く用いられるのは、固定資産税・都市計画税の合計額に、2~8倍を乗算して地代を算出する方法です。
固定資産税・都市計画税の税額は、地主さんの場合は毎年送られてくる固定資産税、都市計画税の納税通知書に記載があります。
しかし、借地人さんの場合は土地の納税通知書は届きませんので、固定資産税の路線価を元におおよその固定資産税の税額を計算します。
固定資産税路線価は、公示価格の70%程度の水準で決められ、市町村で運営している情報サイトなどの他、市町村の税事務所などで確認できます。
路線価というと、一般的には相続税の路線価を指すことが多く、公示価格の80%程度が水準となっており、こちらは国税庁のホームページで閲覧できます。
例えば、下記のように商業地に前面道路の路線価が646000円で土地面積が100㎡の土地があった場合、評価額は 646000円×100㎡=64,600,000円となります。
※実際は間口補正や奥行き補正などがあり、価格が上下します。
また、固定資産税・都市計画税の計算について、固定資産税・都市計画税の基準となる課税標準額や税率及び固定資産税・都市計画税の税額は以下の通りになります。
不動産評価額 | 小規模住宅用地の特例 (200㎡以下の場合) | 課税標準 | 税率 | 税額 | |
固定資産税 | 64,600,000 | 評価額の1/6 | 10,766,666 | 1.4% | 150,733円 |
都市計画税 | 64,600,000 | 評価額の1/3 | 21,533,333 | 0.3% | 64,599円 |
つまり、固定資産税・都市計画税の税額は合計で215,332円となります。
また、住宅地と商業地で地代が以下のように異なります。
➤ 住宅地の地代:固定資産税・都市計画税の3~5倍
➤ 商業地の地代:固定資産税・都市計画税の5~8倍
対象地は商業地かつ横浜の中心地なので、固定資産税・都市計画税の8倍とすると
地代は215,332×8=1,722,656円/年となります。
1-2.更地価格を元に計算する方法
定期借地権の場合は、更地価格を元に地代を計算する方法が用いられることがあります。更地価格は不動産鑑定士が算出することもあれば、相続税路線価を元に計算することもあります。
相続税路線価は国税庁のホームページから、路線価図・評価倍率表で確認することができます。
図②の相続税路線価を元に考えると、先ほどと同じ地点の相続税路線価は770Bと書いてあり、これは77万円/㎡、借地権割合80%を意味しております。
もし上記と同じように対象地が100㎡だった場合、相続税路線価は不動産の更地価格の80%程度であることから、770000円÷0.8×100㎡=96,250,000が更地価格となります。
➤ 住宅地地代:更地価格×2~3%
➤ 商業地地代:更地価格×4~5%
この場合、地代の相場は
96,250,000円×0.05=4,812,500円/年
固定資産税を元に計算するのと、更地価格を元に計算するのでは大きく違うことが分かります。
旧法借地権や普通借地権の場合、更新料や譲渡承諾料があるため、地代は安めに設定されますが、定期借地権の場合は更新などが無いため、地代が高めに設定されます。
1-3.期待利回りを元に計算する方法
もう一つの地代の算出方法は、土地を運用した場合の期待利回りを基準地代を計算する方法があります。
この場合の計算式は以下の通りです。
地代=土地の価格×期待利回り+必要経費
この計算方法の場合、一般的には不動産鑑定士に依頼します。
2.借地権の地代はどうしたら値上げできるか?
借地の地代の値上げは、地代が不相応だという正当な理由が無いとできません。
不当な地代の値上げをするようなことはあってはならないのですが、戦後まもなくに交わされた土地賃貸借契約の地代でも一切値上げさせないと主張する借地人さんも時々お見掛けいたします。
そこで今回、適正でない地代を適正に値上げする方法について解説してまいります。
- 2-1.地代等の上限に制約はありません
- 2-2.地代を値上げするには地代が不相当になっている事が必要
- 2-3.地代等増減額請求は形成権
- 2-4.協議がまとまらなければ訴えを提起する事になります
- 2-5.話し合いでの解決が一番望ましい
2-1.地代等の条件に制約はありません
以前は地代家賃統制令によって、建物所有目的の土地賃貸借、地上権の賃料・地代について、昭和25年までに建築を始めた30坪以下の住宅及び敷地について、賃料・地代の上限がありましたが、昭和61年12月31日に廃止され、現在では地代等の上限に制約はありません。
2-2.地代を増減額するには、地代等が不相当になっている事が必要です。
地主が地代を値上げするには、地代等が不相当になっている事が必要で、不相当と言える条件は3つあるとされています。
- 土地の租税公課の上昇が発生していること
- 地価や物価の上昇が見られること
- 周辺の土地地代と比べ不相当であること
以上三つのうち、どれか一つでも該当すれば地代の値上げ理由となります。
もっとも判断要素はそれだけに限られず、”その他の事情”も考慮され不相当であるかどうかが判断されます。
2-3.地代等増減額請求は形成権
地代等増減額請求権は形成権です。
その為、内容証明郵便で増減額の意思表示が相手方に到達すれば、地代等が相当額まで増額あるいは減額するという効果を生じます。
ただ、あくまで理論上の話であるため、闇雲に賃料増額をするのは権利濫用になりかねない為お勧めできません。
賃料増減の効果は、将来に向かって生じます。過去にさかのぼって増減額請求する事は出来ません。
2-4.協議がまとまらなければ、訴えを提起する事になります
地代の増減額請求については、少額である事が多いため、訴訟に持ち込むことはあまり適切ではありません。
その為、地代等増減請求について提起する場合、民事調停法により、訴えの提起に先立ち調停の申し立てをしなければならないとされております。(調停前置主義といいます)
調停が成立しない場合訴訟となり、増額または減額が正当であったのか、相当な地代がいくらか裁判所が判断する事になります。
2-5.できれば話し合いでの解決が望ましい
ここまで、地代の値上げの手順をご説明してまいりましたが、調停や裁判で地代を値上げするのは大変な労力が必要ですし、うまくいくとも限りません。
そこで、地代値上げ交渉のポイントをご説明します。
2-5-1.地代が不相当である根拠を説明する
まずは地代値上げの根拠である「地代が不相当である理由」を説明する必要があります。
私の知る地主さんで根拠なく地代を4倍値上げした方がいらっしゃいましたが、こういったことをすると悪い評判がたつのであまりお勧めできません。
地代の根拠として、不動産鑑定士など第三者の専門家の鑑定評価書などがあると良いでしょう。
2-5-2.妥協案を用意しておく
借地人さんからすると、地代の値上げをすぐに容認する訳にはいかず、自分の意見だけ押し通すのは難しいものがあります。そこで、以下のような妥協案を用意しておく必要があります。
- 地代の値上げを少なくする
- 数回に分けて地代の値上げをする
- 更新料などと合わせて交渉する
適正な地代にするのが目的なので、地代が適正であることを示したうえで、それでもご納得いただけない場合、値上げ幅を少なくしたり、更新料などでいただく形を考えましょう。
2-5-3.法的措置を検討している旨をお伝えする
適正な地代にすることをご納得いただけない場合、まずは調停や訴訟などの法的措置を講じざるを得ない旨をお伝えします。
法的手段をとった場合、どんなに自分が適正な地代だと思っていても、訴訟では思った判決が出ないこともあります。
また、時間や金銭の負担も大きいため、最終的な手段と考えた方が良いでしょう。
しかし、誰がどう考えても適正ではない地代で、値上げせざるを得ない場合、やむを得ず法的手段を取るのだということを誠心誠意伝えれば、分かってくれることもあります。
3.地代の値上げを拒否したい場合、どうすれば良いか?
地代の値上げは、2項でご説明したように地代が不相応であるという正当な理由が無いとできません。
しかし地主さんの中には、借地の更新の際などに明らかに法外な値上げを迫り、「受け入れなければ更新しない」という悪質な地主さんもいらっしゃいます。
適正な地代であれば値上げを受け入れた方が良いのですが、話し合いも進まず、どうしても地代の値上げに納得できない場合は以下にご紹介する方法を取られてみることをお勧めいたします。
3-1.地代の値上げに納得できない場合、相当と思う地代を支払えば大丈夫です。
借主にとっては、そういった条件があったとしても、それを納得しないケースも多く、その場合、借主は地代の値上げを拒否することもできます。
その場合には借主が地代の値上げを拒否して、今まで通りにでも、相当と思う地代を支払えば良いです。
その結果、話し合いも調停も上手くいかず裁判になった場合、借地人が支払った地代が相当と認められれば、その地代が最終的な地代として確定します。
しかし、借地人が支払った地代が裁判所が相当と判断した地代より少なかった場合、その不足額及び、不足額に年1割の支払利息を支払う必要があります。(借地借家法第11条2項)
2 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
借地借家法第十一条2(借地権の対抗力)借地借家法 | e-Gov法令検索
そのため、借地人さんが支払った地代が相当でないと判断された場合、裁判費用や不足分地代、支払い利息まで払う必要があるので、相当である地代がいくらか第三者である不動産鑑定士に鑑定を依頼することをお勧めします。
3-2.地主が地代の受け取りを拒否した場合は供託する
今までの地代を、貸主である地主が地代受取拒否した場合、地代払わないと契約解除される懸念が生じますので、それを回避する目的で地代を供託する必要があります。
地代の供託はその地域を管轄する裁判所が業務の一環として供託所も担っております。
借主は地代の供託で契約継続の意思表示をすることになるので、それにより契約解除されるのを防ぐことが可能です。
3-3.供託の手続きについて
借地人は地主からの賃料の値上げ要求等を不当とする場合に、相当と認める額の賃料を提供し、その受領を拒否されたときは、相当と認める額の賃料を「受領拒否」を供託原因とする弁済供託をすることにより、賃料を支払っていた証拠となる為、賃料未払いによる契約解除を防げます。
供託をするためには、地主が地代の受領を拒否していることが条件になります。拒否されていない場合は供託は出来ないので注意しましょう。
また、供託をする場合には、地代・家賃弁済供託用の供託書(供託所で無料配布)に必要事項(所在、地番、支払い日、賃料等)を記載し,これに地代(供託金)を添えて,賃貸借契約上の支払地(債務の履行地)に所在する供託所において供託の手続を行う必要があります。
地代の増減額については、話し合いで解決することがベストです。出来る限り不要なトラブルは避け、円満に解決するようにしましょう。話合いの前に専門の不動産屋や弁護士に相談するのも良いかと思いますので、ご検討なさってくださいませ。
4.地代の値上げを要求されたら?
「地代の値上げをしたけどさせてくれない」「地代の値上げを要求されて困っている」という場合、大事なのは現在の地代が適正なのかという事を突き止める事です。
また、お互いに不当な請求をしたり、されたりしていないかを専門家に相談する必要があります。
地代が適正かどうかを聞くには、不動産鑑定士に相談依頼をすることが大事ですが、URUHOMEには不動産鑑定士もおり、現在の地代が適正かお答えする事が可能です。
また、不当な請求をされていないか知るには、URUHOMEを運営するドリームプランニングの提携弁護士がおりますので、ご紹介させて頂くことが可能です。
5.地代の値上げトラブルで困ったら
底地、借地には地代の値上げなど様々なトラブルがつきものです。
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5-1.底地を高値で売却するには【東京・神奈川編】
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5-2.底地・借地の相談・売却【日本全国編】
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