「借地権を返してほしい」と考える地主様。
「借地権を返還したい」と考える借地人様にとって、どうすれば良いか気になる所です。
地主様が借地を返してもらえるか、借地人様が借地を更地にして返すべきかどうかは、相手がどのような主張をしているかによって全く異なります。
そこで当サイトURUHOMEを運営する底地買取専門「ドリームプランニング」の社長が、借地を返してもらう方法、返す方法を解説します。
著者情報
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年より日本全国の借地などの特殊な不動産を専門的に買い取ってまいりました。
どんな借地でも買取りさせて頂きますので、お困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
1.【地主編】借地権を返還してもらうにはどうしたら良い?
1-1.地主と借地人、どちらが返還を申し出るか?
「地主さんから借地権を返還してほしい」場合と、「借地人さんから借地権を返還したい」という場合で扱いが異なります。
基本的に地主さんから借地権を返還してほしい場合、次の項で述べるように更新時に異議を述べて正当事由が認められる必要があります。
一方、借地人さんが借地を返還したい場合は、更地にして返還すれば良いことになっております。
しかし、都心部では借地権自体に価値があり、第三者へ売却することも可能です。
そのため、更地にして返還を求めるのは難しく、借地人が返還か売却したいという申し出に対し、地主さんは買い取るか、第三者への譲渡承諾をするかという決断をする必要があります。
第三者への譲渡承諾を拒否することは出来ますが、その場合に地主の承諾に代わる許可を裁判所に申し立てられる可能性があります。
時々嫌がらせの為に譲渡承諾を拒否して、色々な借地人さんとトラブルになっている地主さんをお見掛けしますが、こうした争いはあまり意味がないため、借地人さんが借地を返還したいと言われた場合は出来るだけ話し合いで解決するようにしましょう。
1-2.地主が借地権を返還してほしい場合、正当事由が必要
借地権を返してもらうには、借地の更新に対して異議を述べ正当事由が認められなければなりません。
借地権とは、建物を建てるため他人から土地を借りる権利となりますが、1921年に定められた旧借地法と、1992年に施行された借地借家法が存在し、どちらが適用されるのか確認しておく必要があります。
1992年7月31日以前に締結し、更新が続いている場合は、旧借地法が該当することになります。
正当事由に関しては、旧借地法では、土地所有者が土地を使用することを必要としていることのみ示されているだけでした(旧借地法4条1項)
しかし、裁判所では判決を出す際に多くの要因を考慮して正当事由を判断するという判例理論が築き上げられると、借地借家法の制定の際には、それまでの判例法理が類型化され明文化されることになりました。
明文化された借地借家法では、正当事由として「借地人土地利用の必要性」「借地人の賃料や権利金・更新料等の支払い状況」「土地の利用状況」「相当額の立ち退き料の給付」など要因を考慮した上で、相対的に必要性が高いのはどちらかを判断する方法によって判定されます。
前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない
2.【地主編】借地権を返してもらう為の正当事由は?
地主から借地を返してもらうのは簡単ではありません。
基本的には借地契約期間中に借地を返還してもらうことは出来ず、借地契約の更新時に更新を拒絶することで返還してもらうことになります。
しかし、借地を返還してもらうにも正当事由が必要です。
借地借家法6条の条文を読むと「地主と借地権者の双方が、それぞれ土地を必要とする事情」を比較したうえ、「従来の経緯や土地の利用状況」や「立退料の給付」によって正当事由があるかどうか判断されると考えられますが、一番大事なのは「地主か借地人のどちらが土地を必要としているか」です。
「従来の経緯や土地の利用状況」「立ち退き料の給付」は「地主が借地を必要と認められることを前提」とした、補完的な理由として考慮されます。
あくまで補完的な理由なので、立ち退き料を給付すれば借地を返還してもらえるという事ではありません。
それでは、次に正当事由について判例などを元に具体的に解説いたします。
- 2-1.賃貸人【地主】が土地を使用が必要な事情
- 2-2.賃借人【借地人】が土地の使用を必要とする事情
- 2-3.借地に関する従前の経過
- 2-4.土地の利用状況
- 2-5.立退料の給付
2-1.賃貸人【地主】が土地を必要とする事情
地主が自己居住の為に建物を建てる。土地上の建物を事業・営業に利用する事等、土地を必要とする事情に具体性や合理性があるかが判断されます。
ただ、地主さんは基本的に不動産を複数所有していることが多く、借地人の方が借地を必要としているケースがほとんどです。
地主さんが土地を必要としていると認められたケースとしては、地主さんが狭い借地の店舗兼住宅で事業をしており、借地人さんが複数不動産を所有しているケースで、地主さんが借地を返還してもらって2世帯で店舗兼住宅を建てるという具体的な計画がある場合などです。(東京地判平成3年6月20日)
また、土地の有効利用をして、再開発によって高層化を図る事等、立ち退き料の給付によって認められた判例も見られます(東京地判平成25.3.14)
2-2.借地人が土地を必要とする事情
借地人が自己の居住の為の建物を利用したり、土地上の建物を事業、営業に利用している事等が賃借人が土地の使用を必要とする条件と考えられます。
判例では、借地上の土地で居酒屋を営む借地人が、「異なる場所で同じ賃料で同様に居酒屋を経営する事は可能とは認めがたい」という理由で正当事由が否定されるなど(平成27.9.29)、借地人が借地を必要とすると認められる場合、地主が借地権の更新を拒絶できません。
前述したように、地主は他にも不動産を保有していることが多く、地主さん自身がどうしても借地が必要だと認められない限り、現に利用している借地人より借地を返還してもらうのは難しいと言えます。
2-3.借地に関する従前の経過
借地契約成立から存続期間満了までの間に当事者に生じた事情など、更新料、権利金の授受、賃貸借契約期間、地代の支払い状況、契約期間中に違約に当たる事が無かったかなども正当事由に含まれます。
例えば更新料が支払われている事を理由に正当事由が否定された事例(東京地判平成20.4.25)など、借地人が負う義務を全うした場合は正当事由が否定される事があり、地代の不払いなどがあると、正当事由が肯定される傾向にあります。
➤ 借地の返還が認められなかった例
更新料、増改築の承諾料有(東京地判S63.5.31)
無断で増改築、再建築
➤ 借地の返還が認められた例
権利金の授受、更新料などが無い(東京地判S63.5.30)
2-4.土地の利用状況
あくまで正当事由の補完的な要素として考慮されるのですが、土地の利用状況として判断される要素には以下のようなものがあります。
- 建物の存否
- 借地上建物の種類・用途(居住用か事業用かなど)
- 建物の構造・規模(堅固・非堅固など)
- 老朽化の程度
- 法令違反の有無
- 借地権者の建物の利用状況(自己居住か賃貸かなど)
2-5.立退料の提供
正当事由は様々な要因を考慮して判断されますが、賃貸借契約を終了させるまでには十分でないというケースの場合、正当事由の不足分を補強するのが立退料です。
あくまで正当事由を補完するものなので、地主が借地を必要と認められない限り、いくら高額な立ち退き料を支払ったとしても更新拒絶が正当事由として認められない事もあります。
立退料といっても金銭でなくともかまいません。代替地の提供などもこれに含まれます。
また、地主が申し出た立退料の金額を増額して正当事由も認めることもあります(東京地判平成8.5.20)
3.立退料の相場は居住用と事業用で異なる?
立退料の相場は決まったものが無く、個別要因でかなり変わってまいります。
多くの場合は借地権割合から借地権価格を計算し、それに対して何割かを保証します。
借地権価格=保証金額という専門家もおりますが、前項でご説明した正当事由を考慮し算定します。
つまり、正当事由がどの位あるかによって、立ち退き料は変わってくるのです。
A.事業用の場合
事業用の場合、借地権に対する補償料と別に、以下の項目も立退料として算定される要因となります。
- 営業休止期間中の補償
- 移転に係る敷金、保証金などの補償
- 営業場所が変わる事による固定客減少に対する補償
この場合の明け渡し料は以下のような計算になります。
➤ 明け渡し料 =借地権価格×(1-正当事由充足割合+各種補償金
B. 居住用の場合
居住用に関しても借地権に対する補償とは別に、下記の項目も立退料として算定されます。
- 移転に係る敷金、礼金などの補償
- 引っ越し費用
➤ 明け渡し料 =借地権価格×(1-正当事由充足割合)+引っ越し費用など
借地上の建物の建て替えの際は地主様と借地人様の間でトラブルになる事が多く、専門の不動産業者や弁護士に事前に相談する事をお勧めいたします。
4.【借地人編】借地権を返還するには?
借地人さんとしては、利用しなくなった借地を地主に買い取ってほしいと思うこともあるかと思います。
ですが、地主としては、利用しなくなった借地権を買い戻せば所有権になるのですが、そもそも借地権に買い戻すほどの価値が無く、賃貸していた方が得と考える場合、更地にして返してほしいと思うのが当たり前です。
そこで、ここでは「利用しなくなった借地」の返還方法についてご紹介いたします。
- 4-1.更地にして返還する
- 4-2.建物買取請求権を行使する
- 4-3.建物買取請求が行使できない場合
4-1.更地にして返還する
地主が借地の返還を望んでいれば、借地権の返還と引き換えに立ち退き料などを支払いを受けて借地権の返還をすることが可能ですが、地主が借地の返還を望んでいない場合、最も望ましいのは更地にして返還することです。
借地としての価値が無いような立地の場合、地主は借地のまま貸していることを望みます。
もし借地人さんが利用しなくなったとしても、第三者に売却するなどして借地契約を存続してほしいと望むケースが多いのです。
価値がない借地には買い手もつかないため、借地人としてはとにかく地主に借地権を買ってほしいと思う方もいらっしゃいます。
しかし、地主としては価値のない不要な借地権であれば、建物を解体して返してほしいと望まれることがほとんどなのです。
4-2.建物買取請求権を行使する
そこで良く出てくるのが「建物買取請求権」を行使するという方法です。
これは借地契約が満了したのにもかかわらず、更新が無い場合に発生する権利(借地借家法第13条第1項)です。
建物買取請求権には、建物代金の他に場所的利益なるものが15~40%ほど加算されるのが判例では一般的(最判昭和35年12月20日)です。
建物買取請求では借地権までは買取請求の対象にはならないのですが、建物が存在することの価値のようなものも買取請求の価格算定の要素になると考えられているのです。
そして、「建物買取請求権」は形成権とされていて、借地人が買取請求をすれば、時価による売買契約が成立したのと同一の法律効果が生ずるとされています。(大判昭和7年1月26日)
4-3.建物買取請求が行使できない場合
建物買取請求権が行使できるのであれば、更新したくない借地に関しては、解体費用を負担するのももったいないので、建物買取請求をすれば良いと考える方もいらっしゃいます。
この場合、地主も更新を望んでいなければ建物買取請求ができるのですが、地主が更新を望んでいるならば、建物買取請求は出来ないという学説が有力です。
なぜなら、地主も更新を望んでいても建物買取請求権を利用出来るのであれば、解体費を負担したくない借地人が買取請求権を盾に借地権を地主に押し付けることが出来るようになってしまいます。
しかし、法律の趣旨とは違うので、地主が更新を望んでいれば建物買取請求は出来ないというのが有力な学説となっております。
5.【借地人編】借地権を返還する手順
5-1.借地返還方法の交渉
借地を返還する前に、更地にして返還するか、建物買取請求をするか話し合います。
借地人さんとしては、更地にして返還するよりは建物買取請求で地主さんに買い取ってほしいと思うかもしれません。
しかし、地主が更新を望んでいる場合、建物買取請求権を行使できないことがあるので注意が必要です。
また、買取請求を行使できるのは借地契約の期間満了の時に限りますので、契約期間中に建物買取請求をすることも出来ません。(この場合は地主さん次第ということになります)
借地人さんは借地の利用を続けたいが、地主さんが借地の返還を望んでいる場合、立ち退き料の給付を受けることも可能です。
5-2.建物解体・建物買取請求
更地にして返還する場合、解体業者に依頼して建物を解体します。
また、建物買取請求で建物を買い取ってもらう場合、内容証明郵便などで地主さんに建物買取請求をしますが、金額的にまとまらない場合は訴訟にて争う形になります。
参照:借地権は売却可能!売却を成功に導く地主への交渉術・流れを徹底解説 (century21-sell.jp)
5-3.借地の返還
更地にして返還する場合、建物解体後に建物の滅失登記をして、借地を返還します。
また、建物買取請求の場合は、建物引き渡し条件を決めたうえで、建物所有権の移転を代金の支払いを同時に行います。
6.借地の返還で困ったら?
借地権の返還で「更地にするかどうかで揉めている」「建物買取請求で揉めている」など、お困りのことがあり底地や借地の売却を考えているようでしたら、当サイトURUHOMEを運営する”株式会社ドリームプランニング”までこちらからご連絡くださいませ。
ドリームプランニングは底地専門の買取業者として2005年に誕生し、以来底地買取の専門業者として活動してまいりました。
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また、底地は東京・神奈川・千葉・埼玉の一都三県の他にも、大阪や京都でも買い取り実績がございますので、底地、借地のことでお困りでしたら、お気軽にご相談くださいませ。
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