売却も活用も難しいため、不動産取引市場でも敬遠されがちな市街化調整区域。
相続などで手に入れたものの、持て余している方も少なくないのではないでしょうか。
そんな中、市街化調整区域に地区計画が策定されるらしいという話を耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか?
結論から言うと調整区域内に地区計画が策定されると開発行為がしやすくなるため、資産価値が上がります。
ということで、今回は市街化調整区域の不動産買取会社であるドリームプランニングの社長が、調整区域内の地区計画について分かりやすく解説します!
【この記事は、こんな方向けに書いています】
- 市街化調整区域について知りたい方
- 地区計画について知りたい方
- 市街化調整区域の不動産でお悩みの方
著者情報
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年の創業より市街化調整区域の買取業者として日本全国の調整区域の買取をしてまいりました。
大変ありがたい事に日本全国から不動産のご相談を頂いており、5000万円位までの不動産であれば最短2日で買取りさせていただくことも可能です。
ご売却にお困りの不動産がございましたら、こちらからお気軽にご相談くださいませ。
- 市街化調整区域とは
- 地区計画とは
- 地区計画の策定【静岡市の事例1】
- 地区計画が策定されるとどうなる?【静岡市の事例2】
- まとめ(地区計画の策定で市街化調整区域が売却できる?)
- 市街化調整区域の不動産を売却するなら、URUHOMEへご相談を
1.市街化調整区域とは
冒頭で、売却も活用も難しいと言及した市街化調整区域。
よく「調整区域」と短縮されることの多い単語ですが、これはいったい何を意味しているのでしょうか。
市街化調整区域とは都市計画法に定められた区域区分(第7条)の一つで、都市計画法第7条第3項にこう定義されています。
都市計画法 第7条
※参考:都市計画法|e-Gov法令検索
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。
この「市街化を抑制すべき区域」とは、つまり「なるべく開発したくない/してほしくない地域」ということ。
なので行政は、家を建てたり施設を造ったりなどの開発行為について、大きく制限をかけています。
だから自分で活用するのはもちろん、誰かに売却するのも難しいのです。だってそんな土地、あなたもわざわざ買いたくないでしょう?
2.地区計画とは
さて、そんな市街化調整区域に策定される地区計画とは何でしょうか。
地区計画とは都市計画法の第12条の5に定義されているもので、「建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、及び保全するための計画」とのことです。
都市計画法 第12条の5 【全文はこちらをクリック。長文注意】
(地区計画)
第十二条の五 地区計画は、建築物の建築形態、公共施設その他の施設の配置等からみて、一体としてそれぞれの区域の特性にふさわしい態様を備えた良好な環境の各街区を整備し、開発し、及び保全するための計画とし、次の各号のいずれかに該当する土地の区域について定めるものとする。
一 用途地域が定められている土地の区域
二 用途地域が定められていない土地の区域のうち次のいずれかに該当するもの
イ 住宅市街地の開発その他建築物若しくはその敷地の整備に関する事業が行われる、又は行われた土地の区域
ロ 建築物の建築又はその敷地の造成が無秩序に行われ、又は行われると見込まれる一定の土地の区域で、公共施設の整備の状況、土地利用の動向等からみて不良な街区の環境が形成されるおそれがあるもの
ハ 健全な住宅市街地における良好な居住環境その他優れた街区の環境が形成されている土地の区域
2 地区計画については、前条第二項に定めるもののほか、都市計画に、第一号に掲げる事項を定めるものとするとともに、第二号及び第三号に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。
一 次に掲げる施設(以下「地区施設」という。)及び建築物等の整備並びに土地の利用に関する計画(以下「地区整備計画」という。)
イ 主として街区内の居住者等の利用に供される道路、公園その他の政令で定める施設
ロ 街区における防災上必要な機能を確保するための避難施設、避難路、雨水貯留浸透施設(雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能を有する施設であつて、浸水による被害の防止を目的とするものをいう。)その他の政令で定める施設
二 当該地区計画の目標
三 当該区域の整備、開発及び保全に関する方針
3 次に掲げる条件に該当する土地の区域における地区計画については、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進とを図るため、一体的かつ総合的な市街地の再開発又は開発整備を実施すべき区域(以下「再開発等促進区」という。)を都市計画に定めることができる。
一 現に土地の利用状況が著しく変化しつつあり、又は著しく変化することが確実であると見込まれる土地の区域であること。
二 土地の合理的かつ健全な高度利用を図るため、適正な配置及び規模の公共施設を整備する必要がある土地の区域であること。
三 当該区域内の土地の高度利用を図ることが、当該都市の機能の増進に貢献することとなる土地の区域であること。
四 用途地域が定められている土地の区域であること。
4 次に掲げる条件に該当する土地の区域における地区計画については、劇場、店舗、飲食店その他これらに類する用途に供する大規模な建築物(以下「特定大規模建築物」という。)の整備による商業その他の業務の利便の増進を図るため、一体的かつ総合的な市街地の開発整備を実施すべき区域(以下「開発整備促進区」という。)を都市計画に定めることができる。
一 現に土地の利用状況が著しく変化しつつあり、又は著しく変化することが確実であると見込まれる土地の区域であること。
二 特定大規模建築物の整備による商業その他の業務の利便の増進を図るため、適正な配置及び規模の公共施設を整備する必要がある土地の区域であること。
三 当該区域内において特定大規模建築物の整備による商業その他の業務の利便の増進を図ることが、当該都市の機能の増進に貢献することとなる土地の区域であること。
四 第二種住居地域、準住居地域若しくは工業地域が定められている土地の区域又は用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)であること。
5 再開発等促進区又は開発整備促進区を定める地区計画においては、第二項各号に掲げるもののほか、都市計画に、第一号に掲げる事項を定めるものとするとともに、第二号に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。
一 道路、公園その他の政令で定める施設(都市計画施設及び地区施設を除く。)の配置及び規模
二 土地利用に関する基本方針
6 再開発等促進区又は開発整備促進区を都市計画に定める際、当該再開発等促進区又は開発整備促進区について、当面建築物又はその敷地の整備と併せて整備されるべき公共施設の整備に関する事業が行われる見込みがないときその他前項第一号に規定する施設の配置及び規模を定めることができない特別の事情があるときは、当該再開発等促進区又は開発整備促進区について同号に規定する施設の配置及び規模を定めることを要しない。
7 地区整備計画においては、次に掲げる事項(市街化調整区域内において定められる地区整備計画については、建築物の容積率の最低限度、建築物の建築面積の最低限度及び建築物等の高さの最低限度を除く。)を定めることができる。
一 地区施設の配置及び規模
二 建築物等の用途の制限、建築物の容積率の最高限度又は最低限度、建築物の建蔽率の最高限度、建築物の敷地面積又は建築面積の最低限度、建築物の敷地の地盤面の高さの最低限度、壁面の位置の制限、壁面後退区域(壁面の位置の制限として定められた限度の線と敷地境界線との間の土地の区域をいう。以下同じ。)における工作物の設置の制限、建築物等の高さの最高限度又は最低限度、建築物の居室(建築基準法第二条第四号に規定する居室をいう。)の床面の高さの最低限度、建築物等の形態又は色彩その他の意匠の制限、建築物の緑化率(都市緑地法第三十四条第二項に規定する緑化率をいう。)の最低限度その他建築物等に関する事項で政令で定めるもの
三 現に存する樹林地、草地等で良好な居住環境を確保するため必要なものの保全に関する事項(次号に該当するものを除く。)
四 現に存する農地(耕作の目的に供される土地をいう。以下同じ。)で農業の利便の増進と調和した良好な居住環境を確保するため必要なものにおける土地の形質の変更その他の行為の制限に関する事項
五 前各号に掲げるもののほか、土地の利用に関する事項で政令で定めるもの
8 地区計画を都市計画に定める際、当該地区計画の区域の全部又は一部について地区整備計画を定めることができない特別の事情があるときは、当該区域の全部又は一部について地区整備計画を定めることを要しない。この場合において、地区計画の区域の一部について地区整備計画を定めるときは、当該地区計画については、地区整備計画の区域をも都市計画に定めなければならない。
※参考:都市計画法|e-Gov法令検索
……条文を見てもさっぱり分かりませんが、これをかみ砕くと
「建物の建て方や公共施設などの配置をふまえ、一つのまとまった区域として見る」
「その上で、各区域の特性に合った良い環境を整備・開発・保全していく」
ための計画と言えるでしょう。
もっと言えば「現場の状況をふまえ、いい具合に一体感を出していく計画」程度にふんわりとらえておけば大丈夫です。実務上は問題ありません。
では、その実務上どんな感じで地区計画が策定・運用されているのか、静岡県静岡市の事例をもとに解説してまいります。
皆さんがお住いの自治体においても、参考にできるのではないでしょうか。
3.地区計画の策定【静岡市の事例1】
令和5年(2023年)現在、静岡県静岡市では27の地区計画が策定されています。
静岡市の地区計画一覧 【クリックで全体表示】
・船越地区北矢部地区計画
・興津・八木間地区計画
・飯田・庵原地区計画
・日の出地区再開発地区計画
・東静岡地区計画
・草薙駅前地区計画
・南幹線地区計画
・清水駅東地区計画
・丸子池田線・宝台院下島線沿道地区計画
・下川原南地区計画
・蒲原中部地区計画
・蒲原西部地区計画
・大岩一丁目地区計画
・清水駅西地区計画
・清水三保羽衣地区計画
・由比駅周辺地区計画
・駿河台地区計画
・西千代田町地区計画
・松富上組地区計画
・柳町若松町地区計画
・草薙駅北地区計画
・呉服町1-6地区計画
・羽鳥大門町地区計画
・中島地区計画
・恩田原・片山地区計画
・城東町地区計画
・御幸町9ー10番・伝馬町4番地区計画
※リンクのないものは計画内容のすべてが静岡市で条例化されています。
静岡市では地区計画を「都市計画全体の骨格を対象に計画される都市計画と個々の建築計画との中間的な位置にあり、用途地域等の都市計画との調和を図りながら、地区の特性に応じたきめ細かいまちづくりのルール」と位置づけ、計画を策定する段階から地区住民の意向が反映されるよう義務づけがされています。
※参考:地区計画について:静岡市
また、地区計画は市街化調整区域においても活用されるものです。ここでは以下の資料をもとに、静岡市の地区計画を詳しく解説していきましょう。
※参考:市街化調整区域における地区計画の活用について:静岡市
3-1.静岡市が目指すまちづくり
静岡市の地区計画は地区住民の意向に沿うのはもちろんですが、静岡市全体としての方針と合致していないと、調和あるまちづくりが実現できません。
それでは、静岡市がどんなまちづくりを目指しているのか、確認しておきましょう。
3-1-1.集約連携型都市構造の形成
静岡市では「集約化拠点・ゾーンの形成とネットワーク化」と「広域基盤、歴史・自然資源の戦略的活用」という2つの着目点にもとづき、「集約連携型都市構造」の形成を目指しているそうです。
お役所が好んで使いそうな、分かりそうで分かりにくい言葉が並んでいますね。
これをかいつまんで訳すと、
「都市部を機能別の地域(ゾーン)にまとめて、それぞれの地域をうまく連携させるネットワークを作りたい」
「歴史・自然資源を上手く活用して、広い範囲に観光客や観光産業を呼び込みたい」
といったところでしょうか。これをカッコよくまとめた単語が「集約連携型都市構造」となります。
3-1-2.協働のまちづくりの推進
静岡市では「地域の実情に沿った、市民が主役のまちづくりを推進」するため、地区計画を策定することで「地域の個性や魅力の向上を目指すとともに、地域課題の解決を図って」いくそうです。
正直どこの自治体でも使い回しができそうな文言が並んでいますが、いわゆる「お上からのお達し」ではなく、市民が主役となった官民一体のまちづくりを目指しています。
地元の個性や魅力をアピールし、課題を解決するのはどこの自治体でも大事ですよね。
3-2.地区計画の策定
それでは、実際に静岡市ではどのように地区計画が策定されていくのか、その様子を解説していきましょう。
静岡市の地区計画策定は、大きく7段階に分かれています。
3-2-1.第1段階 発意
どんなに素晴らしい地区計画も、誰かが思いつかねば始まりません。
というわけで、第1段階では地域の住民や事業者が、地元の課題や目指したい将来像について話し合います。
話し合いが地区計画としてまとまったら、静岡市にその内容を持ちかけ、静岡市の基本方針と整合しているかを確認。問題ないと判断されれば、次の段階へ進みましょう。
※参考:基本方針及び各種計画:静岡市
3-2-2.第2段階 組織の設立
地区計画の策定を始めるには、地区計画の及ぶ範囲を決め、実にまちづくりを協議するための組織を設立します。
静岡市はその設立を認定するとともに、実務的な面でまちづくりをサポートしてくれるため安心です。
なお、組織の設立は後ほど解説する「地域まちづくり推進エリア」に限られ、「産業系土地利用誘導エリア」や「観光資源活用エリア」では行われません。
(産業系はともかく、観光資源活用には市民の声も重要な気がしますが、ともあれ静岡市ではそうなっているそうです)
3-2-3.第3段階 構想・計画の検討
組織を設立したら、地区計画の策定に向けて、手探りで地域まちづくり構想や地区計画素案を検討していきましょう。
具体的には勉強会の開催や地区課題の整理、目指す将来像の描き出しや、まちづくりのルール検討などが行われます。
合わせて土地所有者など利害関係者の合意形成や、周辺住民に対する周知広報なども欠かせません。大忙しですね。
これに対して、静岡市では勉強会に参加して実務的な知識やノウハウを伝えたり、資料作成を補助したりなどサポート。開発行為技術基準に適合しているかもチェックされます。
また関係機関との協議や合意形成状況の確認、地域まちづくり推進エリアでは専門のアドバイザーを派遣するなど、こちらも大忙しです。
3-2-4.第4段階 構想の策定
こうして住民の意識や知識が高まり、目指すまちづくりが見えてきたら、地域まちづくり構想の策定にとりかかりましょう。
住民や事業者が練り上げた構想に対して、静岡市はこれを認定します。この時、都市マスタープランとの整合性を確認し、状況によっては微修正が入るかもしれません。
なお、地域街づくり構想は地域まちづくり推進エリアに限定されます。
3-2-5.第5段階 適用地区の決定 地区計画素案の決定
続いて、地区計画が適用される範囲(適用地区)と、地区計画素案も決定します。
この段階までくるとほとんど直しも終わっているでしょうから、静岡市としても出された素案を認定するだけです。
無事に認定されると、地区計画の素案は晴れて「案」になります。
もう一息、頑張りましょう。
3-2-6.第6段階 地区計画の都市計画決定手続き
さぁ、いよいよ地区計画が都市計画の一環として決定する手続きがとられます。
地域まちづくり推進エリアについては、地区計画の案を申し出るワンクッションがあるものの、後は静岡市が静岡市地域まちづくり推進条例にもとづいて都市計画を決定する手続きがとられるのです。
そして約1年程度の期間を経て都市計画の決定が告示されるのでした。住民たちの思いが、ようやく形になりましたね。
3-2-7.第7段階 地区計画に基づくまちづくり
しかし、せっかく策定した地区計画も、活用しなければ意味がありません。
地区計画を定めた区域内では、建築等の届出や開発許可などが地区計画を元に行われ、目指すまちづくりが着々と進められていくことでしょう。
その後、廃止されたり条例化によって有名無実化することもあります。
それでも地区計画はまちづくりの指針として、永く活用されていくことになるのです。
3-3.地区計画の適用エリアと活用方法
ここまで地区計画の策定について解説してきましたが、地区計画は適用エリア内で策定できます。
静岡市の適用エリアには以下3つが設定されているので、それぞれ紹介していきましょう。
- 産業系土地利用誘導エリア
- 観光資源活用エリア
- 地域まちづくり推進エリア
3-3-1.産業系土地利用誘導エリア
産業系土地利用誘導エリアは、地域経済を活性化するための産業活動を支える拠点づくりを目指すものです。
適用エリアの考え方としては、「静岡市地域基本計画」に定めている地域特性を活用した分野の企業立地が可能となります。
また周辺環境に配慮した操業環境の整備が図られるため、従業員の利便に関する事業や店舗を営める可能性が高まるでしょう。
産業系土地利用誘導エリアの適用範囲は以下の通りです。
(1)第二東名自動車道新静岡IC・清水いはらICの各5km圏内
(2)東名高速道路、国道1号バイパス線ICの各1km圏内
(3)その他産業軸の沿道周辺
また、適用条件はこちらになります。
- 原則として5ヘクタール以上の区域
- 静岡市地域基本計画における地域特性を活用する分野の企業
- 複数の建築物による面的な開発
ちなみに「静岡市地域基本計画」とは地域未来投資促進法にもとづいて国の同意を得ており、具体的には「海洋関連産業の集積を活用した海洋・エネルギー分野」の事業を推進するものです。
※参考:地域未来投資促進法(地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律)に基づく「地域基本計画」について:静岡市
3-3-2.観光資源活用エリア
観光資源活用エリアは、静岡市ならではの歴史や文化資源など、地域の個性を活かした拠点づくりをめざすエリアです。
適用エリアの考え方は久能山東照宮や三保の松原、日本平といった世界に誇れる歴史・自然遺産を観光資源として活用していきます。
合わせて東海道歴史街道の観光ルートを整備することで観光客の回遊性向上を図り、観光資源の相乗効果を図るものです。
また自然環境を保全しながら人が自然とふれあえる場として活用していきます。
観光資源活用エリアの適用範囲は以下の通りです。
(1)有度山(うどさん)・三保地区・旧東海道の二峠六宿・麻機(あさはた)地区遊水地の周辺
(2)原則5ヘクタール以上の区域
また、歴史的景観の保全や古民家・空き家のリノベーション(カフェや宿泊施設)などが期待されています。
※参考:日本平 久能山 観光協会
3-3-3.地域まちづくり推進エリア
地域まちづくり推進エリアは、既存集落の住民が主体となって安全・安心・便利に暮らせる環境づくりを目指すエリアです。
適用エリアでは既存集落の地域活力やコミュニティの維持、日常サービスの集積、公共施設の保全による安全・安心な生活環境の維持が求められています。
地域まちづくり推進エリアの適用条件は以下の通りです。
(1)0.5ヘクタール以上の区域
(2)既に集落が形成され、居室のある建物の敷地同士の最短距離が20m以内でつながっている(連たんしている)こと
(3)静岡市が認定した「地域まちづくり構想」で地区計画を活用する必要性が認められた地域
地域まちづくり推進エリアでは、地域住民に憩いを提供するポケットパークの整備や、ゆとりある住環境を形成するための建築ルールなどが進められます。
他にも地域住民の生活に必要な施設(店舗、診療所、美容院など)の集積誘導や、空き家を活用した移住者の受け入れ、既存農地を活用した農家レストランなどが期待されているようです。
3-4.地区計画を策定できる条件
さて、ここまで地区計画と適用エリアについて解説してきましたが、以下の条件を満たした場合に地区計画を策定できます。
- 適用エリアの方針や考え方に合致していること
- 計画的で良好な開発行為であること
- 関係機関との協議、調整が整っているもの
- 土地所有者等の多数の賛同が得られていること
- 周辺住民等の合意形成が図られているもの
実に抽象的な文言が並んでいますが、要するに総合して「いい感じのもの」「各方面から波風が立たないもの」と解釈すればいいでしょう。
ちなみに、これらの条件は一例であって、実際のところは静岡市の担当者と話し合っていくことになります。
3-5.地区計画が策定できない場所
地区計画はどこでも策定できる訳ではなく、策定できない場所もあるので注意が必要です。
- 農業の振興を図る地域
(農振法に基づく農用地区域(青地)、農地転用の許可が見込めない農用地など) - 自然環境の保全を図る地域
(保安林、自然公園法の特別地域、自然環境保全法の指定地域など) - 災害発生の恐れのある地域
(土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域など)
農業振興・自然環境保全を図り、災害リスクの高い地域……これらの地域では、地区計画を策定できないのも無理はありませんね。
4.地区計画が策定されるとどうなる?【静岡市の事例2】
さて、ここまで静岡市の事例をもとに市街化調整区域の地区計画を解説してきました。
果たして、地区計画が策定されるとどのような変化が生まれるのでしょうか。
先ほど解説した3エリアそれぞれを深堀りしてみましょう。
4-1.産業系土地利用誘導エリアはどうなる?
地域経済を活性化するため、産業活動を支える拠点づくりを目指す産業系土地利用誘導エリア。
地区計画の適用によって(1)「静岡市地域基本計画」における地域の特性を活用する分野の企業立地(2)周辺環境に配慮した操業環境の整備、が図られることになります。
4-1-1.「静岡市地域基本計画」における地域の特性を活用する分野の企業立地が可能になる
「静岡市地域基本計画における地域の特性を活かした分野の企業立地」と言いますが、具体的には「海洋関連産業の集積を活用した海洋・エネルギー分野」とのことです。
海洋とエネルギーに関する分野と言ってもずいぶん漠然としているものの、おおかた発電や資源採取を想定しているのでしょう。
発電には波力発電・潮流発電・潮汐力発電・海洋温度差発電・海洋濃度差発電(塩分濃度差を利用)・洋上風力発電などがあります。色々あるんですね。
また資源採取には希少金属等(海水中のリチウムやウラン等)や海洋深層水の採取などがあります。
静岡市の前面に広がる駿河湾は良質な海水に恵まれているため、これを活用するために企業の誘致が促進されることでしょう。
4-1-2.周辺環境に配慮した操業環境の整備を図る
企業が誘致されて働く人が増えれば、その人たちに対するケアも欠かせません。
そこで前項の企業で働く従業員たちに向けたサービスも流れ込んでくるはずです。
あくまで周辺環境を壊さないよう配慮した上で、一定範囲の店舗なども営業できるようになるでしょう。
4-2.観光資源活用エリアはどうなる?
歴史・自然遺産を活かして地域振興を図る観光資源活用では、どのような変化が起こるでしょうか。
久能山東照宮や日本平、三保の松原などの名所をはじめ、街道筋や観光ルートの整備によって回遊性・滞在時間≒客単価の向上が図られるものとみられます。
他にも既存の古民家や空き家を活用したリノベーションなども考えられるでしょう。
4-2-1.古民家をカフェにリノベーション
築数十年から百年以上も経った古民家をリノベーションして、味わい深いカフェや店舗に改装するのは、近ごろ各地で人気を呼んでいます。
2010~2020年代に入って昭和レトロが静かなブームとなっているように、情緒ある観光資源として、活気ある街に生まれ変わらせてほしいところです。
4-2-2.空き家を活用した宿泊施設
昨今、全国的な問題となっている空き家。少子化や過疎化によって住む人がいないのであれば、これらを宿泊施設にリフォームするのも一手でしょう。
築年数が経っているほど味わい深く、演出次第で観光の目玉にできる可能性も生まれます。街ぐるみで一体感を演出できれば、リピーターを獲得できるかも知れませんね。
4-3.地域まちづくり推進エリアはどうなる?
既存集落の地域活力やコミュニティを維持し、地域生活の確保を目指す地域まちづくり推進エリア。
住民が主体となって行うまちづくり・地域振興にはどのようなアイディアがあるのでしょうか。
4-3-1.地域住民に必要な生活利便施設(店舗・診療所・美容院など)の集積誘導
既存集落を活性化するため、住民の生活に必要な利便施設の集積・誘導が行われます。
具体的にはコンビニや診療所、美容院などと言った便利で快適な生活を支える店舗等は、市街化調整区域にも必要です。
また地域のニーズに沿ってさまざまなサービスが考えられるでしょう。
4-3-2.空き家を活用した移住者の受け入れ
静岡市では空き家情報バンクが運営されており、地区計画の策定と連動して効果的な活用が期待されます。
住む人がいないなら、市外県外から来てもらえばいい。空き家を売りたい/貸したい方と買いたい/借りたい方、そして行政の「三方よし」が期待できそうです。
4-3-3.既存の農地を活用した農家レストラン
昔から地産地消の大切さが唱えられており、既存の農地で収穫された作物を調理・提供する農家レストランも人気を呼んでいます。
料理は旅行における楽しみの一つであり、味が評判を呼んでさらなる地域活性化の原動力として期待できるでしょう。
5.まとめ(地区計画の策定で市街化調整区域が売却できる?)
市街化調整区域と地区計画のまとめ
市街化調整区域……都市計画区域を区分する「区域区分」の一つ(都市計画法第7条第3項)
地区計画……都道府県の定める都市計画区域をよりきめ細かく整備するために市町村が定める計画(都市計画法第12条の5)
地区計画が策定されることで、市街化調整区域でも目的に沿った建築や利活用が可能となるチャンスがあります。
もし持て余している市街化調整区域の不動産が地区計画の範囲にかかるようなら、自分で利用する場合はもちろん、誰かに売却する場合もアプローチの材料として使えるはずです。
今回は静岡県静岡市の事例を解説してきましたが、みなさんの身近なところで地区計画を策定する動きがあったら、アンテナを張っておくといいでしょう。
6.市街化調整区域の不動産を売却するなら、URUHOMEへご相談を
以上、市街化調整区域と地区計画について徹底解説してきました。
みなさんの中には、市街化調整区域の売却でお悩みの方も少なくないのではないでしょうか。
地区計画が策定されるタイミングを待っても(あるいは賛同者を集めて行政に働きかけても)いいのですが、市街化調整区域を売却したいとお考えなら、買取り専門業者に買い取ってもらった方が手っとり早いと思います。
市街化調整区域の買取りをご検討の際は、まず当サイトURUHOMEを運営しているドリームプランニングまでご相談くださいませ。
当社は2005年の創業以来、神奈川・東京はじめ全国各地の訳アリ不動産の取引を多数手がけてまいりました。
今回も、市街化調整区域でお悩みの皆さんをお助けできるかと思います。また当社での買取り以外に、お客様が市街化調整区域を売却される際の仲介でもお手伝いが可能です。
市街化調整区域の不動産に関するお悩みは、お気軽にドリームプランニングまでご相談くださいませ。