地主と借地人の関係では、様々なトラブルが発生する可能性があります。
「更新料を支払ってほしい」「地代を滞納された」などなど、土地を貸す側と借りる側で、立場が違うと問題が発生するのも当然で、トラブルに回避の対処法を知っておくことも大切です。
そこで、今回は、底地の売買を専門とする会社の社長がトラブルの例とそれぞれの対処方法について解説いたします。
著者情報
株式会社ドリームプランニング 代表取締役 高橋 樹人
著者が経営する「株式会社ドリームプランニング」は、2005年の創業より日本全国の底地を専門的に買い取っており、多数の不動産トラブルの相談を受けておりました。
大変ありがたい事に日本全国から不動産のご相談を頂いており、無料査定を行い、1億円位までの物件であれば最短2日でお買取りさせていただくことも可能です。
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1.借地人に起こるトラブルと対処法
1-1.「地代を値上げする」と言われた
良くあるトラブルとして地主に「地代を値上げする言われた」などということがあります。
しかし、契約を変更するには両者が合意していなければならないので、借主は拒否することが可能です。
この場合、値上げの請求を受けた借地人は、増額を正当とする裁判が確定するまでの間、賃借人自身が相当と認める額の地代を支払えば足ります(借地借家法11条2項)
つまり、値上げが不当と思ったらそのままの地代、若しくは正当だと思う地代を支払えばよいという事になります。
1-1-1.正当だと思う地代を支払っても問題はある
ただし、裁判となれば値上げの根拠と合理性について審査され結論が出されます。
固定資産税の値上げ等が理由で、地代値上げに正当性があると判断された場合、請求時にさかのぼって年1割の利息を付した金額を支払わなければならなくなります。
その為、地代値上げに応じた方が裁判に掛かる費用より安くつく場合があります。
1-1-2.地代の値上げに対する対処法
借地借家法11条では、地代の増減額請求に関して、次のような場合は地代の増減額を請求できるとあります。
- 租税公課の増減により、地代が近隣類似土地に比較して地代が不相当となった時
- 土地価格の上昇、低下、その他経済事情の変化により近隣類似土地に比較して地代が不相当となった時
借地人として相当だと思われる地代を支払っても、争いになった場合、裁判所が地代が適正かどうかは判断するので、そもそも現在支払っている地代が適正かどうかが問題点となります。
第十一条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
借地借家法第11条1項・2項(地代等増減請求権)
2 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
住宅地では、固定資産税・都市計画税の3~5倍程度が地代となることから、このくらいの地代の値上げであればある程度許容せざるを得ないかもしれません。
地代の値上げに対しては、いきなり裁判になることは無く、調停になることになっておりますが(民事調停法24条の2第2項)、基本的にはその前の話し合いで解決するのがベストです。そのためには、事前に第三者の不動産鑑定士に依頼して、地代の適正な金額を算出してもらうことをお勧めいたします。
1-2.「譲渡承諾をしない」と言われた
「借地権を売却したいけれども地主が譲渡承諾をしない」というのも度々起こる問題のひとつです。
また、「譲渡承諾をしてもらうのに、高額な譲渡承諾料を請求された」というのも良くあるトラブルです。
譲渡承諾料の相場は『借地権価格×10%』というのが一般的です。
そもそも借地権価格は相続税路線価に借地権割合を乗じたものや、不動産鑑定士に依頼して借地権価格を算出してもらう事もあります。
いずれにしても、譲渡承諾料は高額になるため、トラブルの原因となる事が多いのです。
1-2-1.土地の賃借権譲渡の申立が可能
また、譲渡承諾を拒否された場合については、「土地の賃借権譲渡又は転貸の許可申立事件(借地借家法19条1項)」といって借地非訟を起こし、地主の承諾に代わる許可を裁判所から得ることが出来ます。
しかし、裁判所が譲渡承諾にかわる許可をしてくれたとしても、購入者が住宅ローンを組む際は、借地上の建物に抵当権設定をする旨の地主の念書が必要ですが、譲渡承諾に代わる許可があったとしても、念書に署名する旨の許可までは出せないため、実質ローンが組めないということがあります。
第十九条 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
借地借家法19条1項(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
1-2-2.譲渡承諾の拒否に対する対処法
借地非訟によって、地主の承諾に代わる許可を裁判所に求める最大の欠点は、上記の抵当権設定の際の地主の念書までは判決で出せないという点です。
これは日本の司法制度の欠陥とも言えるのですが、このことが19条による裁判所の許可の借地非訟があまり利用されない理由とも言えます。
また、借地借家法14条では「第三者の建物買取請求」を認めており、地主の承諾なく譲渡を受けた者より地主に対して買取請求を起こすことも可能ですが、借地権割合が70%の場所でも建物買取請求の価格が5%程度になるという不可解な不動産鑑定をされた例もあり、これも借地人や建物の譲渡を受けた第三者が利用できる制度ではありません。
第十四条 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
借地借家法第14条(第三者の建物買取請求権)
ですので、借地権を第三者に売却するという点において、借地借家法は正当な権利が保護されているとは言い難いと言えるかもしれません。
ここで考えられる対策としては、少し安くても「19条の許可を得て第三者に売却」したり、「承諾なしに第三者に売却して、第三者より買取請求を起こす方法」以外に、「保有して賃貸する」という方法もあります。
保有して賃貸する限り、第三者に売却せずに賃料より収益を上げることが可能です。ただ、この場合においても地主さんより用法違反と言われる可能性もあるため、できる限り話し合いで解決することをお勧めいたします。
1-3.「借地を返してほしい」と言われた
トラブルの中で比較的多いのが「借地を返してほしい」と言われたということです。
実は借地権には大きな財産価値があるということをご存知でしょうか?
そこで、もしも借地を地主に返還することを検討するのであれば是非借地権の買取を地主に交渉することをおすすめします。
地主は貸した土地の利用価値等を鑑みて、交渉に応じるという例も決して少なくはありせん。
1-3-1.正当事由がない限り、借地権を返還する必要はない
借地権の契約期間中は地主さんから借地権を返してほしいと言われることは多くはないのですが、更新のタイミングで更新拒絶をされる可能性があります。
その際、更新拒絶が認められるには正当事由が必要で、主に次のようなものがあります。
- 地主及び借地人が土地の使用を必要とする事情
- 従来の経緯や土地の利用状況
- 立ち退き料の給付
一番大事なのは、地主と借地人のどちらが土地を必要としているかで、立ち退き料の給付の申し出を受けたかどうかは、あくまで補完的な位置づけです。
借地人さんに土地の利用を続ける正当な事由があれば立ち退く必要はありません。
1-3-2.「借地を返してほしい」と言われたときの対処法
借地権の更新時に、「借地権を返還してほしい(借地を更新しない)」と言われた場合、「建物買取請求」と言って、借地上の建物を時価で買い取るよう地主に請求できます。
第十三条 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
2 前項の場合において、建物が借地権の存続期間が満了する前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
借地借家法第13条(建物買取請求権)
しかし、これは借地権の買取請求権ではなく、建物の買取請求権のため、借地権の価格よりかなり安くなります。(建物価格+場所的利益〔更地価格の12~40%位〕)
そのため、まずは更新に正当事由があることを主張したうえで、借地権を存続させることをお勧めいたします。
建物買取請求権を行使するより、借地権の更新に正当事由があることを主張した方が、立ち退きになったとしても立ち退き料の給付を受けることができます。
2.地主に起こるトラブル
2-1.「地代を下げてほしい」と言われた
土地のトラブルで困るのは借りた側だけではありません。
地主側にも借地人から、「地代を下げてほしい」と言われたなどということは時々起ることです。
土地というのは状況によって地価が上がったり下がったりするものです。
そこで明らかに周辺の土地代が下がっているなどという場合は、地代を下げて欲しいという要求があることは想定内のことかもしれません。
2-1-1.「地代を上げさせてくれない」ケースも多い
地代を下げてほしいというケースと同様、戦後から続いてきた安い地代を上げさせてくれないというのも良くある悩みです。
借地人より地代値上げが認められず、供託にすると言われても地代が適正である場合は、妥協せずに地代の値上げを主張しましょう。
2-1-2.「地代を下げてほしいと言われた」「地代を上げさせてくれない」場合の対処法
地代を下げてほしいと言われた、地代を上げさせてくれない場合、次回の更新はせずに借地人との契約を終了するという方法も視野に入れる必要があります。
また、地代の増減額が認められるには、以下の要件が必要になるため当てはまることが無いかチェックしましょう。
- 土地に対する租税その他の公課の増減
- 土地価格の上昇・低下
- 土地価格の上昇・低下以外の経済事情の変動
- 近隣地域ないし同一需給圏内の地代の増減
また、地代を増額しない旨の特約がある場合は、地代の値上げが出来ないため、次回更新しない為にどうすれば良いか弁護士さんに相談してみましょう。
そのうえで、地代の値下げに応じないことや、地代の値上げに正当事由がある場合、まずは内容証明で借地人にその意思を伝える必要があります。
それでも話し合いで決着がつかない場合、調停の申し立てを行います。調停では双方が納得しないと調停成立しないため、次に裁判を起こすことになります。
地代が適正かどうか判断するためには、不動産鑑定士に地代の鑑定評価をしてもらうのが望ましいです。
2-2.借地人が更新料、譲渡承諾料を払わない
地主にとって頭が痛いのは借地人が更新料を払わないということです。
借地の更新料というのは法律では絶対に支払わなければいけないというものではありません。
その上で、更新料については以下のポイントを確認しましょう。
- 契約書に更新料とその金額についての明記があるかどうかを確認
➤ 金額の明記が無い場合は借地人から拒まれる事もあります。 - 前回の更新時はどうであったかを思い出してみましょう
➤ 前回は支払いがされてれば、今回の更新料を請求できる可能性があります。
2-2-1.更新料と譲渡承諾料
更新料も譲渡承諾料は一般的に借地権価格の5~10%が相場です。
更新料については、請求できるかどうかは「更新時に〇〇〇万円支払うものとします」等、契約書に明確な金額も含めた記載があるかどうかが大きなポイントです。
譲渡承諾料については、契約書に記載が無くても譲渡承諾料を請求できることが当たり前となっておりますが、更新料に関して契約書に更新料に関する定めの記載がなかったことで、更新料の支払いが認められなかった判例も存在します。
(もちろん更新料の記載が契約書になくても、更新料の支払いが認められた判例もあります)
ですので、まず更新料の支払いに関して契約書を確認することと、もし記載がなかった場合、次回更新時には金額も記載した更新料に関する詳細な定めを盛り込むようにしましょう。
2-2-2.更新料、譲渡承諾料を支払わない場合の対処法
また、譲渡承諾料を支払わない場合、地主さんは譲渡承諾を拒否すれば良く、それに対して借地人が地主の承諾に代わる裁判所の許可を求めて借地非訟を起こした場合は、借地非訟での争いとなります。
また、更新料に関する定めの記載があるのにもかかわらず、更新料を支払わない場合は、すぐに更新の拒絶することをお勧めします。
更新の拒絶は借地権の期間満了時に遅延なくしなければ、法定更新といって更新されたという扱いになってしまいます。
更新拒絶には、地主様自身が借地人より土地を必要としている正当事由が必要なため、地主と言えども更新料を支払われないという理由だけでは、認められないケースもあります。
このように、いくら更新料を支払わないといっても更新拒絶できない可能性もあるので、どうしても土地が必要な理由が無ければ売却するのも一つの方法です。
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3.底地・借地のトラブルを解決するならURUHOME
底地、借地には様々なトラブルがつきものです。
そこで、底地や借地の事でトラブルに巻き込まれてしまった場合、いっそのこと不動産業者に買い取ってほしいという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
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